日産・リーフでけん引! エアストリームの旅するCAFE
東京からクルマで2時間弱。神奈川県・箱根を中心に、トラベル・トレーラー「AIRSTREAM(エアストリーム)」を日産・リーフで牽引し移動、営業するカフェがあります。そこで今回は、移動型カフェ「CAFE Ryusenkei」のオーナー、合羅智久さんに話を聞きました。
毎日世界旅行をしているような気分になる「旅するカフェ」
「当初は、トラベル・トレーラーAIRSTREAMを使用した移動型カフェという形態から、『旅するCAFE』というコンセプトを考えました」と合羅さん。
「実際に営業してみると、世界中の様々な国から多くの旅行者が訪れる箱根は、以前暮らしていた東京以上にグローバルな場所。カフェのお客様の90%は外国人旅行者で、まるで毎日世界旅行をしているような気分になります。自分が移動(旅)をしなくても、これもひとつの『旅するカフェ』なんだなと気づかされました」(合羅さん、以下同)
- AIRSTREAMを改装し、イートインができる移動型カフェが誕生。看板メニューは1杯ずつハンドドリップしたコーヒー
なぜカフェをオープンする際にAIRSTREAMを選んだのでしょうか?
「最初は固定店舗でカフェを開業しようと箱根中の物件を探しまわっていたのですが、1年あまり探し続けたけれどなかなかピンとくる物件に巡り会いませんでした。困り果てていた時に、移動販売でカフェをやることを思いつきました」
その際、冬の寒い時期や雨天など、天候に左右されず営業をしたかったため、いわゆるテイクアウトのみの移動販売スタイルではなく、狭くてもいいのでイートインができるスタイルにこだわりたい。そこでひらめいたのが、AIRSTREAMをカフェに改装することでした。
「元々、AIRSTREAMは映画やライ・クーダーやパット・メセニーのレコード・ジャケットなどで知っていて、カッコイイと思っていました。まさか自分が購入するとは夢にも思いませんでした」
1967年製、17フィートのAIRSTREAMをカリフォルニアから輸入
移動型カフェのアイデアを思いついてすぐにインターネットでAIRSTREAMを検索し、千葉県の大網白里でAIRSTREAMの輸入販売のコーディネートを行なっている『AIRSTREAM CAFE』を見つけました。
「すぐに連絡して、AIRSTREAMでカフェをやりたいというアイデアを伝えたところ、『百聞は一見にしかず、まずはAIRSTREAMを見に来てください』と言われました。数日後に大網白里に向かい、大小様々なタイプを見学。デザインの素晴らしさはもちろん、空間の拡張性や、移動が可能なことで、防災面を含め様々なアドヴァンテージがあることなど、AIRSTREAMの無限の可能性を確信しました」
その場でAIRSTREAMを購入することを決定し、すぐに探してもらうことに。最終的に、1967年製の17フィートのAIRSTREAMを見つけることができました。
「約1ケ月間、『AIRSTREAM CAFE』 のネットワークを使い、100件以上のAIRSTREAMをインターネット上でチェックしました。無事、カリフォルニアのサンノゼから輸入し、横浜大黒ふ頭で初対面した時は感動しましたね」
思わず長居したくなる空間。「移動する現代の茶室」
- 当初は4人くらい座れればいいと思っていた店内。実際には大人8人ほどが座れる空間に
「CAFE Ryusenkei」の中は、店名の“流線形”をイメージさせる曲線がアクセントの空間。カウンターに立つ合羅さんとのほどよい距離、北欧のファブリックを使ったソファやクッション、ミッドセンチュリーの家具、立ち上るコーヒーの香りに思わずホッとしてしまいます。
「ボクのAIRSTREAMは17フィートの小さなタイプ。初めて足を踏み入れた時に、茶室に入った時と同じような感覚を味わいました。茶室は物理的には決して広くはありませんが、その空間にはひとつの大きな宇宙があります。その時に『移動する現代の茶室』というCAFE Ryusenkeiの骨格ともいうべきもう1つのコンセプトが生まれました」
