クルマメーカーも度肝を抜く学生製作カスタムカー【東京オートサロン2017】

毎年このオートサロンに足を運ぶ中で、筆者が毎回楽しみにしているカスタムカーがあります。それは、クルマ好きな専門学生が1年掛けて製作したクルマ達です。

昨今のオートサロンでは、自動車メーカーも力を入れて古参のカスタムショップ、チューニングメーカーに負けないカスタムカーを出展しています。ですが、あくまでもメーカーであるのでなかなか思い切ったクルマを製作するのは難しいところです。

学生である彼らは、制約なく自分たちが思い描いた夢のクルマを現実世界に誕生させます。今年もびっくりするような学生カスタムカーが多く出展されていました。

懐かしのモンスターレーシングカーが公道走行カーになって復活「NATS Type 17S-R」

ベースとなったセラはYahoo!オートサロンで見つけて購入したとのこと

まず紹介するのは、クルマ業界に多くのプロフェッショナルを輩出している千葉県のNATS(日本自動車大学校)のブースに展示してあったこの懐かしのグループCカー・ミノルタトヨタ88C-Vを見事に再現したカスタムカー「Type 17S-R」。トヨタのガルウィングカー・セラがベースです。88C-Vが走行したグループCカテゴリーは、80年代から90年代前半のこと。これらを製作したチームメンバーの年齢層よりも上になってしまうところが面白いです。

ボディは大部分がベニヤとFRPを組み合わせて製作されており、リアカウルはマツダ・RX-7(FD型)のを型取りしてるとのこと。ヘッドライトは三菱・FTO、テールライトはアルファロメオ・156から流用されています。セラのコンポーネンツには基本的に手を加えずに製作したアイディアが光る1台です。

40年前の伊米スーパーカーが平成のクルマ好きの手で再現「NATS MRP」

次に紹介するのは、スーパーカー世代には懐かしのデ・トマソ・パンテーラを再現した「MRP」。ベースはトヨタのミッドスポーツカーSW20型MR2です。

カラーリングも当時流行った赤黒のツートンカラー。ヘッドライトはMR2、テールライトはメルセデス・ベンツW102型(250Eや280SEなど)から流用しているという点に驚嘆しました。

世界最強の走破性を持つオフロードカーが可愛らしく! 「NATS AMG J-Class」

視線を変えるとそこには、1台8000万円、日本ではたった5台だけ販売された究極のオフロードカー「G63 AMG 6x6」……? と思ったら妙にコンパクト。

ベースはなんとスズキ・ジムニーの「AMG J-Class」! その面影は全く残っておらず、所々に本物のパーツが使用されているため、見事なスケールダウンを実現しています。さすがに3軸目は駆動系となっていませんが、プロでも高い技術力が求められるフレームの延長も公道走行も問題ない仕上がりに。迫力満点ながらも、かわいらしい1台です。もちろん走破性はジムニーのそれを損なわないように作られているようです。

まるでチョロQのようなキュートなコンパクトFRスポーツカー「NATS CP-7 SA66R」

こちらの可愛らしいスポーツカーは、「CP-7 SA66R」という名のカスタムカーです。この鮮やかなメタリックグリーンと車名から、マツダの初代SA22C型RX-7をモチーフにしたということは容易に想像がつくでしょう。ベースは、スズキのFRスポーツKカー「カプチーノ」。ただRX-7を再現しただけでは面白くないので、80年代のアメリカで行われてたIMSAレースのオーバーフェンダー仕様を製作したそうです。

テールライトはSA22Cの本物を流用しているだけにリアのプロポーションは完璧! フロントのリトラクタブルライトはマツダ・ロードスターから流用しています。過去に13Bエンジンを搭載したチューンドカプチーノが存在していたので、搭載したらより面白いクルマが誕生するのではと思ってしまいます。

多くの人の感動を誘った名カーアクション映画の主人公の愛車「NATS Charger Daytona」

この特徴的なロングテールと大きなリアウィング。世界的人気カーアクション映画「ワイルド・スピード」を見ていた人なら、きっと目に留まると思います。このカスタムカーは「ワイルド・スピード EURO MISSION」で登場した主人公ドミニク・トレットの愛車「ダッジ・チャージャー・デイトナ」を、トヨタのプレミアムクーペ「ソアラ」をベースに、本物と見間違えるぐらいの再現度で製作しました。

インテリアを見て初めてソアラがベースだとわかるぐらいにカスタムされています。特徴的な前後オーバーハングは、すべて鉄板加工で延長されていました。他の展示車両に比べても、かなり大きな改造をしなくてはならなかったことは、容易に想像がつきます。さらにテールライトはダッジ・チャージャー・デイトナのものを使用しているので再現度が格段に高いのです。

目指せ、学生D1チーム! まだ走れないけどスタイリングは◎「NAC スタリオン SPEC-D」

岐阜県にある中日本自動車短期大学が展示したのは、今でも根強いファンが多くいるFRスポーツカー三菱・スタリオンをD1GP用マシンにチューニングした「NAC スタリオン SPEC-D」。スタリオンそのものの個体数も、かなり貴重になっています。D1車両に仕立て上げてチャレンジするというプロジェクトは非常にインパクトを受けました。メカニズムはスタリオンではなく、日産・スカイラインGT-Rから移植。つまりエンジンは名機RB26DETTを搭載しています。

スタリオンのカクカクしたスタイリングを活かしたワンオフフルエアロボディは迫力満点ですが、残念ながらまだ資金不足により走行可能な状態でないとのこと。このオートサロンで、スポンサー探しをしていました。

いかがだったでしょうか? 毎年学生カスタムカーは驚きばかりでこれだけを見るためだけにオートサロンに行く価値は十二分にあると筆者は感じます。ちなみにNATSの出展車両は、オートサロン終了後にナンバー取得に向けての最終的な仕上げを行い、卒業旅行でツーリングするというゴールが待っています。
昨今若者のクルマ離れという言葉を時折聞きますが、彼らのようなチャレンジ精神あふれたクルマ好き学生がいる限り、日本のクルマ文化はまだまだ大丈夫かもしれないですね。

(クリハラジュン+ノオト)

[ガズー編集部]

MORIZO on the Road