国によって変わる? 燃費の表示や測り方

エコカー華やかなりし昨今、燃費に注目している人は多いだろう。エコカーの代名詞にもなっているトヨタ・プリウスの燃費は、40.8km/L。これは1リットルのガソリンで40.8km走行できることを意味する。しかしこれは、あくまでも日本での話。燃費計算の方法や燃費の表し方は、国や地域によって法律で定められており、同じ車種であっても他の国では違う燃費性能が、違う単位で示されている。今回は、各国の燃費計測方法や燃費の表示方法について紹介しよう。

なお、世界各国で燃費計測方法を統一しようという動きがあり、日本も含めた多くの国がWLTPと呼ばれる新方式の採用を決めている。日本では2018年10月から採用される予定になっているが、当面はJC08モードとの併記となる模様だ。そのような動きもあるので、ここで紹介する各国の燃費計測方法は執筆時点(2016年2月)での情報であることに留意してほしい。

日本の燃費計測方法と表示方法

日本ではJC08モードと呼ばれる方式で燃費を計測している。2011年4月1日以降に型式認定を受けた車種に適用されており、それまで使われていた10・15モードからより、実際の走行シーンに近い燃費を計測すべく採用された。
計測時の走行距離は8.172km、平均速度は24.4km/hで最高速度は81.6km/h。市街地走行から郊外までを想定しており、計測はエンジンが温まっている状態のホットスタートと冷えた状態から走行するコールドスタートで行なわれ、75:25の割合で合算した数値がJC08モード燃費となる。
燃費表示の単位はkm/Lで、1リットルで走行可能な距離として示される。
例:25km/L(1リットル当たり25km走行可能)

アメリカの燃費計測方法と表示方法

アメリカでは複数の燃費表示が行なわれている。州ごとに排出ガス規制が異なることや、自動車メーカーごとに排ガス規制を行なっており、車種ごとではなく企業全体の燃費性能にも注目しているためだ。車種ごとの燃費を計測する方法としてはEPA(環境保護庁)が提唱している測定方法に則った表示が一般的だ。

測定方法としては、市街地を想定したEPA city cycleと郊外を想定したEPA highway cycleがある。前者の走行距離は7.45マイル(約11.99km)、平均速度は19.59mph(約31.53km/h)、最高速度は56.7mph(約91.25km/h)。後者の走行距離は10.26マイル(約16.51km)で平均速度は48.3mph(約77.73km/h)、最高速度は59.9mph(約96.4km/h)となっている。
燃費表示の単位はMPGで、1ガロン(約3.78L)で走行できる距離をマイルで示している。
例:58MPG(1ガロン当たり58マイル=1リットル当たり24.66km走行可能)

ヨーロッパでの燃費計測方法と表示方法

EU各国ではNEDC(New European Driving Cycle)と呼ばれる計測方法を採用している。こちらも市街地と郊外を想定して走行パターンが分けられており、市街地を想定したUrban driving cycleでは約3976.1mを走行し、平均速度は18.35km/h、最高速度は50km/h。郊外を想定したExtra-urban driving cycleでは走行距離が6.956km、平均速度は62.6km/h、最高速度は120km/hに設定されている。

燃費表示の単位はL/100kmと、100km走行するために必要な燃料の量で表される場合が多い。ただし、国やメーカーにより多少の違いはあるようだ。
例:4L/100km(100km走行するために必要な燃料は4リットル=1リットル当たり25km走行可能)

イギリスでの燃費計測方法と表示方法

EUからの脱退を表明したり、通貨の単位にユーロを採用しなかったりと、ヨーロッパの中でも独自路線を進むことの多いイギリス。燃費表示においてもL/100kmだけではなくアメリカに準じてMPG表示を使うこともあるようだ。実際、トヨタのイギリス向けサイトでは燃費がMPGで示されている。

今後採用が広まる燃費の世界統一基準WLTP

最後に、2018年から日本でも採用される国際基準、WLTPについても紹介しておこう。WLTP(World harmonized Light vehicles Test Procedure)は、各国の燃費計測方法による差をなくす国際的な試験方法を定めるもの。国連が主導し、世界各国の実際の運転状況を調査したうえで、標準的な走行パターンが作成された。自動車メーカーは輸出先ごとに個別に燃費を計測しなおす必要がなくなる。自国の計測方法に特化したプログラム調整などもできなくなるので、ユーザーはメーカーの国による差を考慮することなく、平等な計測結果で燃費を比較できるようになる予定だ。

統一基準とはいえ、すべての車種で同じ計測方法を採用するわけではなく、最高速度や出力と重量の比などによってクラス1、クラス2、クラス3a、クラス3bの4つに分けられている。日本ではほとんどの車種がクラス3aもしくはクラス3bに該当する。

クラス3aを例に見てみると、計測時の走行距離は15.4km、平均時速は36.39km/hで最高速度は97.4km/hとなっている。実際にはWLTPのクラス3aでは120km/hを最高速としているが、日本では公道の最高速度自体が100km/hなので、120km/hでの試験は行わないというのが国土交通省の見解だ。

国土交通省がすでに発売されている車種で試験的に計測したところ、JC08モードに比べるとやや低めの数値が出る傾向にあるようだ。世界的に統一されるのは喜ばしいことだが、2011年に変わった燃費計測方法が2018年にまた変わるというのはやや慌ただしい気もする。

(重森大+ノオト)

[ガズー編集部]