年間360万台の廃車はどこへ行く? クルマのリサイクル

「年間約360万台」――この数字は何を表しているのかご存じでしょうか? これは、日本で1年あたりに廃車されるクルマの数です。クルマは、鉄やアルミなどの金属を多く使っているため、総重量の約80%はリサイクルされ、残りの20%はシュレッダーダストとして埋立処分されています。

しかし、スペースには限りがあります。このままでは埋立処分のスペースに限界が見え、さらに不法投棄の問題やカーエアコンの冷房に使われているフロン類による環境破壊など、さまざまな問題点が挙げられました。そこで2005年1月から「自動車リサイクル法」がスタートしました。

自動車リサイクル法とは?

「自動車リサイクル法」とは、自動車メーカーと輸入業者にクルマのリサイクルを義務づけることです。ただし処理をするのにもお金がかかるため、「リサイクル料金」としてクルマの最終所有者が普通自動車の場合1万~1万8千円程度(2016年5月現在)負担することになっています。

リサイクルの流れとは?

クルマのリサイクルについては、自動車メーカーごとに取り組みを行っていますが、主な流れは以下になります。

(1)クルマの最終所有者が、廃車を引き取り業者(新車・中古車販売店、整備事業者、解体事業者など)に渡します。これが年間約360万台です。

(2)ここからは業者の仕事となります。まずフロン回収業者がフロンを取り外し、その後、解体業者にわたり爆発の危険があるエアバッグを取り外します。回収したフロンとエアバッグは、自動車メーカーが適正に処理をします。状態のいい部品(バンパー、バッテリーなど)は取り外して、中古部品、鉄・非鉄金属として再利用します。

(3)残った解体自動車はプレスをかけ、シュレッダー会社が破砕(はさい)。そのときに、鉄、非鉄金属、シュレッダーダストの3つに分類し、鉄・非鉄金属は再利用します。

(4)シュレッダーダストは、自動車メーカー・リサイクル会社に運ばれ、適正に処理されます。

ちなみに、クルマのシートはクルマの防音材に、タイヤはセメント原燃料に、窓ガラスはタイルなどに生まれ変わるそうです。

環境問題のために、13社が結束!

いすゞ自動車、自動車リサイクル促進センター、ジャガー・ランドローバー・ジャパン、スズキ、日産自動車、フォードジャパン、富士重工業、ボルボ・カー・ジャパン、マツダ、三菱自動車工業、三菱ふそうトラック・バス、メルセデス・ベンツ日本、UDトラックスの13社で、自動車破砕残さリサイクル促進チーム「ART(Automobile shredder residue Recycling promotion Team、呼称:エイ・アール・ティー)」が2003年に結成されました。よりよい環境にしていくために、ライバル会社が結束し、シュレッダーダストの新しいリサイクル方法などを検討しています。

このような取り組みから、今後は、今まで以上にリサイクル率が高まり、シュレッダーダストが出ないクルマ作りができるかもしれませんね。

(名久井梨香+ノオト)

[ガズー編集部]