2016クラシックカー・フェスティバルin神宮外苑【イベントレポ】

1989年にオープンしたトヨタ博物館。開業の翌年から、クラシックカーの魅力を知ってもらう場として、クラシックカー・フェスティバルを開催してきました。当初はトヨタ博物館のある愛知県でのみの開催でしたが、2007年からは東京での開催もスタート。今年はその東京開催が始まって10回目という節目の年です。今年も明治神宮外苑聖徳記念絵画館前を中心に11月26日(土)、素晴らしい秋晴れのもと開催されました。

トヨタ博物館収蔵の貴重な名車が見られるばかりではなく、実際にクラシックカーを愛好するオーナーの所有者が集い、走行もする。錦秋の東京にクラシックカーが華を添える、そんな秋の風物詩へと成長したように感じます。

色合いでクルマの印象はガラッと変わるもの。そういう体験ができるのもクラシックカー・フェスティバルの良いところ
茨城県谷田部で行われた72時間トライアルにおいて3つの世界記録と13の国際記録樹立し、日本の自動車の頭角を現すきっかけとなったレコード・ブレーカーを復元したクルマ、2000GT

秋の東京を走り抜ける! 名物パレード

パレードでは、一般から集められた参加車両を合わせて100台ほどの車列が東京の街を走り抜けました。

パレード走行は、トヨタ博物館のトヨペット・クラウンからスタート
先頭のクラウンに続き、千葉工業大学自動車部のフォード・A型が登場。この日のパレード参加車両では最古参だ
絵画館前のいちょう並木はまさに見ごろ。大勢の人であふれかえっていた
いちょう並木を抜けるカローラレビン

パレードを眺めた後、再び絵画館前に戻り、クラシックカーの数々を写真に収める人。オーナーに質問する人。往年の名車の前で懐かしむ人。また、子供を率先して愛車の運転席に招き入れ記念撮影を促すオーナーなど……クルマを介したコミュニケーションも、多く目にすることができました。

ホンダ・スポーツをベースに、コマーシャル撮影用に5台だけ生産されたグリフォン。大変貴重なクルマだ

また今年からパレードのスタートの順番が変わったとのこと。今までは国産車と輸入車で分けられていたが、今回からは国産車も、輸入車も混ざった年代順になっていると言います。

トヨタ博物館館長の布垣直昭氏は、開会式のあいさつの中で、「東京での開催も10回目を迎え、少なからずこのイベントも定着してきました。モータリゼーションをけん引してきたカローラも50周年を迎え、サニー、ファミリアといった、ライバル車種も続々世に出始めた時期からおよそ半世紀が経った今。比較的後進と言われてきた日本の自動車文化を、世界の自動車と足並みをそろえて語ってもよいのではないか、という思いから変更しました」と話していました。

カローラ1600GT。今年50周年を迎えたカローラは、モータリゼーションをけん引した大衆車の代表的車種であるばかりでなく、デビューした当時から、カーライフにスポーティなテイストを与え続けたモデルだ
初期モデル、フォルクスワーゲン・タイプ1。当時のように背面に木のスキー板を背負っている

希少車の特別展示だけでなく、走行も

今やその希少性と美しさに魅了されたコレクターの間で人気が沸騰したトヨタ・2000GTの中でも、トヨタ博物館が所蔵する特別な2台の2000GT。
浮世離れした大きさとフォルムは飛行機かクルーザーか。そんな風に思わせるほど特徴的なフォルムのキャディラック・エルドラドビアリッツ。
我が国のスポーツカーの先駆けともいえるダットサン・フェアレディSP310型。
石油危機という時代背景の中で誕生した名車モーリス・ミニ・マイナー。
さらにホンダコレクションホールのコレクションから特別出展されたホンダ・N360。

こうしたクルマたちの特別展示とあわせて、特設コースでの走りも披露されました。

デビュー前に「007は二度死ぬ」にボンドカーとして登場した、この2000GT。走行も披露された。助手席には布垣トヨタ博物館館長も乗車。映画のワンシーンのような光景
レコード・ブレーカーのレプリカが特設の周回コースを走行。試作車ではウェーバーのキャブレターが採用されていた。決して大きなエンジンではないが迫力のサウンドと、何にも似ていないフォルムは観衆をくぎ付けにした

名車とのふれあいも

さらに、エドセル・サイテーション、フォード・サンダーバード、ディーノ・246GTSという、とても美しいクルマたちの車内に乗り込んで、一緒に記念撮影ができる場も用意。来場者が楽しく、クラシックカーの思い出を持ち帰ることのできるよう、趣向が凝らされていました。

リンカーン、マーキュリー、フォードに次ぐ第4のブランドとしてフォード・モーター・カンパニーが立ち上げたブランド「エドセル」のサイテーション。華々しい時代のアメリカ車らしい1台
エドセル・サイテーションの隣はディーノ・246GTS。エンツォ・フェラーリの息子の愛称であるディーノの名がつけられた
アメリカを代表する名車の一台、フォード・サンダーバードでも記念撮影ができ、人気を博した

首都圏の人にとって、クラシックカーを満喫できるうれしい機会

きわめて良好なコンディションで動態を保ったトヨタ博物館のコレクションの数々。首都圏在住の人にとって、愛知県まで足を延ばさなくても美しい晩秋の東京で見ることができる貴重な機会です。また、どのようなクルマがどんな背景で生まれたのか。クルマの歴史に触れることも、このイベントの魅力。過去に思いを馳せることが、きわめてタイムリーな感動を紡ぎだす体験になっていると感じました。次回以降の開催が早くも楽しみになる、そんな1日でした。

今回何か1台……というなら、このトライアンフ・ロードスター1800を忘れるわけにはいかない。のちにトライアンフで代々人気を博すことになるTRシリーズの始祖。しかし、後々のモデルよりもよほどグランドツーリングカーで、なおかつ乗って楽しい1台とオーナーの弁

(中込健太郎+ノオト)

[ガズー編集部]