冷蔵庫のように開くドアも!? ユニークなドアを持つクルマたち

普段、なにげなく開閉しているクルマのドア。車両前方にヒンジのあるドアやスライドドアが一般的だが、異なった開閉機構を持つクルマもある。先日、予約受付が開始された「テスラ・モデルX」では、上に向かって開く「ファルコンウイング」が後席ドアに採用された。今回は、旧車から新型車まで、ユニークな開き方のドアを持つクルマを紹介したい。

ガルウイングのコンパクトカー、トヨタ・セラ

1500ccの直列4気筒エンジンを持つコンパクトカー、「トヨタ・スターレット」をベースにした「トヨタ・セラ」が1990年に登場したときは衝撃が走った。グラストップにグラスキャノピーというボディの上半分がほぼガラスという構造かつスーパーカーのシンボルだったガルウイングドアを装備していたからだ。

「とんでるセラ」をテレビCMのキャッチコピーとしデビュー。その後テレビCMでは、COMPLEXの「BE MY BABY」に乗せて都会の街並みを若い女性がドライブするイメージで売り出した。当時の「女子力」の方向性が垣間見える。

軽自動車にもガルウイング! オートザム・AZ-1

スーパーカーのシンボルであるガルウイングドアは、軽自動車にも採用された。1992年にマツダが当時展開していたブランド「オートザム」から発表した「AZ-1」だ。

このクルマで軽自動車らしいのは排気量とボディーサイズくらいで、前後車軸感の間にエンジンを搭載するMRレイアウト、クイックなハンドリング、FRPを多用したボディと、軽自動車らしからぬスポーツカーであった。発売から四半世紀がたとうとしている今もなお、「世界最小のスーパーカー」として人気が高く、中古車市場では高値となっている。

「観音開き」を採用したマツダ・RX-8、ホンダ・エレメント

2枚のドアが左右に開く「観音開き」も一部の車種に採用されている。観音開きの利点は、開口部を広くとることができるため、長尺物の積載が容易なこと、前側ドアを開かないと後側ドアを開くことができない構造を取るため予期せぬ開閉を防止することができる点。2000年代に登場した「マツダ・RX-8」や「ホンダ・エレメント」が採用していた。いずれも「2ドア+α」のドアを用いることで、スタイリングと使い勝手を両立させたものだ。

1990年代、「礼をつくす会社、礼をつくすクルマ」のキャッチコピーとともにアメリカからやってきた「サターン」の2ドアクーペ、「SC2」に採用されていたことを覚えている人もいるかもしれない。

「後ヒンジ・前開きドア」の代表格、スバル・360

今は、ほとんどないが、1960年代ごろまでは、後方にヒンジを持つドアを採用していた車種も少なくなかった。後方ヒンジのドアは、前輪のすぐ後ろまで開口部を設けられるため、小さなドアでも乗り降りがしやすくできるといったメリットがあるのだ。その代表的なモデルが「スバル・360」だろう。

スバル・360は、1955年に通産省から発表された「国民車構想」により1958年に生まれた、軽自動車だ。後方ヒンジのドアは、1960年代ごろまで広く採用されたが、スピードを出すと風をはらみ勝手に開いてしまうため、安全性が保てないという理由で徐々に廃れることとなったようだ。

まるで冷蔵庫のようなドアを持つクルマ、イセッタ

クルマのドアといえば普通、側面に付いているものだが、フロント部分が冷蔵庫のようにガバッと開くクルマもあった。イタリア「イソ社」の「イセッタ」がそれだ。このクルマは、BMWがライセンス生産し、「BMW・イセッタ」として販売されていたことでも知られる、1950年代のマイクロカーだ。

ハンドルや計器類がドア側に取付けられているなど、冷蔵庫メーカーでもあったイソ社ならではの独創性が光る。なお、スイスの「マイクロモビリティーシステムズ社」は、このイセッタを電気自動車「Mirolino」として現代によみがえらせるとしており、現在500台の予約が埋まりキャンセル待ちとなっている。

クルマにはさまざまな大きさやジャンルのクルマがあるが、それに合わせてドアのタイプも複数ある。これからさらに素材や技術が進歩していけば、また新しいスタイルのドアを持つクルマが生まれてくるかもしれない。

(上泉純+ノオト)

[ガズー編集部]