クルマで「ハイレゾ音源」を楽しむメリットと方法

毎日の通勤や週末のドライブ、そして長期休みのときの帰省など、長時間にわたってクルマに乗るとき、車内エンタメは重要だ。助手席や後部座席なら映像コンテンツも楽しめるかも知れないが、運転手にとって車内エンタメはサウンドコンテンツがすべてとなる。

ラジオも選択肢だが、やはり好みの楽曲を楽しむことが多いだろう。少し前までは、音楽CDが一般的だったが、最近ではHDDや内蔵メモリにデジタル音楽を保存できるカーナビが増えている。

今回紹介するのは、音楽をさらに高音質で聴ける「ハイレゾ」に対応するカーナビだ。

人の「可聴帯域」を超えた高音質な音を再生

そもそも「ハイレゾ」とは、「High Resolution」の略。より緻密にデジタル化した音源のことだ。一般的な音楽CDは、アナログの音楽を44.1kHz/16bitで圧縮している。これは音を毎秒4万4100回に分け、16段階で記録しているということだ。

それに対してハイレゾは96.0kHz/24bitや192kHz/24bitでデジタル化している。96.0kHzでは、CD音源の約2倍、192kHzでは約4倍の情報量を記録しているのだ。さらにそれぞれの音も24段階に増えており、より原音に忠実で緻密な音が再生できる。

この情報量を活かして、ハイレゾでは音楽CDには含まれない20kHz以上の高音の再生に対応している。本来、この音域は人の耳には聴き取れない周波数だといわれているが、実際にハイレゾ対応スピーカーで聴き比べてみると、その差はわかるという。

しかし、実際に道路を走っているクルマの中には、路面からのロードノイズを含めたさまざまなノイズがある。その状態でハイレゾに対応する意味はあるのだろうか? 筆者も最初はその疑問を持っていた。しかし今回、知人のクルマで実際にハイレゾ音源を聴いてみて、その違いを体感できた。

時速40km以下で一般道を走っているシチュエーションで、複数回にわたっていくつか曲を聴いてみたが、ハイレゾでは明らかに音の響きや明瞭さが違うと感じられた。また、MP3などの圧縮音楽では聴き取れないような微妙な音もしっかりと聴き取れた。クルマの中でも高音質で音楽を楽しみたいと考えるなら、ハイレゾ対応は有効な手段といえるだろう。

車内ハイレゾ対応のために必要なこと

では、クルマの中でハイレゾを楽しむためには、何が必要なのだろうか? まずはハイレゾ音源に対応するプレーヤーを用意することだ。

ひとつは、ハイレゾに対応したポータブルプレイヤーなどを利用する方法である。ポータブルプレイヤーからの出力をカーオーディオの外部入力に接続するとサウンドは出力できるが、この場合、カーオーディオがボトルネックとなり、ハイレゾ品質で出力できない可能性が高い。

ハイレゾサウンドを試聴した友人のクルマには三菱電機のDIATONE SOUND. NAVIが装備されていた
ハイレゾサウンドを試聴した友人のクルマには三菱電機のDIATONE SOUND. NAVIが装備されていた

もうひとつは、ハイレゾに対応したカーナビだ。USBメモリやSDカードにハイレゾ音源を保存しておくことで再生ができる。現在、ハイレゾに対応したカーナビは、パナソニックの「Strada」シリーズや三菱電機の「DIATONE SOUND. NAVI」シリーズ、ケンウッドの「彩速ナビ」などが選択肢となる。多くの場合、シリーズ上位モデルがハイレゾ対応だ。

ただし、中には再生できるハイレゾの音質上限が96kHz/24bitまでと低いモデルもあるので注意したい。現在一般的に流通している、192kHz/16bitのハイレゾ音源に対応しているナビを選ぶのがポイントだ。

ハイレゾ対応のナビを選んだら、次はスピーカーだ。純正スピーカーはハイレゾ音源を再生することを想定していないため、ハイレゾ対応ナビを取り付けても、そのポテンシャルを発揮することはできない。ハイレゾを楽しみたいなら、ハイレゾ音域の再生に対応するスピーカーを取り付けるのがおすすめだ。

高音の再現性を高めるためにツィーター付きのスピーカーに変更。ハイレゾでは重低音のウーファーより、高音が重要だ
高音の再現性を高めるためにツィーター付きのスピーカーに変更。ハイレゾでは重低音のウーファーより、高音が重要だ

ハイレゾ対応で効果が大きかったと知人が語るのが「デッドニング」だ。これは、ドアの内側に制振材を貼る作業のこと。現在のクルマの多くは燃費を重視するため、ドア素材が非常に軽くなっており、それがロードノイズやスピーカーの振動によって揺れる「ビビリ音」を発生させることがある。またサービスホール(軽量化のためのドアの穴)を塞いで、静音性を高めることも重要だ。

ドアトリムをはがして穴を塞ぎ、制振材を貼るデッドニングにより、ビビリ音が減って静音性が高められる
ドアトリムをはがして穴を塞ぎ、制振材を貼るデッドニングにより、ビビリ音が減って静音性が高められる

このようにドアをデッドニングして制振・防音化することで、より高音質な音楽が楽しめるようになるというわけ。このあたりは、DIYでやる方法もあるが、自信がない場合はスピーカー交換とともにプロに任せるといいだろう。

予算が限られる場合、スピーカーを交換するかデッドニングするかどちらかを選ぶことになる。このあたりは車種によって判断は変わる。ただし、ハイレゾ対応の場合は再生帯域を広げる必要があるため、基本的にはスピーカー交換を優先したい。

高音質スピーカーの搭載とデッドニングにより、車内ハイレゾ環境は完成だ。高音の伸びのよい、クリアなサウンドが車内で楽しめるようになる。クルマの中で音楽を聴く時間が長いなら、ハイレゾ対応を考えてみてはいかがだろうか。

(コヤマタカヒロ+ノオト)

[ガズー編集部]