レトロ好きにはたまらない! 福山自動車時計博物館レポ

自動車博物館というと、どんな印象を持っていますか? クラシックカーや希少で高価なクルマがピカピカな状態で並んでいて、輝かしい過去の栄光に触れることができる場所。そんな風に感じている方も少なくないかもしれません。
しかし、自動車が量産化されてようやく一世紀を過ぎた今。これまで行われてきた切磋琢磨には、モータースポーツと密接に関係している面もあります。往年のスポーツカー、グランプリマシンなどは、もちろん自動車史を語る上で無視することはできません。

しかし、機械であると同時に、私たちの傍らで、家族同然にかわいがられてきた一面もあります。量産車や貨客ともに運べるバン、軽自動車からカーライフをスタートさせた家庭もあることでしょう。そういったクルマもまた、自動車の歴史を振り返る上で忘れることはできません。

数々の時計のコーナーも。自動車同様、私たちの暮らしになくてはならない道具だ

ただ、こうした日常向けのクルマは自動車趣味を想定していなかったので、かなり酷使されていたり解体されたりなど、生産台数から考えると現存台数は驚くほど少ないのが実情です。もしかすると新車で100台作られなかったビンテージカーよりも、数十万台作られた大ヒット車のほうが現存数は少ないという車種もあるのではないでしょうか。

しかし、そんなクルマが見られる場所はいくつかあります。福山自動車時計博物館もそのひとつ。懐かしい自動車や時計など、私たちの生活に密接に関わって来た機械を中心に、所狭しと展示している博物館です。

館内には、なんと飛行機まで。この圧倒される感じもここ独特の雰囲気だ

ここの特徴は、多くのクルマの車内に乗り込める点でしょう。またレストアされず、当時のままのコンディションが多いのもかえって好感を覚えるところです。館内もさることながら、屋外にもこれから修復するために待機しているクルマが多数保存されています。

昔のダットサン。ナンバープレートが大きく見えるほど小さなボディだ。1年違いで2台のダットサンのクルマが収蔵されている
展示してあるクルマの多くは、ドアを開けて中に乗ることができる。これはダットサンの車内
「フェアレディ」の名前がつく前に発売されていたダットサン・スポーツ。このクルマは輸出用に開発されたクルマで、基本的に右ハンドルが存在しない。もちろん国内ではかなり貴重な存在だ
トヨペット・クラウンで、この分割式のフロントガラスの仕様は比較的廉価グレード。営業利用も多く、現存数としては少ないクルマだ
ベンチシートで6人乗り、これが当時のスタンダード
マセラティの親会社だったシトロエンが、高級GT「SM」用にマセラティに作らせたV6エンジンが、このマセラティ・カムシンにも搭載されている。足回りなどもシトロエンの流儀に沿ったもの。現存数で考えると、これも貴重だ
戦争に振り回されるのは戦勝国も一緒。戦地に送り出すジープを作っていたウィリスがその技術とパーツを使って作り上げた乗用車。今私たちが親しんでいるジープの祖先と言えるかもしれない。これも現存数は少ない希少車
三菱・ミニカ、きれいな状態で残っている。当時の軽自動車の使命は今とは少し違っていた。維持費節約のためではなく、手の届く自家用車という意味合いが強い。ボディの造りなども凝っている
マツダ・R360も意欲的なクルマだった。V型2気筒のエンジンをリアに搭載。これでも4人乗りは死守している。自動変速もすでに用意されていた
ホンダ・T360。幻S360に載るはずだったツインカムのエンジンが搭載されたトラック。その高性能ぶりは群を抜いていた
最近ライトバンというカテゴリーのクルマがかなり少なくなった。これはトヨペット・マークⅡのバン
マツダと三菱の三輪トラック。この三菱のレオは特に見る機会の少ないクルマだ
日野・ルノー。ドアがこのように開閉する
マツダの3輪トラックをベースにした昔のタクシーキャブ
表に出ると保管スペースがあり、こちらも見逃せない。昔の自動車図鑑で見たような記憶がある、この特徴的なフロントデザイン。いろいろ調べていたら高知自動車工業「トクサン号」だとわかった。四輪トラックをベースに、輸送力はそのまま、小回り性能を向上させるために「改造」という手法で少量生産していたようだ。四国の林業を支えたこの三輪トラックは、何台ほどが現存しているのだろうか。できれば修復して欲しい1台
消防車が集められたスペースも。その一角にいすゞのボンネットトラックが。このフロントマスクのボンネットバスは10年程前までは時々見かけたものだ
日野・ブリスカ、コンテッサのエンジンを搭載した商用車だ。しかし、荷台架装の自在性のためにFRにしたモデル、これは実車を見たのは初めてかもしれない。となりにはマツダのタイタンが置かれていた
また別の駐車場ではスバル・360とブルーバード
しかもバンの「カスタム」。商用は希少価値が高い
ブルーバードは最近まで動いていた風情も
博物館のまわりには雪上車など。南極探検隊のクルマもある

歴史の中で過ぎ去っていった1台と言うより、「このクルマのまわりで歴史が紡がれていった」。そんな印象すら覚える博物館でした。

<施設概要>
福山自動車時計博物館
広島県福山市北吉津町三丁目1番22号 
TEL:084-922-8188
開館時間:午前9時~午後6時
休館日:なし、年中無休
http://blognews.facm.net/

(中込健太郎+ノオト)

[ガズー編集部]