同じ場所を何度も工事する理由とは? 道路工事の裏事情と舗装技術
普段なにげなく走っている道路ですが、舗装技術が年々進化しているのをご存知でしょうか? 今回は水はねを少なくする技術やヒートアイランド対策など、最新の舗装技術について「一般社団法人 日本道路建設業協会」 広報・技術部の方にお話をうかがいました。
――道路舗装にはどのような種類があるのでしょうか?
車道はアスファルト舗装、コンクリート舗装、ブロック舗装の3つに分けられます。そのうち約95%がアスファルト舗装、残りがコンクリート舗装です。ブロック舗装は一部観光地などで使われている程度です。
- インターロッキングブロック舗装
――アスファルト舗装とコンクリート舗装は、どう使い分けされているのですか?
コンクリート舗装は固いので耐久性はあるのですが、施工するのに日数がかかります。一方、アスファルトは柔らかいので穴が開いたりひび割れが起きたりしますが、修復は比較的簡単です。維持・修繕がしやすいという理由により、一般道ではアスファルトが主流となっています。
――コスト面ではアスファルトの方が安いのですか?
初期費用はコンクリートのほうが高いのですが、頑丈なので維持管理費用は安くすみます。一方アスファルトは、初期費用は安いのですがメンテナンス費用が多くかかります。
30~50年でみれば、トータル的にはコンクリート舗装のほうが少し安いくらいかもしれません。ただ道路は拡張や改良するケースも多いですよね。崩して再度舗装することを考えるとアスファルトにもメリットがあります。
――コンクリート舗装はどのような場所で使われているのでしょうか?
飛行場やバイパス、トンネルの中などで多く施工されています。なぜトンネル内でコンクリート舗装が多いかというと、もし内部で破損が起きた場合、工事するには通行止めにしてクルマを迂回させる必要が出てきますよね。都心部なら迂回も簡単ですが、地方のトンネルではそう簡単に通行止めできない。その他、「アスファルトだと暗くなってしまう」「熱に強い」などの理由で、トンネル内ではコンクリート舗装が多くなっています。
――戦前にもアスファルト舗装があったと聞きましたが?
アスファルト舗装は意外と歴史が古く、明治時代からありました。明治11年(1878年)、神田・昌平橋のアスファルト舗装工事が日本初と言われています。ただし材料は今ほど高級なものではなく、作業も人力で行っていました。
- 昭和初期の舗装工事の様子(出典:東亜道路工業株式会社)
――ひび割れなど、道路の点検はどのように行っているのでしょうか?
道路の検査は「路面性状測定車」を使用します。レーザーで形状を測定し、写真でひび割れ等の状況を把握します。道路を管理している各自治体が、民間の検査・測定業者に依頼するパターンが多いですね。
- 路面性状測定車(出典:ニチレキ株式会社)
――「同じ場所を何度も工事している」、「年度末に道路工事が多い」とよく言われますが、実際のところはどうなんでしょう?
道路工事には水道会社、ガス会社、電力会社などが個別で行っているものがあります。同じ箇所で何度も作業している場合もありますが、管理・施工している会社が違うのです。いちばん最後に、クルマや人が安全に通行できるように舗装業者が整備します。その事情を知らない住民から、舗装業者に対して「いつまでやってるんだ」と文句がくるわけです。道路屋としてはせっかくきれいにしているのに、割に合わないですよね(苦笑)。
年度末に工事が多い件についてですが、自治体としては年度の後半に何が起きるかわからない(例えば事故や震災など)ので、ある程度予算をプールしておきたいという事情もあるのではないでしょうか。協会としては年間通して工事をしたい、平準化してほしいと要望しています。
- 道路の下にある共同溝 (日本道路建設業協会DVD「みんなの道」より抜粋)
――昔に比べるとクルマの水はねが減ったように感じますが、どのように進化しているのでしょうか?
それは「排水性舗装」や「透水性舗装」と呼ばれている技術ですね。「排水性舗装」は、すき間の多いアスファルト材料を用いて、雨水を路肩や路側に排水する技術です。舗装を通した後、排水溝へ流していくわけです。
「透水性舗装」は舗装を通して雨水を地下へ浸透させていきます。下水、河川への雨水流出を抑制し、ゲリラ豪雨による都市型洪水の低減にもつながります。
- 一般舗装と排水性舗装の比較 (日本道路建設業協会DVD「みんなの道」より抜粋)
- 透水性舗装 (日本道路建設業協会DVD「みんなの道」より抜粋)
――ヒートアイランド対策の舗装というものがあるそうですね。どういった舗装なのでしょうか?
真夏の暑い時期は、アスファルトの表面が50~60℃に達します。その対策として「保水性舗装」と「遮熱性舗装」があります。
「保水性舗装」は舗装内に水分を保持することで、路面の温度や周囲の気温を下げる効果があります。一般のアスファルト舗装に比べて夏季の日中で10~20℃程度低下します。「遮熱性舗装」は太陽光の近赤外線を跳ね返して温度上昇を抑制する舗装です。こちらも日中の路面温度を10℃以上低減できます。
2020年の東京オリンピックに向けて、これらの舗装をマラソンコースに適用することが検討されています。
- 保水性舗装
- 遮熱性舗装
――最近、「電線を地中に埋める工事を推進する」というニュースも見ました。
「無電柱化」ですね。もし地震や災害が起きると、電柱が倒れて緊急物資の輸送や避難路の確保ができなくなってしまう危険性があります。無電柱化の割合は、東京では約7%、大阪で約5%と低いんです。一方ロンドン、パリでは100%無電柱化となっています。まだまだ日本は遅れていますね。
- (左)風景を台無しにする電柱、(右)災害時の救援活動を妨げる電柱 (いずれも国土交通省HP「無電柱化の推進」より抜粋)
「道路のインフラ整備は、経済の発展になくてはならないものです。目先の1~2年の経済効果ではなく、40~50年使用可能なインフラ整備の先を見据えて考えないといけない」と話す広報・技術部の担当者さん。道路工事にイライラしてしまうドライバーも多いと思いますが、安全・快適に走ることができるのも舗装のおかげ。それを忘れてはいけませんね。
(村中貴士+ノオト)
[ガズー編集部]
取材協力
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