草刈機にもなる!? 除雪車の種類と仕組み
雪の降る季節になりました。都心部で雪が積もることは少ないですが、北国では雪かきに苦労している方も多いでしょう。今回は、雪の多く降る地域では欠かせない除雪車や凍結防止剤散布車を開発・製造している「株式会社 日本除雪機製作所」に、あまり知られることのない除雪車についてお話を伺いました。取材に応じてくださったのは、管理部の中村哲也さんです。
――除雪車にはどういった種類があるのでしょうか?
区分としては大型、中型、小型、多機能型の4種類です。空港用、高速道路用、市街地用、狭い道や歩道用など、場所や用途に合わせた機種があります。
-
- HTR605 空港用高速ロータリ除雪車
――除雪車の仕組みについて、簡単にご説明いただけますか?
一般的な除雪車に用いられる「ロータリ除雪装置」の仕組みをご説明しましょう。車両前方に取り付けられたリボンスクリュー状の「オーガ(赤い部分)」で、雪を中央に集めます。集められた雪は、奥にある「ブロア」という扇風機のように回転する羽根によって、長い筒状の「シュート」から雪を吐き出されます。ここでダンプに積みこんだり、雪を遠くへ飛ばしたりします。
「凍結防止剤散布車」というのは、具体的には何を散布しているのでしょうか?
塩化ナトリウムや塩化カルシウムですね。これは、塩化ナトリウム水溶液の凝固点が氷点下であることを利用しています。散布された塩化ナトリウムは、路面上のわずかな水分に溶けて水溶化します。この水溶液は路面温度と同じですが、氷点はマイナス16℃前後とかなり低くなります。接している氷は水溶液の温度まで下がろうとするため、空気や路面から熱を吸収して氷を溶かすのです。
また、焼砂や砕石といった「すべり止め剤」も散布しています。著しく気温が下がる場所では、凍結防止剤だけでは路面の凍結を防ぐことができません。砂や石をまくことにより、滑り止め効果を発生させています。
――エンジンはすべてディーゼルなのでしょうか? 馬力は?
ロータリ除雪車はすべてディーゼルエンジンになります。現在は馬力表示ではなく定格出力kWで表しており、国産最大は空港滑走路用で588kW (800馬力)です。
――800馬力! F1並みの出力ですね。1台製造するのにどれくらいの期間がかかるのでしょうか?
エンジンの手配から考えると、完成までに半年以上はかかります。機種の大小により差はありますが、ラインに投入されてからは組立て、塗装などでおおむね18日程度です。
――組立以降は意外と早いのですね。出荷前の検査はどのように行うのでしょうか?
組立が完了した製品は、稲穂工場にある検査場で詳細な検査を行います。その後、走行試験等を小樽にある当社テストコースで行います。検査、走行試験は雪がない状態ですが、負荷をかけて確認する項目がある場合は水槽プールにてテストをします。
――黄色の車体をよく見かけますが、それ以外もあるのでしょうか?
標準色として黄色が多いですが、各ユーザー様が指定した色もあります。具体例を挙げると、北海道開発局ではフレッシュグリーン、北海道庁ではダークグリーン、札幌市はブルー、NEXCOは黄色ですね。(敬称略)
――最新の除雪車について教えてください
昔に比べると、エンジン性能がかなり良くなりました。現在はほとんどの機種が、建機などに適応される排ガス規制「Tier4 final(第4次ファイナル排出ガス規制)」に対応しています。また、油圧クラッチ式保護装置やモニターシステムが搭載され、車両状態の把握やトラブル箇所の表示ができるように進歩しています。まだ試作の段階ですが、ハイブリッド車の製造も検討しています。
――除雪車は冬の時期しか稼働しないんですよね?
いえ、実は「アタッチメント」を装着すれば除雪以外にも使えるんですよ。草刈装置、ロードスイーパー、排水ポンプ装置を小型ロータリ除雪車に装着して使用することができます。
――意外な使い道があるのですね! 御社が納入している先は地方自治体ですか? 東京にもあるのでしょうか?
国土交通省、防衛省、各高速道路会社、民間ユーザーなど幅広くご利用いただいています。90%以上は官公庁や高速道路会社ですね。東京ですと、羽田空港に除雪車があります。また凍結防止剤散布車は、首都高速など関東周辺や四国、九州にもあります。(敬称略)
――ロータリ除雪車の運転にはどのような免許が必要なのでしょうか? やはり運転技術の差も出てくるものですか?
大型特殊免許が必要になります。ただし一部の小型車では、普通免許で運転可能な機械もあります。操作については、電子制御装置等によってある程度自動化は進んでいます。それでも運転技術の差は出てきますね。経験はもちろん、個々のセンスもあるのではないでしょうか。道路脇に積まれた雪山をダンプカーに積みこむ技術だけでも熟練が必要ですし、大型機械で縁石ギリギリまで除雪する技術は神業に近いものがありますね。
――御社のホームページは「KID’Sコーナー」や「雪や氷のキャッチゲーム」など、子ども向けのコンテンツが充実していますね。
除雪機械はほかの建設機械と違い、雪の降る地域以外では見ることがありません。ニュースでときどき出るくらいですので、やはり子どもたちは非常に興味を持ってくれますね。実はミニカーもあるんですよ。もともとは製品のプレゼンや販売促進グッズとして使用していたんですが、一般の方から「販売はしていないの?」といった問い合わせが多くなり、ホームページでの販売を開始しました。トミカバージョン(ロータリ除雪車HTR265)もあります。
アタッチメントを装着すれば草刈や排水ポンプにも使える、というのは意外な発見でした。雪のシーズンに活躍する除雪車ですが、私たちのライフラインに影響が出るような大雪が降らないよう、願いたいものですね。
(村中貴士+ノオト)
[ガズー編集部]
取材協力
最新ニュース
-
-
レクサス『LX』、初のハイブリッド「LX700h」を3月24日発売…1590万円から
2025.03.07
-
-
ロータス、内燃機関スポーツカー『エミーラ』に「ターボSE」追加、2LターボはメルセデスAMGと共同開発
2025.03.07
-
-
ホンダ『WR-V』の座り心地と上質感がアップ、「BLACK STYLE」も新登場
2025.03.07
-
-
ブガッティ、伝説の「タイプ35」を電動ミニカーで再現…歴史と芸術性を融合させたワンオフ
2025.03.07
-
-
ホンダ、インドで「Honda SENSING」搭載車5万台突破…MT車にもADAS搭載
2025.03.06
-
-
ホンダ公認、「ウィングマーク」入りの折りたたみスツール登場
2025.03.06
-
-
タカラトミーが Juju 選手とパートナー契約…スーパーフォーミュラマシンに「TOMICA」のロゴ
2025.03.06
最新ニュース
-
-
レクサス『LX』、初のハイブリッド「LX700h」を3月24日発売…1590万円から
2025.03.07
-
-
ブガッティ、伝説の「タイプ35」を電動ミニカーで再現…歴史と芸術性を融合させたワンオフ
2025.03.07
-
-
ロータス、内燃機関スポーツカー『エミーラ』に「ターボSE」追加、2LターボはメルセデスAMGと共同開発
2025.03.07
-
-
ホンダ『WR-V』の座り心地と上質感がアップ、「BLACK STYLE」も新登場
2025.03.07
-
-
ホンダ、インドで「Honda SENSING」搭載車5万台突破…MT車にもADAS搭載
2025.03.06
-
-
ホンダ公認、「ウィングマーク」入りの折りたたみスツール登場
2025.03.06