どう変わる? 国際基準の新しい燃費の表示WLTPモードとは

環境を気にする人も、財布の中身を気にする人も、数多くの皆さんが注目するのがクルマの燃費性能でしょう。日本では、これまでJC08モードという、日本独自の方式が使われてきました。しかし、これからは新たな方式に移行します。

それがWLTPモードです。

■WLTPモードとは

WLTPは、Worldwide harmonized Light vehicles Text Procedureの略。名称内に「ワールドワイド」とあるように国際的なもので、国際連合の傘下にある自動車基準調和世界フォーラム(WP29)で定められました。日本では2016年10月31日に国土交通省から導入が発表。欧州でも2017年から導入され、2018年には税制も新基準をもとにする動きとなっています。

■新基準に移行する理由

今回、日本独自の燃費試験から国際基準へ移行する狙いは「経済」です。国土交通省のリリースにも「自動車の基準調和の実現により、自動車メーカー等は国際的な部品の共通化、それに伴う環境技術の開発への経営資本の投下等が可能となり、消費者にとっても環境性能に優れた自動車をより安価に購入できることとなります」とあります。

国ごとに燃費試験がバラバラであれば、自動車メーカーは、それぞれの国の試験をすべて行わなければなりません。当然、国際的に決まったひとつの方法があり、それを1回クリアすればいいという方が手間もお金もかかりません。1回で済めば、その分、開発費が安くなり、ひるがえってはクルマの販価も下がるという理屈です。また、2014年6月に「規制改革の観点と重点項目」の個別措置事項として「相互認証の推進」が閣議決定しています。世界各国と試験を相互に認め合おうというのは、政府の方針でもあったのです。

■従来のJC08モードとの違い

では、新しいWLTPモードは、従来のJC08モード燃費と何が違うのでしょうか?

一番はっきりとしているのは、表示の内容です。これまでJC08モードでは、総合的な1つの数字しか表示されませんでした。しかし、WLTPモードは違います。最大4種の数値が表示されます。総合的なWLTPモード、市街地モード、郊外モード、高速道路モードです。

実際にクルマに乗っている方ならわかると思いますが、高速道路と市街地では、同じクルマでも燃費は変わります。ある意味、シチュエーションごとに燃費性能を見ることができるので、より実走行での燃費をイメージしやすくなるのではないでしょうか。ちなみに、NEDC(新欧州ドライビングサイクル)では、従来からシチュエーションごとに燃費を表示していました。しかし、試験の内容では、より速度域が高められ、試験の走行距離が延長され、エアコンやシートヒーターの作動も燃費に考慮されるようになりました。つまり、より試験内容が厳しくなっているのです。

「自動車メーカーの都合ばかり」と思いきや、試験内容はよく吟味されており、従来の日本のJC08モードや欧州のNEDC(新欧州ドライビングサイクル)よりも厳しく、さらに現実に近いデータになることが予想されています。そして移行は、始まってしまえば一気呵成。その変化は、もう近くまでやってきているのです。

(鈴木ケンイチ+ノオト)

[ガズー編集部]