板金しなくても凹みが直る! デントリペアとは?

不幸にもクルマが凹んでしまったとき、修理方法として真っ先に思い浮かべるのは板金修理ではないでしょうか? しかし板金修理となると、費用もかさんでしまいますし、少なくとも数日間はクルマを工場に預けなければならないため、代車費用などもかかる可能性も……。そんなときに選択肢のひとつとして「デントリペア」という方法があるのをご存知でしょうか?

デント(Dent=凹み)をリペア(Repair=修復)するから「デントリペア」というわけですが、果たしてどんな修復方法なのかを「デントリペア エムロク」代表の廣川誠さんにお話をお伺いしてきました!

塗装不要の修復方法

デントリペアはもともと海外で生まれた手法で、寒暖の差が激しい地域で発生する「雹」による被害「雹害」を修理するために生まれたそう。直径5mm以上の氷の塊のことを雹(ひょう)と呼ぶのですが、それが空から降ってくるのですからクルマは簡単に凹んでしまいます。もちろん一粒だけではないため、あっという間にクルマはボコボコに……。それを一つ一つ板金修理していたら時間も費用もかさんでしまう、ということで凹みを内側から押し出して元の状態に戻してしまおうというのが始まり。
したがって塗装が剥げてしまうような大きな傷を伴う凹みには対応できませんが、ただの凹みであれば、再塗装も不要なので時間も費用も安く済むというのが最大のメリットなのです。

「特殊なボディカラーだと再塗装すると微妙に色味が合わないこともあるため、再塗装したくない方や、パテを使用したくないお客様に利用していただいています。また、ルーフパネルは修理、交換をすると“修復歴あり”になる場合もありますが、デントリペアであればその心配もありません」(廣川さん)

時間や費用面以外でもメリットがあるデントリペア。実際に作業を見学させていただきました!

早ければ数十分で終わることも!

こちらが今回施工したクルマ。ルーフの赤丸部分に凹みが見られます。写り込んだ電線が歪んでいることが分かりますね。

デントリペアで使用する工具はこういったもの。凹みの位置などによって、長さやアールの異なるものを使い分けて内側から慎重に押し出していきます。板金修理と違って大掛かりな工具なども不要のため基本的に出張修理がメインで、ある程度のスペースがあれば作業できるため、個人宅の駐車場で作業したこともあるんだとか。

天井の凹みを直すときも内貼りをすべて外すことはせず、少しだけ隙間を作ったらそこからさきほどの工具を差し込んで作業します。最小限の作業で修理に取り掛かれるため、時間と作業工賃の節約にもなるというわけですね。

小さな凹みとはいえボディパネルには歪みが生じているため、内側から押し出すだけではなく外側からも叩いて微調整します。この辺りは簡単に見えますが、まさに職人技といったところ。

そしてこちらが作業後。写り込む電線の間隔も均等で、どこが凹んでいたのか分からないレベルです。もちろん、塗装も磨きも一切していません。

線状についた凹みもOK!

雹害のリペアから生まれたと聞くと、平面部分についた点の凹みしか対応できないと思うかもしれませんが、サイドについた線状の凹みもリペアできるとのこと。上の写真は横方向に2つの凹みがついてしまっています。こういった凹みもデントリペアで……。

ご覧の仕上がり! 厳密に言うと完璧に新車状態に戻るわけではないそうですが、ここまで目立たない状態になってくれるのであれば不満もないのではないでしょうか。

凹みの大きさも小さなエクボから、大雪の時にベッコリ凹んでしまった屋根のような広範囲のものまで対応できるとのこと。愛車の凹みが気になっている方は、デントリペアも修理の選択肢に入れてみてはいかがでしょうか?

(小鮒康一+ノオト)

[ガズー編集部]

撮影協力

MORIZO on the Road