スバル4WDの過去、現在、そして未来を知る(前編)
その比率、なんと98%なのだそうです。なんの数字かと言うと、スバルの生産車(OEMを除く2016年における世界販売)におけるAWD(四輪駆動=4WD)の比率。つまり、1000台のスバル車があれば、980台は4WDということになります。
この比率は、SUVのマツダ・CX-5で40%ほど、アウトドアイメージの強い日産・エクストレイルでも70%程度といいますから、メーカー全体で98%というのはなんともスゴイ数字なのです。
ちなみに日本国内では、BRZこそAWDの用意がなくすべてFR(後輪駆動)ですが、FF(前輪駆動)も選べるインプレッサでも、実に59%のユーザーがAWDを選択。レガシィ、レヴォーグ、WRX、フォレスター、クロスオーバー7、XVでは、ラインナップのすべてがAWDとなっています。
スバルAWDのルーツは東北電力からのオーダー
今でこそ「AWD」のイメージが定着しているスバルですが、もちろん自動車を作り始めたころからAWDにこだわっていたわけではありません。スバルのAWDが産声をあげたのは1971年のこと。
「山間部の送電線の点検用に積雪地での走破性と快適性を両立したクルマが欲しい」という東北電力からのオーダーで、宮城スバルがFF車のスバル・1000バンをベースに、独自に4WD化した車両を試作しました。
- スバル・1000(写真はセダン、スーパーデラックス)
それまで四輪駆動といえば、ジープなどの本格オフロードカーにしかなかった機構です。東北電力の要望によりFFから4WDに改造されたこのバンが、国産初となる「ワゴンボディの乗用車タイプ4WD」となりました。レオーネからレガシィに引き継がれていく、スバルAWDのルーツとなったクルマです。
現存する唯一の試作車を見ることができた!
先日、メディア向けに雪上試乗会がおこなわれました。そこにはスバルAWDのルーツとなる「スバル・ff-1 1300Gバン 4WD」の試作車が展示されていました。
- これがスバル・ff-1 1300Gバン 4WD。現存する唯一の個体だ
スバル・ff-1 1300Gバン 4WDは、宮城スバルから製品化の提案を受けて、スバルが試作したもの。試作車は8台作られ、うち5台が東北電力に、残り3台は長野県白馬村役場、長野県飯山農業協同組合、そして防衛庁に納車されたそうですが(試作車を納車するなんて今ではありえませんが当時は行われていたのでしょうね)、現存しているのは1台のみ。なかなかお目にかかれるクルマではないので、ここぞとばかりに細かくチェックしてみました。
- 四輪駆動へと切り替えるトランスファーレバーが追加されている
車内を見てもっとも驚いたのは、後輪に駆動力を伝えるプロペラシャフトの通し方。ベースはFF車なのでフロアには当然、プロペラシャフトを通すスペースはありません。ではどうしたか? なんと室内にプロペラシャフトが通してあるのです。そうきたか!
- 中央の盛り上がった部分の中に、駆動力を伝えるプロペラシャフトが通る
もちろん、しっかりカバーがかけてあって剥き出しではありませんが、なかなか思い切った手法ですね。とはいえ、FF車を手作業でAWDに改造するなんて、当時のエンジニアの発想力と行動力には驚かされます。
リヤデフは日産製。実は今でも日産の部品が欠かせない
AWDで必要となるリヤデフは、510型ダットサン(日産)・ブルーバード用が使われています。当初は、同じ車種のタクシー用をつけたもののギヤ比があわず、乗用車用をつけたらピッタリだったのだとか。ブルーバードの部品をつけた理由は当時、富士重工業と日産自動車が提携関係にあったからですが、実は提携が終了した現在でも一部のスバル車のリヤデフは日産車用の部品が使われています。
- ff-1 1300Gバン 4WDのリヤゲートは上下に開くタイプ
こうしてスタートした4WDの歴史はその後、「路面をしっかり捉える安定性の高さ」を味方にスバルにとって欠かせない技術となり、市販車に搭載されただけでなくWRC(世界ラリー選手権)でのチャンピオン獲得を強力にバックアップするなど大活躍。「スバルといえばAWD」となりました。98%という驚くべき高さのAWD比率は、そんな先人の工夫と情熱の結果なのです。
- それにしても小さなエンジン。スペアタイヤやジャッキもすべてエンジンルーム内に格納されている
これまで「スバル」はブランド名で、会社名としては「富士重工業株式会社」でした。しかし今年の4月1日から同社は社名を「株式会社SUBARU」へと変更することが決まっています。今回の試乗会は、富士重工としての最後のメディア向け試乗会でもありました。そんな歴史を刻む試乗会に参加して歴史的な1台と対面できたなんて感慨深いですね。
(工藤貴宏+ノオト)
[ガズー編集部]
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