お国柄で意外な違いも! 世界のモーターショー

世界初披露の最新モデルやコンセプトカーがずらりと並び、美しいコンパニオンが華を添えるモーターショー。今年は日本でも東京モーターショーが10月下旬に開催される。世界中のあちこちで開催されているモーターショーでは、どこの国でも同じようにクルマが並ぶのだが、それでもやっぱりお国柄や市場の様子は見えてくる。世界の有名モーターショーをぐるりと一巡りして紹介しよう。

ピックアップトラックが大人気のデトロイトショー。ベストセラーカーF150のマイナーチェンジもビッグニュースになる

ピックアップトラック&SUVのデトロイトショー

毎年、1月上旬に開催されるのがアメリカのデトロイトショー(北米国際オートショー)だ。かつてビッグ3と謳われたGM、クライスラー(現在のFCA)、フォードの本拠地でもあるデトロイトでのショー。しかし、日本ブランドの北米市場の浸透やリーマンショックを経た現在では、すっかり国際色は薄まった。また、自動運転技術やコネクテッド技術などの最新技術の発表は、ほぼ同時期にラスベガスで開催される家電見本市のCESで行われるようになってもいる。つまり、世界的に販売される新型モデルや最新技術が披露されるというよりも、アメリカ国内市場向けという印象の強いショーとなっているのだ。その結果、アメリカ市場で人気の高いピックアップトラックやSUVが数多く並ぶということに。また、乗用車系もセダンが中心となる。規模はそれほど大きくなく、日本のモーターショーに近いという印象だ。

ジュネーブショーでは写真のピニンファリーナのようなデザイン会社のコンセプトも出品されている

こぢんまりであるが豪華絢爛のジュネーブショー

3月にスイス南西のジュネーブで開催されるジュネーブショー。自動車メーカーを有さないスイスでの開催ということで、さまざまな国の自動車ブランドにとっては中立のショーとなる。この地で張り切るのが、超プレミアムなブランドたち。ランボルギーニやフェラーリ、アストンマーティン、ベントレー、ロールスロイスといったメジャーどころから、ブガッティ、マクラーレン、ケーニグセグといったマニアックなブランドまで、「スーパーカー」と呼ばれるようなモデルが並ぶ。ピニンファリーナやイタルデザインといった、デザイン会社も美しいコンセプトカーを出品するのも見どころのひとつ。規模こそ小さいが、ため息の出るような、エレガントでスペシャルなクルマを楽しめるショーだ。

中国ではお役人などに大人気のアウディ。コンセプトカーは「概念車」と表示されるのだ

世界最大市場の中国ショーは規模も世界最大

中国では4月に、北京と上海で交互にショーが開催される。今年が上海なら、来年は北京という具合だ。中国の自動車市場の規模は、今や世界最大。庶民のための格安車から、働くクルマ、豪華なクルマ、環境によいクルマまで、すべてのクルマが飛ぶように売れているのだ。そのため、中国の現地ブランドだけでなく、欧米ブランドから日系、韓国ブランドまでが中国市場に参戦。ものすごい数の自動車ブランドがひしめきあっている。そうした激戦の影響は、モーターショーにも表れる。つまり、ものすごい数のブランドとクルマが展示される、巨大なモーターショーとなっている。もちろん、膨大な数のクルマを展示するショー会場も非常に巨大だ。中国に行った感想として、「スケールの大きさに驚かされる」とよく聞くが、モーターショーも同じであった。

インドネシアのジャカルタで開催されるモーターショー。ヤリスのデザインコンセプトモデル

アセアンのショーは日本車が主役

春から夏にかけて、タイとインドネシアでもモーターショーが開催される。タイは、数多くの日系自動車メーカーが進出しており「アセアンのデトロイト」とも呼ばれるほど自動車工場が多い。タイ国内向けだけでなく、輸出元としての役割も果たしている。また、インドネシアは2億人を超える人口を有する巨大市場。堅調な経済成長を背景に、自動車の販売も好調だ。しかも、インドネシアにおける日本車人気は絶大で、市場シェアの90%以上が日本ブランド。こうしたタイとインドネシアでのモーターショーの主役は、当然、日本ブランド車となる。アセアン向けのモデルが多いのが特徴となる。ちなみにインドネシアはダイハツが特に力を入れる市場。毎年、インドネシアのモーターショーではダイハツが数多くのコンセプトカーを出品している。

フランクフルトショーのメルセデスベンツの展示ホールは巨大な吹き抜け構造となっている

ドイツの底力を感じさせるフランクフルトショー

隔年の9月に開催されるのがドイツのフランクフルトショーだ。同じくパリでのショーも隔年で開催されており、結果として、フランクフルトとパリが毎年9月に交互に開催されることになる。フランクフルトショーは、メルセデスベンツにBMW、アウディ、それにフォルクスワーゲンというビッグネームのホーム・イベント。展示の内容も力が入るが、それぞれのブランドごとに用意された展示ホールのつくりも凝っている。巨大な吹き抜け構造の壁際に螺旋階段のように展示スペースを備えるのがメルセデスベンツの展示ホール。BMWは、ホール内に実際のクルマが走れる周回コースを持つ。また、メーカーだけでなく、サプライヤーの出展が多いのもこちらの特色。さらにクラシックカーやグッズなど、展示内容も幅広い。ドイツの自動車文化の深さを垣間見ることができるショーだ。

パリショーでは、プレスデイのサービスとして、新型モデルを使った場内巡回タクシーが用意されている

欧州ブランドがバランスよく楽しめる華やかなパリショー

フランクフルトと交互に開催されるパリショー(モンディアル・ド・ロトモビル)。こちらの主役はプジョー、シトロエン、DSのPSAグループにルノーといったフランス勢。日本におけるフランス車の存在は薄いが、おひざ元である欧州ではドイツ勢と肩を並べる一大勢力。フランス・ブランドのブースは、メカニカルというよりもデザインやカラフルさで勝負する印象が強い。また、ドイツ勢がおとなしいこともあり、フランスやイタリア、日系ブランドなどがバランスよく見ることができるショーだ。欧州きっての大都市であるパリでの開催ということも華やかな雰囲気を高めてくれる。

東京モーターショーの主催者テーマ展示に用意されたマイクロEVの試乗コーナー

先進を体験できる東京モーターショー

2年に一度、晩秋(2017年は10月27日~11月5日)に開催される東京モーターショー。かつては世界5大ショー(デトロイト、ジュネーブ、フランクフルト、パリ、東京)と呼ばれていたが、今年の開催には、アメリカ・ブランドとイタリア・ブランドが欠席。中国やアセアンの成長や日本市場の縮小などにより、相対的に国際的注目度は下がってしまったようだ。ただし、東京モーターショー側も努力を怠っているわけではなく、先進技術を集めた主催者テーマ展示の実施や試乗&体験プログラムの充実を進めている。壇上のクルマを眺めるだけでなく、先進を触って体験できるのが東京モーターショーの特長ではないだろうか。

東京モーターショーでは、会場裏の駐車場などで同乗試乗などの体験プログラムが用意されている

(鈴木ケンイチ+ノオト)

[ガズー編集部]