ポルシェにマセラティ……その乗り心地は? JAIA輸入車試乗会レポ前編

JAIA(日本自動車輸入組合)主催の輸入車試乗会は、メディア関係者を対象に、正規輸入車の数々を一堂に集めて開催されるイベントです。最新のラインナップをおさらいすることができるイベントとして、多数のメディアが参加し、そこで取材されたコンテンツを楽しみにしている読者も多いイベントだといえるでしょう。

スポーツカーから、サルーン、SUV、異国の日常の魅力の詰まったベーシックカーまでジャンルは様々だ

今年も3日間通して23台のクルマに、乗せていただくことができました。その中から、何台か振り返っていこうと思います。

人気の理由がよくわかる」ポルシェ・マカンGTS

ポルシェの中で今その人気を支え、純粋に販売台数を上乗せしているのが、カイエンとこのマカンといったSUVモデル。実際街で見かけることも多い一台で、憧れのクルマにこの名前を挙げる人も少なくないのではないでしょうか。360馬力を発生する3000ccエンジンをフロントに納めた4輪駆動、1900mmを超える幅は街で見てもワイドさが際立ちますが、乗ってみると実にちょうどいいサイズに感じるから不思議です。全長は4700mmと今どきのクルマとしては大きすぎず、十分な幅員で、ステアリングの動きに対してしっかりとした切れ角を確保していると感じました。

このエンブレムが付く意味、ステアリングを握れば理解できるだろう。同時に「よいクルマ」について考えさせられるものを持っている

運転している限りにおいて、おそらく女性でもそれほど持て余すことはないのかもしれません。ダウンサイジングターボで、効率に走りすぎているクルマも多い中、ぶれずにオーセンティックなスタイルを大切にしながらも、新しいクルマ造りに攻め込んでいる。そんなポルシェの誇りと格はこのクルマからもしっかり感じ取ることができます。車格を考えるとこのGTSの3000ccエンジンくらい、たっぷり目のエンジンがマッチしていると感じます。

車格にマッチしていると感じさせるエンジン

重々しさも感じません。ポルシェですから。それでも、もっと滑らかな乗り心地を求めるなら、ほかの選択肢もあるのかもしれません。しかしながら、ポルシェ固有の高揚感はこのクルマでもしっかりと感じ取ることができます。ステアリングを握るとそこには「独特の達成感」がある。人気の理由、わかる気がします。個人的にもとても好ましい一台でもありました。

「1000kmでも短距離でもグランドツーリングになるクルマ」マセラティ・クアトロポルテS

リニューアルされたばかりの、マセラティのラインナップ中で一番新しいモデルのクアトロポルテ。全長で5.3mに迫ろうかという全長もあいまって、ダイナミックなフォルムは写真で見ただけではわからない深みを感じさせます。

ドアを開け中に乗り込むと、いたるところにあしらわれたトライデントのマーク。五感を刺激されながら、マセラティに乗っていることを強烈に自覚させるのです。贅沢なレザーは、発色・風合いともに素晴らしく、肌に触れるもののタッチも秀逸。レザーの香りに包まれながらドライブをスタートさせます。

ドアを開けると、ドライバーのまなざしの先、いたるところにある”maserati”の文字とエンブレムトライデント。乗るものに「あなたが乗っているクルマはマセラティだ!」と強烈に言い聞かせるようだ

走り始めるとその大きなボディから重厚さが伝わってきます。低音をベースにした、野太く雄々しいハーモニーとともにアクセルを踏み込むと、たちまち力強く加速。先ほどまで重厚だと感じていたそのフィーリングは、こんなにも軽やかだったのかという驚きにと変わることでしょう。

マセラティは旧来V8モデルで勝負してきたメーカー。そんなメーカーのV6エンジンのフラッグシップリムジンはどうなんだろう? と思っていました。しかし、軽やかかつ滑らか、レスポンシブで重厚さもあるエンジンを味わうことができ、ある種の安堵を覚えた次第です。その見た目よりもはるかに気軽に乗って出かけたくなるクルマである点は意外でした。

そのまま試乗会の会場から10分くらいの場所にある、お気に入りの食堂に行きました。1000kmのロングドライブでなく、こうした短距離のドライブでも、しっかりとグランドツーリングにしてしまうあたり、さすがマセラティだと感じました。ダウンサイジングターボというだけでなく、ビトルボの再来とでも言いたくなる、そんな一面が垣間見られたのはうれしい収穫だといえるでしょう。

日本の道路事情には大きすぎるのではないかと思うこのクルマだが、不思議と連れ出したくなる

「21世紀の今、このシンプルさに出会えた喜び」ルノー・トゥインゴZEN MT

トゥインゴに待望のMTモデルだ

乗る前からある程度「間違いないクルマ」である予感はしておりました。しかし、望外今時のクルマにしてはさっぱりとした印象だったもので、実際に乗ってみたところ、いい意味で拍子抜けするような、そんなうれしい驚きに満ちたクルマだと感じたのがこの1台です。

