ディスカバリー4、最後の「四角い」ランドローバー【これに乗っておかないと!♯001】
デビューするクルマがあれば、その入れ代わりでひっそりと去っていくクルマあり。中には「これは今のうちに乗って記憶に焼き付けておかないと」と思えるモデルだって数多い。
多くのスポットライトが当たるニューモデルとは対照的に、あまり注目されることなく新車の舞台から去り行くクルマにあらためて焦点を当ててみようというのが、このコラム。題して「これに乗っておかないと!」。
新車ライターであるボクの独断と偏見で取り上げる記念すべき最初の1台は、すでに次期型が発表されて日本導入が秒読み段階となっている「ランドローバー・ディスカバリー」だ。
「無骨さ」も魅力だったディスカバリー4。通称「ディスコ4」
「もうこれで最後ですからね、四角くて背の高いランドローバーは。今のうちに楽しんでください!」。
ジャガー・ランドローバージャパンの広報スタッフからそんな声をかけられて、改めて試乗することにしたのが最終モデルとなったランドローバー・ディスカバリーの4代目、通称「ディスコ4」。
なぜ“四角いランドローバー”がこれで最後なのか? 実はすでにフルモデルチェンジを施した第5世代が本国で発表され、丸みを帯びたデザインとなっているからだ。SUV専門ブランドである英国のランドローバーは、これまで四角いデザインが特徴のひとつだったけど、気が付けばこのディスコ4が、背が高くてカクカクとしたデザインの最後のランドローバーとなってしまったのである。
それは言い換えれば「ランドローバーにとっても伝統的なクロスカントリーカースタイルの終焉」でもある。ちょっと大きな話になっちゃったけど…。
ここまで四角いボディが感じさせるものは何か? ボクは「絶大な信頼感」だと思う。もちろん丸みを帯びたボディに信頼感がないわけではなく、無骨な四角いボディには何とも言えない説得力を感じるのだ。人もまともに立てないほどの極悪路だって、しっかりと前へ前へと進んでいくような走破性の高さを感じるのはボクだけではないだろう。
堅物でいいじゃないか。オンロード重視のイマドキSUVとはオーラが違う
それにしてもすごい。何が?って、“硬派なオーラ”がだ。それは車内に乗り込む瞬間から始まっていて、高い床や着座位置、背筋をピンと伸ばすとしっくりくる運転ポジションは、オンロードを重視したイマドキのSUVとは一線を画する。「気軽に触るんじゃねぇよ」という雰囲気すらある。最近減ったよね、こういうクルマ。
運転席に乗り込めば、良好な視界と見晴らしの良さが待っている。ボンネットはしっかり端が見えるから車体感覚をつかみやすいし、サイドウインドウの下端部なんて身体に対して驚くほど低くて、窓から身を乗り出して直接タイヤが確認できる。このあたりはさすが老舗の本格オフローダーブランドが作るクルマだ。
一方でインテリアの上質な仕立ても誇らしい。現代では、SUVであってもドレスを着た女性がパーティに乗りつける映画のワンシーンのようなシチュエーションが絵になるクルマではなくては、と思う。その点、ダイヤルのデザインなどで無骨さを残しつつ、ウッドやレザーといった素材を使って上質に仕立てたディスカバリーの内装のセンスは、絶妙だ。もちろんスーツ姿の男性だって似合う。
道なき道を走破するアドベンチャーラリー「キャメルトロフィー」をやっていたり、ホンダから「クロスロード」という名前で売られたりした1990年代のディスカバリーとはまったく違う高級感だ。「砂漠のロールスロイス」とまではいかなくても、「砂漠のジャガー」上級モデルくらいのプレミアム感があった。それから改めて感じたのは室内の広さ。車体が四角ければ箱のように四隅まで空間を使えるので、同じ全長や全幅でも有効空間が広いのだ。3列目のサンルーフもオシャレだね。
実を言うと、「ディスカバリー4」は「ディスカバリー3」の大幅アップデート版。だから車体の基本設計は古く、俊敏な動きをする背の低いSUVとくらべると挙動に“緩さ”があるけれど、それはそれで悪くなく、路面の凹凸をしっかり“いなして”くれる感じが心地いい。細かいことは考えず、「すべて任せちゃうからよろしくね!」という気分になってくる。
エンジンは、スーパーチャージャーつきの3.0L V6エンジンで、最高出力/最大トルクはそれぞれ340ps/450Nmもあるから、車重が2.5トン超えているとはいえ、ひとたび踏み込めばそれなりに速い。しかもジャガーのスポーツカーに搭載されるのと同じエンジンだけあって、レスポンスも素早く軽快で気持ちいい。
「オフローダーらしい重厚な挙動を持つ車体にチョー気持ちいいエンジン」という組み合わせはおそらく新型にはないだろうから、この味を楽しめるのもディスコ4までってことになる。このまま消えてしまうのはなんとも惜しい存在ではないか!
ディスコ4は映画「007」で敵のクルマ役が似合った
ところでディスカバリーといえば、近年のスパイ映画「007」シリーズで敵対組織が乗るクルマとしてよく使われていた。ヒロインをさらっていくときとかにね。室内が広くて車体が丈夫でパワーもあって、ときには過激なカーチェイスも繰り広げるけど派手すぎてはいけない。そんな役どころに、装甲車のように四角くてゴツいディスカバリー4が適役だったのだろう。果たして007シリーズの次回作には、新型ディスカバリーが登場するのだろうか?
(工藤貴宏+ノオト)
[ガズー編集部]
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