モータースポーツ用Aライセンスとは?【取得体験レポ】

個人的な話で恐縮ですが、先だってAライセンス講習会に参加してきました。15年ほど前にはJAF戦も楽しんでいましたが、ここ7~8年はすっかりサーキットから足が遠のき、気がつけば、うっかりと更新を忘れて失効させてしまいました。そこで、再び、取り直そうと講習会に参加したわけです。

そこで、今回はAライセンスのことを説明したいと思います。Aライセンスとは、モータースポーツの公式戦に参戦するための許可証。いわばモータースポーツ用の免許証です。ポイントは“公式戦”という部分でしょう。

実は世界のモータースポーツのほとんどは、オリンピックのIOCやサッカーのFIFAのようにひとつの組織が統括しています。それがFIA(Federation Internationale de l’Automobile=国際自動車連盟)です。そこに、世界のそれぞれの国を代表する自動車のクラブが参加して世界的なモータースポーツの組織となっています。日本の場合、JAF(Japan Automobile Federation=日本自動車連盟)が参加クラブです。JAFは故障のときに駆け付けるだけでなく、日本のモータースポーツを統括する仕事もしているのです。

そのため、日本での公式戦のことを「JAF戦」と呼ぶことも。そしてJAF戦に参加するためには、JAFの発効する許可証(ライセンス)が必要となります。そのひとつがAライセンスです。逆に、JAFと関係ない主催者のイベント(草レースとも呼ぶ)にはJAFのライセンスは必要ありません。 本格的なモータースポーツに参加してプロを目指そうというなら、頂点にF1を擁する公式戦を避けて通るわけにはいきません。また、アマチュアにも公式戦への参加はモータースポーツを楽しむ選択肢の大きなひとつ。なんといっても制度が整っていますし、イベントも数多く存在します。世界的なルールであり、安全面もしっかりしているのも魅力的な部分です。

モータースポーツの公式戦に出るために必要なJAFのライセンスは、通常の運転免許証も必要だ
モータースポーツの公式戦に出るために必要なJAFのライセンスは、通常の運転免許証も必要だ

レースとスピード競技は違うって知ってましたか?

JAFのライセンスは1種類ではありません。ドライバーライセンスとしては基本的な6種があります。国内Bから始まり、国内A、国際R、国際C、国際B、国際Aとグレードが高くなります。実績を積み上げることでグレードの高い許可証が得られる仕組みになっています。ただし、日本国内でモータースポーツを趣味で楽しむ範囲であれば、「JAF公認の国内競技のすべてに参加可能」な国内Aがあれば十分でしょう。

ちなみに国内Bとは、「レースを除くもの」で、タイムを競うスピード競技用のライセンスです。具体的にはジムカーナやラリー、ダートラなどのこと。これに参加するのは国内BでOKです。しかし、順位を競うレースには国内Aが必要です。バトルなど他の参加車両と競うレースは、より厳密なルールやマナーが求められるため、ひとつグレードの高い免許になっているということですね。

また、モータースポーツは走るだけでなく、オフィシャルとして参加するという選択肢もあります。その人たちに向けたオフィシャルライセンスもJAFは用意しています。「レースはお金がかかるから無理」と思う方は、いっそオフィシャル側で参加するのは、いかがでしょうか。

実際に国内Aライセンスを取得するには

では、JAFの国内Aランセンスを取得するのは、具体的に、どうすればよいのでしょうか。それには順番があります。1に、大前提として自動車免許を持っていること。免許停止になるとJAFのライセンスも使えなくなるので要注意。続いて2は、JAFの会員になること。そして3、国内Bライセンスを取得すること。これはJAFに登録するクラブが開催する講習会に参加するだけでOKです。開催日はJAFのHP内に掲載されています。費用は1万円弱といったところでしょう。4、そして実績を積む。国内Bライセンスで参加できるイベントに最低1回は完走することが求められます。最後に5、国内Aライセンスの講習会に参加する。講習会は、講義/筆記試験/走行試験が含まれます。ちなみに、JAFの公認サーキットで50分以上の走行と、その証明書があれば、3の国内Bライセンスと4のイベント参加は免除されます。

今回の個人的な状況をいえば、国内Bライセンスを数年前に取り直していたので、今回は4のイベント参加と5の講習会を同日に受けることになりました。主催チームは筑波サーキットなどで講習会や走行会を数多く主催するクレバーレーシングです。イベントは筑波サーキットの本コースでのタイムアタック大会。そこで、しっかりとタイムを残せば完走となり、無事に「国内Bのイベントで1回完走」をクリアすることができます。そして、同時に行われる講習会と、最後の筆記&走行試験に合格すれば、晴れて国内Aライセンス取得となるのです。

国内Aライセンス講習の内容は、速さの追求ではなくルール!

