ビルの屋上をクルマが走る!?葛飾区「金町自動車教習所」
自動車教習所は数あれど、その場所がユニークであれば、当然だがやはり記憶に残るもの。JR常磐線の下り、「次は金町〜」とアナウンスが流れるころ、左手の車窓には大きく「金町自動車教習所」と書かれたビルが見える。
はて、当の教習所は? なんだかビルの上にやたらと街路灯が見えるが…。
そう、そのビルの屋上にこそ金町自動車教習所はある。
- 金町自動車教習所の入り口。ここに教習所があるとは思えない
ビルの正体は商業施設の「イトーヨーカドー金町店」。東京都葛飾区のJR金町駅北口から徒歩約3分、ドラッグストアやそば屋、銀行などの商店を横目に歩いて葛飾区金町地区センターを越えたあたりに、大きく右にカーブするようにイトーヨーカドーが現れる。
地元では当然の存在でも、初めて「知る・見る・訪れる」人にとってはなかなかのインパクト。では、どのような経緯で金町自動車教習所は「屋上の教習所」という道を歩むようになったのか。
歴史を紐解くと1959年(昭和34年)6月、タクシー事業を展開する「坂本自動車株式会社」が所有する金町のこの土地に自動車教習所を開所。翌1960年(昭和35年)には、所内で運転試験等が受けられる公安委員会指定の教習所として認可を受けた。もちろん当時は地上の教習所。教習コースも「地面」につくられていた。
- 1973年イトーヨーカドー開店と同時に教習所も再オープン
その後、金町エリア開発の話が進み、教習所の土地にもビルを建てる計画が持ち上がった。調べてみると、建物を建てても公安委員会指定のコース面積は確保できることがわかり、当時の社長・加藤佐市さんが、イトーヨーカドーが入ることを条件にビル建設を容認したという。こうして、階下に商業施設が入るビルの屋上で運転を学ぶ画期的なスタイルの自動車教習所が誕生した。敷地面積は10,001.54平方メートル。うち、コースの敷地面積は8,325.05平方メートル(公安委員会の規定は8,000平方メートル以上)。
- 2000年代初期の空撮写真。空からもしっかりと教習コースがわかる
関係者は「耐震面などの安全はクリアしていますが、建物が古いためバリアフリー化ができない部分も正直あります。エレベーターも街の開発が進む段階で、その都度『どこに設置しようか』という話は出たのですが、現在も階段です。健康的でしょ?」と施設をいとおしむ。
また「お客様といかにコミュニケーションを取るかを大切にし、地域との関わりについても積極的に活動しています。所内の掲示板に指導員の写真を載せるなど、安心やリラックスを感じてもらえるように心がけたり、教習所を解放して、近隣の小・中学生の交通安全教室を行ったりもしています」とも。
- 現在の教習所コース。空が広くて気持ちいい
現在では、神奈川県の久里浜、北海道の札幌などにも屋上型教習所は存在する。いずれも平成になってから建設された教習所であるが、いずれも建設前にこの金町自動車教習所を視察に訪れたという。昔からある安心感と屋上型というユニークなスタイル。施設はいぶし銀だが、教習は今に見合ったスタイルで行われている。
(別役ちひろ+ノオト)
[ガズー編集部]
取材協力
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