プリウスとハイエースが狙われている!?「自動車盗難」の実情

2000年ごろに大きな社会問題となった、自動車盗難。その数は減っているとはいえ、いまだ年間1万台以上が被害に合っています。今回は、損害の低減や未然防止活動を行っている一般社団法人 日本損害保険協会にお伺いして、「自動車盗難」の実態についてお話をお聞きしました。

――なぜ、自動車の盗難件数は減っているのでしょうか?

​​ピーク時は年間6万台以上の自動車盗難がありましたが、2015年には約1万4千台まで減少しました。「自動車盗難等の防止に関する官民合同プロジェクトチーム」が2001年に設置され、損保協会もその一員となり、自動車盗難対策に取り組んでいます。同プロジェクトチームにおいてイモビライザー装着の普及促進を行ったことが自動車盗難減少の大きな要因のひとつかと思われます。イモビライザーは、キーから発信されるIDコードを車両本体内のコンピュータが照合し、一致しないとエンジンが始動しない盗難防止装置です。

​​自動車盗難認知件数の年別推移(警察庁統計より。車上狙いは除く)

――都道府県別で見ると愛知県、大阪府での盗難が多いですが、何か理由はありますか?

はっきりとはわからないのですが、「すぐに逃走しやすい」「大きな港があるので不正輸出しやすい」といった理由が考えられます。盗難車は、日本ではなく海外で売りさばくパターンが多いですからね。

自動車盗難認知件数(警察庁統計より。車上狙いは除く)

――車種別の盗難状況について、傾向などありますか?

2014年以降、盗難台数の1位はプリウスですが、それまでは長年ハイエースが1位でした。ハイエースは故障が少なく信頼性が高いことや、世界中のどこでも部品が手に入ることから、海外でも人気の高い車種。部品をつけて改造することもあるそうです。また汎用性も高いようで、エンジンだけ取ってモーターボートに使用するという話も聞いたことがあります。

車名別盗難状況(車両本体、各1か月での調査)。損保協会「自動車盗難事故実態調査 結果報告」より抜粋

――メーカー別ではトヨタがダントツで1位ですね

トヨタ車が目立っていますが、プリウスやハイエースを筆頭に人気のある車種が狙われた結果だと考えられます。海外ではBMWの盗難が多く日本とは状況が異なります。

メーカー別盗難状況(2015年11月調査)。損保協会「自動車盗難事故実態調査 結果報告」より抜粋
※輸入車については、輸入取扱会社ではなくブランド名を表示

――カーナビ盗難など、車上狙いについてはどうでしょうか?

カーナビ盗難については、被害件数が大きく減少しました。理由としては、カーナビの低価格化が進み盗難をする価値が下がったこと、セキュリティーコードが搭載されパスコードを入力しないと使えなくなったことが挙げられます。最近多い盗難品目はバンパー、ドアミラー、タイヤ、ホイールといった外装パーツです。外しやすく換金しやすいものが盗まれやすいと考えてよいでしょう。

車上ねらいの被害品(2015年11月調査)。損保協会「自動車盗難事故実態調査 結果報告」より抜粋

――盗難の被害に遭わないために、どうすればよいのでしょうか?

損保協会のホームページには、愛車を「盗難」「車上狙い」から守るための基本5箇条を掲げています。

(1)イモビライザーなどの盗難防止機器を装着する
(2)車内に貴重品、カバン、服などを置かないようにする
(3)見通しがよく照明設備の整った駐車場を利用する
(4)短い間でもクルマから離れるときは必ずキーロックする
(5)カーナビの盗難対策をする

盗難場所の割合。2013年11月単月の損保協会調査(車両保険金をお支払いした事案)による

クルマが盗まれる場所は、屋外の駐車場が約8割です。夜間でも明るく、見通しがよい駐車場に停めましょう。また、警察庁統計によると約3割のクルマが、カギをつけたままの状態で盗難に遭っています。「すぐに戻ってくるから大丈夫」と思っても、ちょっとした隙に盗まれてしまうんですね。外から見える場所にかばんや財布貴重品などを置いたままでは、車上狙いを誘っているようなもの。ドアロックをしたからと安心せず、貴重品は必ず携帯しましょう。カーナビも、特殊なねじで装着するといった対策が必要です。

自動車盗難、車上狙いはドライバー自身による対策や心がけである程度は防げるもの。上記のデータも参考にして、被害に遭わないよう気をつけたいものですね。

(村中貴士+ノオト)

[ガズ―編集部]

取材協力

一般社団法人 日本損害保険協会

http://www.sonpo.or.jp/