どんな人が利用? ピンククラウン霊柩車がある葬儀社に聞いてみた
霊柩車といえば黒色が一般的なイメージでしょう。そんな中、ピンク色の霊柩車があるのをご存知でしょうか? 今回はそんな珍しい霊柩車を所有、運行している2つの葬儀社さんにお話を聞いてみました。取材にご協力いただいたのは、鹿児島県の「大和葬儀社 株式会社」さんと、佐賀県の「株式会社 唐津公善社」さんです。
大和葬儀社 株式会社(鹿児島県)
――ピンク色の霊柩車を導入するきっかけ、経緯について教えてください。
「葬儀業界は今後どうあるべきか?」というテーマに取り組んでいたとき、霊柩車販売会社から紫色とピンク色の霊柩車の提案がありました。弊社のエリアはまだまだ古くからの風習が根強く、地域によって様々な葬儀形態があります。これからの時代、葬儀を選ぶ年齢層が若年層になるとの見方と、新たな葬祭業として何かインパクトのあるものを取り入れたい思いがあり、導入することになりました。平成26年6月から稼働しています。
――車体はピンククラウンをベースにしているのでしょうか?
現行型のクラウンロイヤルを改造しております。
- ピンククラウン霊柩車「桜」
――利用する場合、普通の霊柩車よりも高い金額なのでしょうか?
弊社では一律の金額にしています。特別な料金は必要ありません。
――どんな人が、どういった理由で利用するのでしょうか?
やはり故人の方が女性のケースが多いですね。明るい人だった、好きな色がピンクだった、おばあちゃんらしい色だから、といった声をよく聞きます。お孫様からのご要望も多いようです。
派手好きだった故人(男性)がピンクの霊柩車でご出棺されたこともありますよ。
――稼働率はどれくらいですか?
紫色はかなり多いです。ピンクは月に2件ほどで、まだまだ抵抗があるようですね。
- 紫色の霊柩車「紫雲」
- 内装も豪華
株式会社 唐津公善社(佐賀県)
――導入するきっかけ、経緯について教えてください。
地元商工会のお花見の席で、ある女性の会員様から提案がありました。「霊柩車って、なんで黒しかないのかしら。自分の時は赤かピンクで送ってほしいので、ピンクの霊柩車を作ってくださいね」というご意見が弊社の社長に寄せられたんです。お花見から生まれた話ですので、そのエピソードから“さくら”と命名しました。平成26年1月1日より運行しています。
――ピンククラウンをベースにしているのでしょうか? また改造、改装はどのように?
トヨタのピンク色は特殊で塗料が手に入らないので、ピンククラウンを霊柩車にすると改造部分だけ色調に差が出てしまいます。そのため白色のロイヤルクラウンを改造し、独自にピンクの塗料で塗りました。費用は本体+改造費の総計で約1,200万円です。
――利用料金は?
普通車の霊柩車料金は10キロまで16,700円、ピンクの場合は10キロまで21,700円で運行しています。それほど高い料金ではありません。
――やはり利用者は女性が多いのでしょうか?
最初の出番は、意外にも86歳で亡くなられたおじいちゃんでした。お孫さんの「賑やかに送ってあげたい」との思いからでしたね。全体としては女性のご利用が多いです。「ピンク色が好きだったから」「あでやかに送ってあげたい」という理由のほかに、大往生の方やクルマ好きの男性の方もよくご利用されます。「ピンクの霊柩車に乗せてあげたい」と弊社指名でご依頼いただいたお客様もいらっしゃいますよ。
――稼働率はどれくらいですか?
だいたい月に3~4件、1年で40件程度の利用があります。
――印象に残っているエピソード、利用者の声などありましたらお聞かせください。
お見送りの際、外で待たれる皆様の前にピンク色の霊柩車がありましたので、当初は賛否両論の声が聞こえていました。今では3年目となり、会葬者の方も慣れてこられたようです。 小さな唐津の町ですけれども、初めてのピンク霊柩車ということでたくさんの報道の方が取材においでくださいました。
一般的には葬儀=暗いイメージですが、輪廻転生という故人の新たな旅立ちに際し、明るく、そして送る人の「有り難うの心」を一つにして霊柩車に載せてあげたい。そんな思いでご遺族の方にご提案しています。
- お花見の席から生まれたため、“さくら”と命名
ピンク=派手なイメージを思い浮かべますが、「散りゆく桜の色」と考えれば意外と葬儀に合うのかもしれません。ピンクの霊柩車にも「送る人の気持ち」が込められているのだな……故人に対するそれぞれの思いを感じさせてくれる取材でした。
(村中貴士+ノオト)
取材協力
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