クルマ×ビッグデータへITの若者が挑む! 【イベントレポ】

ビッグデータという言葉を耳にするようになって、ずいぶんと時間がたった。ところが実際にまわりを見渡すとビッグデータを活用したサービスは、話題の大きさほどに増えていない。特に日本の基幹産業ともいえる自動車関連では、もっとサービスが増えてもいいのでは? また、これまで自動車関連のビッグデータといえば自動車メーカーがほぼ独占してきた。しかし、IoTの時代となれば、新たなチャンスが生まれるかも?

そんな期待を抱くビジネスマンに向けたトークセッションが2016年6月29日(水)、東京渋谷において実施された。『シリーズ「テクノロジー × Car」〜 第一回:自動車の生み出すビッグデータへの挑み方〜』(dots.主催)だ。

参加者は20~30代が多く、IT業界とクルマ業界の人間が大多数であった

イベントの開始される19時に会場へ集まったのは、ざっと数えて70~80名。参加者を見れば20代から30代と思えるような若い顔が多い。トークセッション中に講演者がたずねたところ約半数がIT関連であり、3割ほどが自動車関連であるという。

最初に壇上に立ったのは、ホンダの大石康夫氏であった。テレマティクス部ビジネス研究開発室TC/技師として、双方向型通信ナビゲーションシステム『インターナビ』のビッグデータ技術をベースにテレマティクスサービスを担当。最近は、社内外でテレマティクスサービスの実証実験を17も進行しているという人物だ。

ホンダのテレマティクス部ビジネス研究開発室TC/技師である大石康夫氏

大石氏は、ホンダのテレマティクスであるインターナビの歴史にはじまり、ビッグデータを利用したサービスや実証実験の事例を紹介。また、次世代の環境対応車(ハーブリッドカーやEV)、自動運転車でのサービスの可能性や、車載通信ユニットを使ったV2Xの実証実験の内容など、多岐にわたる最近のホンダの動きや考えを説明した。驚いたのは、ホンダの良い成果だけでなく、課題なども述べていたこと。30分強ほどの時間ではあったが、ありきたりではなく本音でビッグデータの未来を語ろうという姿勢の見えたトークセッションは見応えのあるものであった。

クルマのビッグデータを利用して、どのようなビジネスの可能があるのか?

その後、10分ほどの休憩を挟んで、イベントは第2部へ。テーマは『クルマ業界のビッグデータ群』だ。壇上には、ホンダの大石氏に加え、株式会社ガリバーインターナショナルの執行役員新規事業開発室室長である北島昇氏、株式会社ハタプロの代表取締役の伊澤諒太氏、モデレーターを務める博報堂の林智彦氏が並ぶ。

左より、ホンダの大石氏、ハタプロの伊澤氏、博報堂の林氏、ガリバーの北島氏

北島氏は、ガリバーインターナショナルでコネクティッドカー事業、C2C事業、サブスクリプション事業の立ち上げやアクセラレータープログラム運営など、新規事業を積極的に進める人物。ハタプロはIoTデバイスのハード&ソフトを開発する会社であり、日本だけでなく台湾にも拠点を置く。伊澤氏はその創業者だ。そして、モデレーターの林氏はサービス開発・コミュニケーションのプロフェッショナル。自身でベンチャー企業を経営していた経験もある。総じて言えるのは、みな新しいテクノロジーとビジネスへの感度が高い人物ということ。そして、その4人が『クルマ業界のビッグデータ群』をテーマに、未来の可能性や求められているものなどを、さっくばらんに語り合った。

「クルマのCANデータにこだわる必要はあるのか」「若者がクルマに乗りたくなるようなアプリがあれば、自動車メーカーはこぞって欲しがる」「新しいビジネスへの取り組みについて、どうやったら社内を説得できるのか」「大企業はスタートアップとどのように付き合いたいのか」「メーカーや自治体などとの付き合い方」「AIの開発競争のゆくえ」「日本はガラパゴス化を進めた方がいいのでは」など、幅広い話題が話し合われた。こちらも1部同様に非常に率直そのものの意見が飛び交う。IoTを使ったビジネスやサービスのヒントを探しにきた人には、非常に興味深いトークセッションであったのではないだろうか。

株式会社ガリバーインターナショナルの執行役員新規事業開発室室長である北島昇氏
株式会社ハタプロの代表取締役の伊澤諒太氏
モデレーターを務める博報堂の林智彦氏

(鈴木ケンイチ/モータージャーナリスト+ノオト)

[ガズー編集部]

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