移動販売車な人たち-ピンクでアメリカンなソフトクリーム店「ラッキーボックス」

九州各地で開催されるイベントによく足を運んでいて、不思議な移動販売車を目にすることがありました。一見するとシャンパンピンクに塗装された普通のトラックですが、荷台から脚が伸びて車体と分離。荷台のボックスだけがお店になるのです。

車両は日産・アトラスの2トン車を改造したもの。荷台のボックスが自立したら、車両を移動させる

荷台から脚が伸びて、車体から離れる様子は「逆サンダーバード2号」と表現したくなるもの。なぜ、こんな不思議な形をしているのか? 「ラッキーボックス」の名前でソフトクリームを販売するこの移動販売車のオーナー、鴨川幸二さんにお話を聞きました。

これが営業時のラッキーボックス。アメリカンな雰囲気のソフトクリーム店だ

居酒屋の店主が移動販売を始めたワケとは?

鴨川さんは北九州市にある焼き鳥メインの居酒屋「ぢどり屋 運」の店主。「居酒屋はお客様が来るのを『待つ』業態。そんな『待ち』の生活が続いていたので、お客様がいるところに能動的に出かけていきたいと思ったんです」と移動販売車での営業を始めたきっかけを教えてくれました。

「ぢどり屋 運」を深夜1時に閉店して3時ごろに就寝、6時に起きて出動開始。これが毎週末、各地のイベントに出店する鴨川さんのサイクルです。

「ラッキーボックス」オーナーで「ぢどり屋 運」の店主・鴨川幸二さん

「本業が炭や脂で汚れる仕事なので、移動販売ではきれいなキッチンを保てるものにしたくてソフトクリーム屋を選びました。お子様連れのお客様とのコミュニケーションや、居酒屋のお客様とのギャップを楽しんでいますね」と鴨川さん。

車両にかけた費用は「中古住宅を買えるくらいの金額」

移動販売を思いついたときにまず考えたのは「メンテナンスのしやすさや販売自体に手がかからない仕組み」だったそうで、シャシーとボックス部分が切り離せる車両を探したそうです。そうして車両が見つかったのが2011年のこと。当時、自動車ディーラーに務めるお友達に「女性に人気のボディカラーは?」と聞いて、「シャンパンピンク」という答えが返ってきたことが、この色に全塗装した理由です。

ボックスの中は、ピカピカに磨き上げられた業務用冷蔵庫、流し、ソフトクリーム製造機、エアコン、ゴムマットが敷かれた床など、まるで常設店の厨房のように仕上げられています。外部には、軽油で駆動する発電機が設置され、給油なしで丸一日以上営業を続けられる仕様で、車両本体とボックス内の厨房機器設置など合わせて「中古の住宅が1軒買えるくらいの金額がかかった」とのこと。

常連客が描いてくれたロゴやピンストライプで華やかな雰囲気になった

営業開始当初は、シャンパンピンク1色のシンプルだったボディーも、今はロゴなどが描かれ賑やかな雰囲気に。「ピンストライプを練習しているお客様が描いてくれたんです。ハーレー乗りでもある自分らしいアメリカンな雰囲気になって、さらに愛着が湧きました」と笑顔で話していました。ラッキーボックスはほとんど毎週、九州各地のイベントに出店しています。どこかで見かけたら、ぜひ注目してみてくださいね!

(テッド・オオタニ+ノオト)

[ガズー編集部]