ドライバーとクルマを繋げる新技術【オートモーティブワールド2017】
1月18日(水)~20日(金)の3日間、東京ビックサイトでクルマの先端技術展「オートモーティブワールド2017」が開催されました。このイベントは自動運転、クルマの電子化・電動化、コネクティッド・カー、軽量化などクルマにまつわる先端技術を手がけるメーカーが集まる、商談と技術相談のための展示会。筆者はIoTや自動運転に繋がるコネクティッド技術を中心に見学をしてきました。
頭で考えるだけでドライブ? 脳波でのドライビングシミュレーション
3DVR(バーチャルリアリティ)シミュレーションソフトの開発を行う「株式会社フォーラムエイト」のブースには、なんと脳波でクルマを操作する技術が展示されていました。
脳波を読み取るヘッドデバイスを頭部に装着し、導電部が額にあたるように調整。画面左下にあるモニターで脳波を検出できたことを確認したら準備完了です。画面に写っている山道の先を集中して見ることによって、モニター内の「ATTENTION」メーターが回り、それがアクセルとなって動き出します。目線を逸したり深呼吸をしたりすると、「ATTENTION」メーター右隣の「MEDITATION」メーターが回りブレーキがかかります。下の動画は、筆者が試してみたときにもの。
道の前方に意識を集中しても、なかなか加速しません。ほんのわずかでも視線を逸らすと集中ゲージが下がってしまい、クルマが止まってしまいました。ようやくジリジリと動き出し始めたものの、せいぜい30km/h程度が限界でした。まだまだコツがいるようですが、この技術が確立されれば、クルマがドライバーの意識レベルをより正確に素早く把握可能になり、事故防止に繋がりそうですね。
走行中の充電を可能にする非接触給電システム
- i8の前で説明をしているのは、Qualcomm Europe ビジネス開発/マーケティング担当副社長 グレアム・デイヴィスン氏
スマートフォン用のCPUを開発している大手半導体メーカー「Qualcomm社」は、日本でも知名度が高まりつつあるEV(電気自動車)によるフォーミュラレース「Formula E」の充電システムの技術協力をしている企業です。このQualcomm社のブースでは、同社の非接触(ワイヤレス)給電技術「Qualcomm Halo」を採用したFormula Eのセーフティーカー、BMW・i8でした。
Qualcomm Haloの給電の仕組みは、電線からきた電気を送電コントローラーユニットで高周波電力に変換し、地面に設置された送電コイルからクルマに取付けられている受電コイルで電気を受け取り、車内にある整流器で直流にバッテリーに給電するというもの。クルマの停車位置が給電システムと完全に重ならなくてもお互いに位置を確認・最適化し、素早い充電を実現しているそうです。
メーカーの説明によると、i8に採用されている7.4kWシステムは約1時間で満充電可能とのこと(BMWの充電システムで約2.5~3時間で80%)。現在は駐車スペースでの静的充電の普及を目指していますが、将来的には走行中の充電を目指します。
東京都の資料によると、2016年3月15日現在、670カ所に充電器(100V・200V急速充電器)が設置(一部設置予定)されているそうですが、1カ所に充電器が1基だけの場所も多く、また郊外になるとその数は激減します。Qualcomm Haloは非常にコンパクト(持ち運びも可能)なので、設置の手間を圧縮でき、充電器普及を加速させることができそうです。
最新の自動運転の心臓部はこんなにコンパクトだった!
世界中の高品質な半導体・電子部品プロバイダーとして事業展開している「株式会社トーメンエレクトロニクス」では、PC業界ではおなじみのグラフィックチップを開発生産しているNVIDIA社の最新自動運転プラットフォーム、「Drive PX2」のデモンストレーションをしていました。
Drive PX2は、指定した地点を自動運転で行き来できる機能までカバーできる中間グレード「NVDIA DRIVE PX2 “AutoChauffeur”」。これが複数枚になると自律運転が可能になる”Full Autonomy”です。
AutoChauffeurの値段は、細かい仕様によって変わるが大体「300~400万あたり」とのこと。デモ機の奥に置いてある2つの画面の左側は、実際にドライバーが見るUI(ユーザーインターフェイス)、右側の画面は実際にDRIVE PX2が受け取った情報を処理するソフトウェア「DRIVEWORKS」の処理イメージとなっています。
トーメンエレクトロニクスは、この自動運転プラットフォームを乗用車以外のモビリティへの応用や研究開発に向けた最適なソリューションを提案していく事業を展開していくそう。実物を見るのはこれが初めてでしたが、実物を目の当たりにして改めて自動運転を司るシステムの高性能化とそれに反比例したサイズの超小型化に驚かされました。
いかがだったでしょうか? 今回は自動運転とコネクティッド技術に限定してお伝えしましたが、このイベントでは自動車業界を支えているさまざまな分野の企業がたくさん出展していました。少々予備知識がないと難しい部分もありましたが、技術的な深い話を聞く事ができて勉強になりました。オートモーティブワールドは、すでに2018年の日程も発表されているので、来年はぜひ足を運んでみてくださいね。
(クリハラジュン+ノオト)
[ガズー編集部]
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