ヨーロッパの普通のアシ車ってこんな感じなんじゃないだろうかと感じるシンプルさ

コンパクトなボディにも、高めのフロアが与えられています。足を投げ出すような姿勢で走り出すと、なんとも優しい乗り味に、つい口元が緩むのがわかります。1000cc3気筒エンジンをリアに搭載。軽量なクルマが、かつてRRレイアウトを多く採用していたのがよくわかります。しっかりとリアで地面を蹴り上げる感じは、フロントドライブ車では味わえない感覚です。

軽いステアリングは、パワステがなかった時代から取り回しの良さに貢献していました。十分にトルクも発生し、きびきび走りますが、強烈にフロントに荷重がかかっているわけではありません。単にマニュアル車だから、という以上に、クルマを操る楽しさが詰まっているのです。

リアシートはあくまでも補助的なもの。後席のサイドウィンドウは昇降式ではなく、チルト式
高価なナビもいいけれど、すでに多くの人が自然に利用していて、持っているスマートフォンでいいじゃないか。今の時代なりに常識をそしゃくするルノー

ナビも専用のモニターなど設けず、スマホフォルダーを用意。この時代なりのシンプルなスタイル。昔からのやり方を踏襲して仕上げている、気取らないアシ車。こんなクルマを日本でも購入することができること自体が、喜びだといえるのではないでしょうか。

もちろん、より一般的な2ペダル車「EDC仕様」も設定。多くのトゥインゴが街にあふれる日が楽しみ、そんな気分になる1台でした。

決しておっくうでもなく、自在に走り回れる感じを一人でも多くの人に味わってほしいものだ

「欲張りすぎのちょうどよさ」レンジローバー・イヴォーク・コンバーティブルHSEダイナミック

4輪駆動車のブランド最高峰、レンジローバー。イヴォークは比較的コンパクトで、今までのレンジローバーとは一味違った、よりカジュアルで、アクティブなプレミアムカー。新たなファンにも支持される、新時代のレンジローバーと言えるでしょう。その中でも最近の話題は、このコンバーティブル、オープンボディではないでしょうか。

コンパクトなボディに燦然と掲げられる伝統のブランドロゴ

レンジローバーを世に送り出してきたランドローバーは、伝統と格式ある、英国王室御用達の4輪駆動ブランド。英国貴族たちのハンティングの相棒としても重宝されてきたクルマです。ラインナップには、早くからオープントップのモデルは存在しました。

しかし、乗降性や視認性、実用性を考えたモデルが主流。このイヴォークのコンバーティブルはそうしたモデルとは一線を画したもので、4輪駆動としてのみならず、オープンモデルとしてもかなり新鮮な提案になっているといえる1台です。

見た目にもコンパクトなボディは、実際4.4mに収まる全長。プレミアムカーではもはや珍しくない1.9mの全幅もあいまって、固まり感が強調されています。このサイズの中にゆったりとしたフル4シーターをパッケージ。オフロードモデルベースであるが故の高めのアイポイントから見る風景は、このクルマならでは。乗る人すべてにとって、特別な体験になる。そんな空間が広がります。

この開放感! ぜひ体験してほしい

いざ運転してみると、前述のサイズ感がやはり奏功。クルマ全体を掌握できるような印象の乗り味です。改めてスペック表を見返すと2トンを超えていたことにむしろ目を疑ってしまうほど、パフォーマンスも十分。

開閉は手元のボタンでワンタッチ。巧みに折りたたまれる幌は収まりもコンパクト

幌の開閉はワンタッチ。開閉ボタンを開けると、一旦サイドウィンドウが下された後、幌が高速でZ型に折りたたまれたのち、サイドウィンドウが再び上がった状態で完結します。この状態で走ると、少なくともドライバーにはほとんど風のわずらわしさは感じません。クローズドの状態ではその後席空間も含めた室内のスペースもゆったりとして、静粛性も高い仕上がり。

プレミアムカーとして「レンジローバーのオープンカー」というダブルネームの神通力もさることながら、「みんなで快適に乗れる」「4駆だ」「オープンもクローズドも快適」……欲張りすぎにも程がある。そんな印象のイヴォーク・コンバーティブルでした。

華やかでスポーティーで手ごろなサイズ。欲張りすぎな1台だ

書き始めると尽きませんね。数年前はとにかくスポーティーでハードに仕上がっているが、それが何を目指しているのかわからない「故なきスポーティー」なプレミアムカーであふれていたようなこともありました。しかし今年あたり試乗するクルマを見ていると、そのメーカー、車種が表現したいことに個性を感じることもしばしば。こうなってくると「輸入車は最も身近な異文化交流」輸入車選びの楽しみもより多様になるのではないでしょうか。

今回紹介しきれなかったクルマは、後日後編としてご紹介します。お楽しみに。

(中込健太郎+ノオト)

[ガズー編集部]

MORIZO on the Road