では、実際の講習会の1日を追ってみましょう。

朝は筑波サーキット内のサロンに8時15分集合。午後に行われるサーキット走行(タイムアタック競技会&走行試験)のために、愛車の準備を行います。サーキットを走るとはいえ、クルマは何でもかまいません。スポーツカーじゃなくても、もちろんOK。ただし、荷物はすべて下ろします。フロアマットも、ペダル類にひっかかる可能性があるので、下ろします。そして、ゼッケンを貼って、安全のためのテーピングを行います。ブレーキとクラッチのフルードのフタが外れないようにテープでしっかり固定。バッテリーの端子も外れないようにテープで固定。ホイールキャップのあるクルマはキャップを外しておきます。それをクラブのスタッフに確認してもらって、走行準備は終わり。あっという間で難しいものはなにもありません。

国内Bライセンスで参加できるタイムアタック競技会に参加するために、朝イチで車両の準備を行う
国内Bライセンスで参加できるタイムアタック競技会に参加するために、朝イチで車両の準備を行う

講義では教科書を元にルールが説明されます。JAFのライセンスはどういうものなのか。レースのエントリーや本番で守るべきこととは。レース中に表示される旗の意味。ヘルメットやレーシングスーツの決まりも事細かく説明されます。コース内での事故は、どんな状況でも自分の責任になり、他の人に責任を求めることはできないという説明もありました。モータースポーツならではのルールですね。また、おもしろいのは「速く走る」「上手に走る」ことは、ひとつも含まれていません。安全に公平に、モータースポーツを行うために知っておかなければいけないルールを説明する講義でした。また、15年ほど前に聞いた同じAライセンス講習会を思い出すと、ルールがより詳細に厳密になっていました。ルールは年々ブラッシュアップされていることを実感します。

講義は筑波サーキットの敷地内にあるホールの一室を使用。主にモータースポーツのルールが伝えられる
講義は筑波サーキットの敷地内にあるホールの一室を使用。主にモータースポーツのルールが伝えられる

講義は4時間ほど続きます。けっこう覚えることがいっぱいという印象でした。

競技会と実技走行試験はタイムの速い遅いではなく、ルール通りに走れるかが重要となる
競技会と実技走行試験はタイムの速い遅いではなく、ルール通りに走れるかが重要となる

タイムアタック競技会と走行試験は筑波の本コースで実施されます。ちなみにレーシングスーツは必要ありません。長袖長ズボン&スニーカーでOKです。レンタル品も用意されていましたよ。コースインした後、2周ほど先導車に続いてゆっくりとコースを走り、その後はタイムアタックの競技会に該当する自由走行。ここでタイムが計測されて順位が決まります。大切なのは完走して、タイムを残すこと。別に速くある必要はありません。もちろん上位の人は表彰されますけれど、クルマの性能の差もありますので、あまり頑張る必要はないかと。15分ほどの走行時間で6~8周を周回。僕は、マツダの古いロードスターであり、エコタイヤ&ノーマルブレーキパッドという、やる気のない仕様なので、無理をせずにクルージング。13台の参戦中、7位という、みごと中庸な成績で無事に完走しました。

そして2回目の走行は夕方から実施。今度はAライセンス用の走行試験です。見られているのは、ルール通りに走れているのかという点。クラッシュやスピンは技量不足となります。つまり、無難に走り切れば合格です。ここも無理せずに、流して終了。筑波の本コースを走るのは半年ぶりということで、ゆったり走っても十分に楽しめました。

そして、最後にホールにもどって、最後の確認の試験。30分で30問を○と×で答えますが、教材を見ていいということもあり非常に簡単。僕も含めて15人中8人が満点。もちろん全員が合格しました。

朝から夕方まで時間はかかりましたが、終わってみれば、あっと言う間の1日です。講義でウトウトする参加者もいませんし、筑波本コースでの実走行は緊張しつつも充実した様子。モータースポーツの入口の挑戦となるAライセンス取得を、私同様にみなさんも楽しんだようですね。

ライセンスを取得するために参加した車両は、コンパクトカーやSUV、ミニバンなども混じっていた
ライセンスを取得するために参加した車両は、コンパクトカーやSUV、ミニバンなども混じっていた

(鈴木ケンイチ+ノオト/撮影:鈴木ケンイチ・クレバーレーシング)

[ガズー編集部]

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