シトロエンから独立したDS、違いを解説

2016年6月上旬に開催された、国内初のDSの試乗会に参加してきました。

「あれ? シトロエンDSの試乗会は、過去に何度もあったのでは?」と疑問に思う方がいらっしゃるかもしれません。確かに「シトロエンDS」というモデル・シリーズがありました。しかし、2014年6月1日より、DSがシトロエンから独立。トヨタ自動車に「トヨタ」と「レクサス」があるように、「シトロエン」と「DS」は別のブランドになっていたのです。つまり、PSAグループは、「プジョー」「シトロエン」「DS」という3つのブランドを抱えることになりました。

ここでちょっと説明しておきましょう。DSとは、シトロエンが1955年にデビューさせた高級モデルです。革新的な機構と宇宙船を思わせる大胆なデザインにより注目を集め、1970年代まで生産されるほどの大ヒット。フランス大統領が愛用したことも有名です。また、1999年に世界のメディアが選定した「20世紀の名車ランキング」では3位(1位はフォードモデルT、2位がミニ)に。まさにシトロエンきっての名車です。その名車の名前を冠したDSシリーズが2009年に誕生。現在は、DS3、DS4、DS5の3モデルが日本で発売されています。

1955年にデビューしたシトロエン・DS。大胆なデザインと斬新な機構で、20世紀の名車ランキングで3位に選定されている

そんなDSの各モデルが、この春にあいついでマイナーチェンジしました。シトロエンを象徴するダブルシェブロン(二重の山形のエンブレム)のあしらわれた顔つきが、新しいDSのものと改められたことを機に、日本で初めてのDSだけの試乗会が開催されたのです。

マイナーチェンジでグリルまわりがDSデザインとなったDSの各モデル。左より、DS3、DS4、DS5
新規に導入された「DS4 CROSSBACK」(左)は車高が高められるなどSUVテイストがプラスされている

シトロエンとDSとの違いはどこにある?

そんなDSですが、「シトロエンと、どう違うの?」と疑問に思う方も多いはず。数年前までは一緒だったわけですしね。また、PSAグループはエンジンやプラットフォームなど、クルマの素材となるものを豊富に持っているわけではありません。そのため、同じサイズであれば、中身はあまり変わらなかったりします。

では、何が違うのでしょうか?

答えは「ファッション」です。

同じようなサイズのクルマでも、プジョーとシトロエン、DSでは雰囲気が異なります。

たとえば洋服であれば、どんなに着心地がよくて機能性に優れていても、「こんなダサイ服は絶対に嫌だ」というケースがありますよね。クルマは機能を重視する工業製品ですが、それでもオーナーの個性を映し出します。そういう意味で、クルマは洋服と同じ。つまり、クルマにとって、ファッション性も非常に重要です。同じ素材を使っていながらも、プジョー/シトロエン/DSという3つの異なるファッションを用意して、ユーザーが選べるようにする。これがPSAの狙いだったのです。さすがファッションの国、フランスのメーカーですね。

実際の違いを簡単に言えば、プジョーは「スポーティ・テイストの王道デザイン」、シトロエンは「ポップな実用品。価格も手ごろ」。DSは「ドレッシーで、ちょっとプレミアム」といったところ。走りも、その路線が基本です。試乗会でも、「落ち着きある重厚な乗り味」がDS3、DS4、DS5に通じるものとしてありました。また、デザインもキラキラしていて優雅。まるでカクテルドレスのよう。この華やかさこそがDS最大の魅力。現在でも、フランス大統領はDS5を利用しているのが納得の華やかさでしたよ。

フランス車として最もポピュラーな存在がプジョー。パリの街中でもメジャーな存在だ
WRC(世界ラリー選手権)やWRX(世界ラリークロス選手権)などで活躍するプジョー
ポップでカジュアルなデザインのシトロエン・C4カクタス。日本導入が待ち望まれる最新モデルだ
今もパリの街中を現役で走り回るシトロエン2CV。簡素な造りだが極上の乗り心地を実現した
化粧品ブランドであるジバンシイとコラボした「DS3 ジバンシイ ル メイクアップ」も2016年秋に登場する

(鈴木ケンイチ/モータージャーナリスト+ノオト)

[ガズー編集部]