レンズに凹凸!? 厚さ6cm「フラット型信号機」に隠された工夫

先日インターネットを見ていたら、フードのない信号機の画像を見つけました。「え!? 最新型の信号って、こんなに薄いの?」と、気になって調べてみたところ、「コイト電工株式会社」が製造する「フラット型交通信号灯器」であることが分かりました。

「これは取材するしかない!」と、薄くなって進化した信号機「フラット型交通信号灯器」について取材してきました。お話をお伺いしたのは、コイト電工株式会社、照明・ディスプレイ技術部、信号グループの北島真一さんと柳井英幸さんです。

――フラット型の信号、ずいぶん薄いですね

LEDを使用することにより、厚さは従来の138mmから60mmと、半分以下になりました。重さも約20%減って、輸送や保管も容易です。

フラット型信号灯器の内側。一色につき168個のLEDが使われている

――フラット型にしたのは、どのような理由が?

一番の理由は、雪対策です。「信号への積雪や着雪を減らしたい」という要望は何十年も前からあったんですね。従来型の信号ではフードの上に雪が積もってしまい、信号が見えにくくなる難点がありました。また、雪の多い地方ではレンズに着雪して見えづらくなるケースも多々ありました。

そこで弊社では、「大型の屋根をつける」「レンズ面にカバーをかける」などの対策を行ってきました。

それでもやはり積雪、着雪により信号が見えなくなってしまうケースがあり、「とにかく薄くして積雪量を減らそう」と、2005年ごろから新たな信号機の開発に取り組みはじめたのです。

――苦労したポイントは?

まず強度ですね。強風に耐えられるように、さまざまな材質を検討しました。次に角度です。大きく傾ければ、そのぶん表面への着雪は少なくなりますが、一方で光の「取り出し効率」が悪くなってしまい、光が遠くまで届きづらくなってしまいます。ベストな角度を計算し、最終的に約20度となりました。また、レンズにも特殊な加工を施しています。

――レンズにうろこのような形が見えますね

信号機自体が前に傾いているので、光が見えにくくなります。「光を曲げるレンズ」を入れることで、光が正面に向くように設計しているのです。

――やはり雪国での設置が多いんですか?

とくに日本海側が多いですね。北海道、石川県、秋田県ではすでに1,000灯以上設置されています。日本海側の雪は湿気が多くて、着雪しやすく溶けにくいんですよ。下の写真は、実際に使用されている信号機です。これは縦型ですが、従来のものと比較してみると信号がはっきり見えているのがわかると思います。

従来型
フラット型

あと、意外なところでは沖縄県ですね。台風が多いので、従来型の信号だと強風でフードが折れ曲がる場合があるんですよ。フラット型は強風にも強いため、徐々に広まっています。

――レンズの表面が少しザラザラしていますね。これも理由が?

はい、表面に数十ミクロン単位の凹凸をつけています。この加工により、雪がつきにくくなっています。フッ素加工など、表面にコーティングして撥水させる手法もありますが、それだと1~2年で効果が落ちてしまうんですよ。この凸凹であれば10年以上、効果が持続します。また、太陽光による眩しさを低減する効果もあります。

――ほかに何か新しい信号機はありますか?

色覚障害者に見やすい信号機があります。色覚障害の方は、赤と黄色の区別がしにくいという声も多いようです。そこで、赤信号の中に特殊なLEDを配置して「×印」を示し、色覚障害の人にだけ「×」がよく見える「ユニバーサルデザイン信号機」を開発しました。これは九州産業大学の落合太郎教授が考案したもので、すでに東京都と福岡県で社会実験を行っています。いま実用化に向けて、警察庁などに呼びかけているところです。

普段あまり意識することがない信号機ですが、いろいろと進化しているのですね。今回紹介したフラット型信号灯器も、これからどんどん普及していきそうです。みなさんも信号機にぜひ注目してみてくださいね!

(村中貴士+ノオト)

[ガズー編集部]