自転車とのトラブル、ドライバーが気をつけることは?

近年では、健康やエコを考えて自転車で移動する人が増えています。そこで問題視されているのが、クルマと自転車のトラブル。そこで、私たちドライバーは自転車とどう向き合えばいいのかを、JAF東京支部 事業課交通環境係の高木孝さんにお伺いしました。

自転車とのトラブルを避けるために、ドライバーが気をつけたいことは?

ときとしてクルマよりも速いスピードで走っていることがある自転車。私たちドライバーは、車道を走る自転車に対して気を付けておきたいことは何でしょうか?

「自転車は、原則として車道の左端を走らなければいけませんので、ドライバーは左折時の巻き込みや、後ろから直進してくる自転車との衝突に気をつけましょう。特に、信号待ちからの発進時には、自転車の挙動に注意が必要ですね。また自転車は、バス専用道路も特に規制がない限りは走行できますし、左折専用レーンからの直進も可能です。ですから、左折専用レーンを走っている自転車が必ず左折するというわけではありません。ドライバーも自転車の走行ルールを覚えておくことが、トラブルを回避する第一歩です」

バス専用レーンも走行できるとは知りませんでした。ちなみにクルマと自転車で一番多いのは、どんなトラブルなのでしょうか?

「出会い頭の事故です。このトラブルは、優先ではない側がしっかり一時停止をしていれば、ほとんどの場合、回避できると考えられます。自転車といえども、交通規則は遵守する必要があるわけです。こうしたトラブルを回避するためには、たとえドライバーが優先道路を走っていたとしても、『自転車が飛び出してくるかもしれない』と速度を落として走る『予測運転』が必要ですね」

自動車免許を持っていて交通標識の知識があっても、自転車を利用するときには「クルマの標識」として軽視してしまいがち。自転車も車両であるという意識が大切ですね。クルマと自転車にまつわるトラブルは、ほかにもこんなものも。

「横断歩道の横に自転車が横断するときの動線を示した『自転車横断帯』を見かけることがあります。クルマと一緒に停止した自転車が青信号になって発進すると、直進のために自転車専用レーンへ移動します。このとき、ドライバーは『自転車は左折する』と思ってしまいがち。すると、直進してきた自転車と左折するクルマが衝突してしまうというケースがあります」

こうした左折巻き込み事故を避けるために、自転車横断帯は2011年10月に出た警察庁の通達により、順次撤廃しているそうです。

自転車のマナーが悪いばかりではない

信号で停止しているクルマの間を縫って走行したり、信号を無視して走ったりしている自転車をよく見かけます。クルマには死角が存在しますから、こうした予測のできない走行にはヒヤヒヤさせられますよね。さらに、最近の自転車は性能が良くなっていますから、スピードもかなりのもの。「最近の自転車はマナーが悪い!」と憤るドライバーの意見もよく聞きますが、実は、一方的に自転車を悪者にすれば済む話ではありません。

「自転車への取り締まりが強化されたものの、まだまだ交通マナーが悪い自転車もいます。ですが、自転車だけが悪いかというと、そうではありません。たとえば、青や白のラインで表示される自転車ナビマーク。このマーク上にクルマが駐車していると、自転車は停車しているクルマを避けるために、一時的に右側へ膨らまなければなりません。これを急な飛び出しとして危険視するドライバーもいますが、そもそもそのような行為をさせる原因は、停まっているクルマにあるわけです」

自転車ナビライン上に駐車しているクルマが1台だけなら、ドライバーも自転車が車道の右側へはみ出ることを予測できますが、駐車車両が何台も続くと、ドライバーは自転車の存在に気づきにくくなり、駐車車両の間から自転車が突然飛び出してくることになります。ここはお互いが気を付けて運転することが大切ですね。

もしも、自転車とトラブルを起こしてしまったら?

ではもし、自転車とトラブルを起こしてしまったらどうすればいいのでしょうか?

「自転車と接触しただけでも、れっきとした交通事故です。ドライバーは警察へ届け出をする義務が発生します。こうした物損事故は、クルマにもダメージがありますから、ドライバーが被害者になるケースもあります。場合によっては、自転車への損害賠償請求が可能です」

自転車はクルマに比べてスリムなので、「これくらいの道幅なら通れる」と過信してしまいがちです。無理にクルマの横を通り抜けようとするのは事故のもと。自転車に乗るときには、余裕を持った運転をするように心がけたいですね。

これからのドライバーに求められること

自転車とクルマの両方が気持ちよく運転するために、今後、ドライバーに求められるのはどんなことでしょうか?

「クルマを運転していると、どうしてもクルマ中心の考え方になってしまいがちですが、道路は公共の場所であって、みんなで共有していくもの。これから自転車の利用者はもっと増えていくと思います。自転車の利用者もクルマのドライバーも、みんなで共存していくために大切なことは、相手の立場になって考える気持ちだと思います」

自転車でもクルマでも「乗り物」を利用すると、目的地に一刻でも早く着きたくなってしまい、急ぐ気持ちが先走ってしまいがち。これを押さえて、ゆったりとした気持ちで運転することが必要ですね。

ドライバーといえど、「自転車には絶対に乗らない」という人はほとんどいません。乗り物が変われば立場も変わります。お互いがお互いを思いやる運転が、マナーの向上とトラブル回避へつながっていく近道ということですね。

(クリハラジュン+ノオト)

[ガズー編集部]

MORIZO on the Road