兵庫県の生活交通バスが「バス旅ひょうご」で目指すもの

兵庫県バス協会は9月1日(木)、生活交通バスを使った旅行を提案するキャンペーン「バス旅ひょうご」をスタートさせた。これは、兵庫県バス協会とバス事業者、県内12市町と11のコミュニティーバスが参画、兵庫県が協力のもと、多彩な風土と産物を持つ兵庫県の魅力を再発見してもらおうという、路線バス観光の社会実験だ。エリア内が乗り放題になる4つの企画乗車券により、路線バスでさまざまな観光が楽しめる。では、なぜこの試みが始まったのだろうか?

利用者の減少が続く「生活交通バス」を観光に

路線バスとコミュニティーバスを合わせて「生活交通バス」と称する。自動車の普及、少子高齢化、人口の減少など、さまざまな要因により生活交通バスの利用者は減少傾向だ。特に地方都市では、この20年で利用者は8割も減った地域があるという。しかし、利用者は減少しても、バスの需要がなくなるわけではない。特に高齢者や学生など、自ら移動の手段を持たない人たちにとってバスはなくてはならない存在だ。生活交通バスの存在そのものが、その地域の「暮らしやすさ」に直結するといえるだろう。

ところが生活交通バスの維持は容易ではない。経常的な赤字を抱えるも、公共交通の確保や交通空白地帯の解消が目的の公共交通機関であるため、黒字化のための事業のスリム化などはほぼ不可能だ。そこで兵庫県バス協会は、県内のバス事業者や兵庫県とタッグを組んで、生活交通バスでの観光を企画。観光によって利用者を増やす試みとして「バス旅ひょうご」がスタートしたのである。

豊かな土地を4つの企画乗車券で

兵庫県は、かつての但馬国、播磨国、淡路国の全域、摂津国と丹波国のそれぞれ西半分、美作国と備前国の一部からなる。また北は日本海に、南は瀬戸内海に面しており、バラエティー豊かな風土が特徴だ。「バス旅ひょうご」では、その豊かな風土に着目。テーマイラストにも、「但馬のコウノトリ」「竹田城跡」「姫路城」「明石のタコ」「うずしお」「明石海峡大橋」が描かれている。企画乗車券は、事業者同士が連携する前例がないなど、さまざまなハードルをクリアした結果、4エリア(「但馬・奥播磨」「西播磨」「丹波篠山」「北淡路」)で実現することとなった。

しかし、企画乗車券で乗り継ぐことができるモデルルートの設定は困難を極めた。本数や運行日が限られており、生活に根ざした路線になっているため、バスでは祭りやイベントごとには行きにくい状況がわかったのだ。また、情報の更新漏れや誤記など、事業者ウェブサイトの不備も露呈。「観光客など『外の人』が利用するという視点に欠けていたのかもしれません」と話すのは、同キャンペーンの前田昌宏ディレクター。社会実験は思わぬところで抱える問題をあぶり出すこととなった。

「生活交通バス」での旅をトレンドに

サービス開始後も、利用者から「窓口の対応が不満」など、厳しい意見が寄せられた。しかし、ウェブサイトには着々と意見や提案、おすすめルートなどが寄せられている。「バス旅の面白さを見出してもらう『はじめの一歩』を踏み出すことができました。利用者の声に耳を傾け、みなさんに使いやすいバス、利用されるバスを目指したいと思っています。『いつものバスで旅しよう』と、生活交通バスが旅の手段のひとつとなる流れを作り出せたらいいですね」と前田ディレクターは思いをはせる。

「バス旅ひょうご」キャンペーンは11月30日(水)まで。兵庫県に興味がある方は、ぜひ、生活交通バスで観光してみてはいかがだろうか? なお、社会実験終了後、来年度は本格運用に移行が検討されている。

バス旅ひょうご
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問い合わせ:公益社団法人兵庫県バス協会 078-391-0543(平日9時~17時)

(上泉純+ノオト)

[ガズー編集部]