ベトナムでシェア・ナンバー1を勝ち取ったGSユアサ
2016年10月末に開催されたベトナムのモーターショー取材にあわせて、ベトナムに進出した日系サプライヤーの工場を見学してきました。見学したのは、自動車やオートバイのバッテリーを生産する株式会社GSユアサの子会社、ジーエス バッテリー ベトナム社です。GSユアサは、自動車用バッテリーで世界シェア2位、オートバイ用で世界1位の大手サプライヤーグループ。アジア地区に限れば、自動車もオートバイもシェア・ナンバー1を誇ります。
- 平均年収が2000ドルのベトナム庶民の足はオートバイだ
ベトナム進出から、来年で20周年を迎える
GSユアサがベトナムに進出したのは1997年。来年で20周年を迎えます。この1997年は日系ブランドが大挙してベトナムに進出した年で、トヨタやホンダも同じ年にベトナムにやってきました。ちなみに現在、ベトナムでクルマを生産している日本の自動車メーカーは、トヨタとホンダと日野。オートバイはホンダ、ヤマハ、スズキが生産しています。またGSユアサだけでなく、デンソーやブリヂストンなどの大手サプライヤーもベトナムに現地法人や工場を構えています。
とはいえ、まだまだベトナムの庶民の足はオートバイ。自家用車市場は小さく、年間15万台程度です。一方でオートバイは年間330~350万台も新車が売れています。しかも、そのオートバイの約7割がホンダで2割がヤマハ。そうした日系メーカーにバッテリーを納めるGSユアサは、オートバイの新車装着でベトナム国内のシェア75%。もちろんトップです。さらに国内保有3500万台の補修用バッテリーの販売シェアでも約50%を獲得。オートバイ用のバッテリーメーカーとしてGSユアサは、ベトナム・ナンバー1の地位を獲得することに成功しています。
- ホーチミン市の北の工業団地内にあるGSバッテリー ベトナム社の工場
クルマ社会への変化に対応できるのか?
ベトナム・ナンバー1とはいえ、それはオートバイ分野に限った話。実はクルマに関しては正直、苦戦しています。なぜなら、ベトナムにおけるクルマの販売は、現地メーカーのチュオンハイがトップ。チュオンハイはトラックやバスの製造と、ヒュンダイやキア、マツダなどのノックダウン生産を行っている自動車メーカーです。ベトナム企業だけに、バッテリーもベトナム・ブランドを優先して使うため、GSユアサのバッテリーを新車装着するクルマは2割にとどまっています。また、オートバイに関していえば、もうほとんどの人がすでにオートバイを所有しているため、新車販売は頭打ち。本格的なモータリゼーション到来が期待されるベトナム市場を考えると、GSユアサはクルマのシェア拡大が直近の命題となっているそうです。
さらにベトナムには、2018年問題という大きな課題があります。それは、2018年からASEAN(東南アジア諸国連合)内の自動車の関税がゼロになるというもの。まだ、自動車産業が育っていないベトナムに、タイやインドネシアから、安いクルマが関税ゼロでやってきます。ベトナムの自動車産業は衰退して、日系メーカーも撤退してしまうかも。そんな最悪なシナリオも予想されるほど。成長期のASEANはダイナミックに社会が変化するので、その対応が難しいということですね。
若いスタッフがキビキビと働く工場
続いて、工場を見学させていただきました。工場があるのは、ホーチミン市の北にあるビンズオン省の工業団地内。団地内には日系だけでなく台湾や中国などの工場も並んでいました。ここにGSバッテリー ベトナム社の工場が2つあり、約1500名のベトナム人社員がバッテリー生産に携わっています。日本人は、社長、製造、品質保証、販売担当の4人だけ。あとはすべてベトナム人です。
- 取材に訪れた筆者を迎えてくれた温かいサインボードに感激!
工場に足を踏み入れると「Welcome Mr.Kenichi Suzuki」の電光掲示板が迎え入れてくれました。細やかな心遣いに感激です。工場では、オートバイ用と自動車用のバッテリーに使う極板からの一貫生産を行っています。またフォークリフト用の電池の完成品の組み立ても行っていました。3交代の24時間体制でフル生産が続いているとか。働くスタッフの平均年齢は28歳。みなキビキビと働いています。
日本人の駐在スタッフは「ベトナム人は勤勉で規則もきちんと守ります。日本人に気質が近いものがあります。ただし、待遇が悪いとすぐにやめてしまうので、職場環境や福利厚生に注意しています。また、頑張った人に多く給料を支払える、みんなが納得できる給与体系も大切ですね」と話してくれました。
- 生産工程で働くベトナム人男性は、平均年齢28歳と非常に若い
正直、生産施設は最新のオートメーションではなく、手作業が多いという印象です。でも、清掃は行き届いており、整理整頓もしっかりとしています。かなりきれいな工場でした。不良品の発生率は、ほとんど日本と同様だとか。ベトナムにおけるGSユアサの高いシェアも、品質の高さが理由にあるというのです。実は、ベトナムでは一時期、格安の中国製オートバイが発売されたことがありました。しかし、安かろう悪かろうで、すぐに壊れてしまう。安いといってもベトナムの人にとってオートバイは高額商品です。それが壊れては困るということで、すぐに中国製の粗悪オートバイは市場から消えてしまったそうです。それと同じ理由で、バッテリーに関しても、粗悪の偽物はほとんど売れないそうです。そうしたベトナムのユーザーの志向も品質を大切にする日系メーカーにとっては有利に働いているようですね。
(鈴木ケンイチ+ノオト)
[ガズー編集部]
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