- コーヒー以外にもビールやワインなどのアルコールも用意。そのため、夜はさながらバーカウンターのよう
内装を考えるうえでいちばん大事にしたことは、「シンプリシティ」=「簡素」。
「以前から、シンプルな北欧やミッドセンチュリーの家具やデザインに惹かれていました。そのため、AIRSTREAMのオリジナルであるミッドセンチュリーの雰囲気溢れるオークのキャビネットを中心に、それに合うように全体をデザインしていきました」
内装のデザインを手がけたのは、合羅さんの友人でもあるima設計事務所の小林恭さん・マナさんご夫妻。2人はヘルシンキにあるマリメッコ本社のカフェや、ヘルシンキ本店など、世界中のマリメッコのショップデザインを手がけています。
「2012年の夏の終わりに、マリメッコの仕事でヘルシンキに滞在していた小林さん夫妻と現地で合流。キノコ狩りをしたり友人宅でのホームパーティに招かれたりと、豊かな時間を共有できたことが、今回の内装デザインの隅々まで生かされています」
今でも初めて訪れるお客様の第一声は「わあ、思ったより広い!」。そして、しばらくすると「なんだか落ち着く〜」「気持ち良くて眠くなる〜」に変わっていくのだとか。
「この言葉を聴くと、内装やコンセプトが上手くいった証拠だと嬉しくなってしまいます」
あらゆる免許の中で一番難しい(!?)けん引免許を取得
合羅さんのAIRSTREAMの車重は1.0 t超。被けん引車の車両総重量が750kgを超える場合、けん引免許が必要になります。
「けん引免許は持っていなかったので、急遽、自動車教習所に通うことに。当時住んでいた自宅マンションの目の前に自動車教習所があったので、通学は楽でしたが、教習はたいへんのひと言。教官いわく、けん引免許があらゆる運転免許の中でもいちばん難しいそうです」
けん引免許が取れなければ、移動型カフェの実現はないというプレッシャーもあり、必死でした。
「特に、ハンドル操作がクルマとは逆になるバックと、直線バックが本当に難しかったですね。今でも直線バックは下手クソです(笑)。他にも、物を立体的に見る力や遠近感が備わっているかを調べる深視力検査は初めての経験だったため、慣れなくて手こずりました」
AIRSTREAMを電気自動車でけん引するという、前代未聞の組み合わせが誕生!
- AIRSTREAMを日産リーフでけん引していると聞くと、みんな驚くのだとか
はれてけん引免許を取得し、2013年11月に営業開始。移動する時は、電気自動車の日産・リーフでけん引しています。
「当初はリーフをカフェ用電源(バッテリー)として利用すれば、発電機を使用しなくてもいろいろな場所で営業できるのではと考えました。自然豊かな箱根で、騒音が発生する発電機を使用したくなかったことも大きな要因でした」
実際にはリーフの本体バッテリーからカフェ用の電源に変換する装置(インバーター)が市販されていなかったので断念しました。
「仮に変換装置があったとしても、AIRSTREAMをけん引するだけでバッテリーを大幅に消費してしまうので、カフェ用電源の確保までは到底難しかったですね。結果的には、1967年製のAIRSTREAMを、最新テクノロジーの電気自動車でけん引するという、前代未聞の組み合わせが生まれました」
- 元々はレコード会社のディレクターとして東京で生活していた合羅さん。箱根までのドライブが大好きだったそう
現在は、箱根登山ケーブルカー・箱根ロープウェイの早雲山駅をベースに、箱根や横浜、湘南を移動しながら営業をしています(営業スケジュールはHPを要確認)。箱根ドライブのついでに、ぜひ立ち寄ってみては。
(平野友紀子+ノオト)
[ガズー編集部]
取材協力
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