再び注目! フィガロジャポン主催「ドライブインシアター」体験レポート
皆さんはドライブインシアターをご存じでしょうか。実は筆者は子どものころ家族で見に行ったことがあります。まったく別件がきっかけで、数か月前「最近どこかでやってないかしら?」と調べたところ、どうも2010年まで大磯プリンスホテルの駐車場でやっていたようです。
ドライブインシアターとは
もともとは1950~60年代にかけてアメリカで流行したタイプの映画館で、大きなスクリーンを設けた広大な駐車場にクルマで直接行って、クルマのなかから映画を見るというタイプの映画館です。映像は前の大型スクリーン。音声はカーラジオから流れます。1990年代には日本でも各地に登場し、カップルや家族連れに人気を博しましたが、その後衰退。前述のとおり、2010年を最後に日本には常設のドライブインシアターは存在していません。
フィガロジャポン主催で2日限りの復活!
- 2010年に最後までドライブインシアターを開催していた大磯ロングビーチの駐車場で、映画特集でも定評のあるフィガロジャポン主催で2日限りの復活を遂げた
そんな折、たまたま見つけたのが、より知的に、文化やライフスタイルを提案する雑誌フィガロジャポンが主催するイベントとして6月23日(金)、24日(土)の2日間限定で復活するというものでした。これはと思い23日に参加。会場は2010年、国内で最後まで実際にドライブインシアターのあった大磯プリンスホテル ロングビーチ駐車場。西湘バイパス沿いのこの場所は普段クルマ関係のイベントも多数開催されるなじみの場所ですが、この日ばかりは少し懐かしく、華やかに飾り付けられていました。西湘バイパスを挟んで相模湾沿いのロケーションも夕方以降過ごす場所にはうってつけの場所です。
上映前にはスペシャルなトークショーも
- スクリーンの前でのトークショー。映画ファンならずとも楽しめるトークで参加者からはたびたび笑い声があがっていた
一年で一番日が長いこの時期。ゆっくりと日は落ちていきます。湿気を含んだ海風を受けながら、日没を待ってから、この日は『シング・ストリート 未来へのうた』が上映されました。
開場時間は17時。それからの時間もゆったりと過ごすことができるようにフード類を販売するキッチンカーやスポンサーのブースが出ていたほか、上映前にはWOWOWの映画番組『映画工房』にご出演中の斎藤工さん、板谷由夏さんと、今回のイベントでの上映作品の選者でもあるフィガロジャポンの森田聖美副編集長によるトークショーも催されました。
女性に大人気の斎藤工さんの、無邪気さのあふれるそのトークは終始会場を笑わせていました。「こんなに広いところで観るのにクルマという狭い空間にいながら映画を見れば、二人の距離は縮まると思う」ともコメント。自分の好みにあわせて温度調節ができ、気兼ねなく飲食することもできる空間で映画を楽しめるという点で、映画館で観るときとは違う魅力があるのかもしれません。
板谷由夏さんは「演目は音楽も楽しめて、また前向きな気持ちになれる映画が向いているかも。終了後に帰る途中で観た映画の話題で共感し、盛り上がれるといい」と話していました。きわめてパブリックなスペースにいるようでありながら、実はきわめてパーソナルな空間での映画鑑賞。トークを聞いていて、むしろ今の時代にこそふさわしい映画の楽しみ方がドライブインシアターにあるのではないかと感じたのです。
- 左からフィガロジャポンの森田聖美副編集長、WOWOWの「映画工房」に出演中の斎藤工さん、板谷由夏さん
映画に欠かせない、とっておきフード
映画館ではありませんが、映画に欠かせないポップコーンも販売されていました。会場に登場していたのは、日本に初めてグルメポップコーンを紹介したヒルバレー。油を使わず熱風で膨らますポップコーンを試食させていただくと、そのしっかりとコーンの風味が感じられる仕上がりに驚かされます。またハリウッドスターにもファンが多いロサンゼルスの名店「ザ・パイホール」のパイも登場。とっておきの「映画を見る体験」にふさわしいフードではないでしょうか。
- ハリウッドスターの中にファンも多いという「ザ・パイホール」も出店
- マイカーに戻って映画を楽しむ人たちが続々とパイを買い求めていた
- 日本にグルメポップコーンを紹介したヒルバレー。一口味見をするとジャンキーなイメージのあるポップコーンのイメージは一変。コーンの風味と弾力を引き出しつつ、楽しい、選べる数種類のフレーバーも香や味わいが大人もしっかり楽しめる仕上がりだった
家族からカップルまで 多彩な参加者層
このイベントの参加はクルマの単位であるため、カップルで来る人、家族連れ、あとは友達同士でなど様々でした。しかし、皆さん映画好き、あるいはクルマで映画を見るというドライブインシアターに興味のある人が多いようです。また、過去にドライブインシアターでの楽しい思い出のある方が懐かしんで応募されたケースは多いようで、トークショーのとき「ドライブインシアターに行ったことがあるという方」という質問に、来場者の相当数の人が挙手していました。
またもちろん大磯で再びドライブインシアターが見られるというので、クルマ好きの方、ライフスタイルを演出する上でクルマにもこだわっているという方も多数来場。クルマ好きで集うのも楽しいですが、クルマがあるから楽しめる暮らしを満喫するイベントに集うことにこそ、より多くの人にクルマの楽しさを知ってもらえる可能性を感じました。
ドライブと映画を楽しむイベント
- サイドからエアーを送り、膨らませるタイプの巨大スクリーン。イメージしていたものよりもかなり大きいスクリーンだった。音声は、車内のラジオで楽しむ
今回使用されたスクリーンはかつて大磯にあったような固定式のスクリーンでも、ほかの駐車場を流用していたシアターなどで見られたトラックの荷台をスクリーンにしたものではありません。「ドイツから取り寄せたもので、今回のイベントの後も日本にとどまる予定です。もしかしたらまた少しずつ日本でもドライブインシアターが盛り上がって、ご覧いただける機会も増えるかもしれません」とはトークショーでの森田副編集長のお話。
参加車両もハイブリッドカーなどが増え、中にはエンジンをかけていなくとも、音声を楽しむためのラジオだけでなく、エアコンまで動かせてしまうクルマも普及しています。そういった設備的な面では、昔よりもドライブインシアターには適していると言えるかもしれません。
- 互い違いに並び、背の高めなクルマは後ろの方へ。スクリーンには音声が流れるカーラジオの周波数が案内される
主催者に今回のイベントについて話を聞いたところ、今回のイベントは不特定多数の人に向けた集客を目的にしたイベントではないし、今後継続していくというものでもないとのこと。「クルマのイベントというわけでもありませんが、ドライブの先に映画があり、それを一緒に見て、共感しあう。そんな楽しみ方が、かつてあったことを知ってほしいと形にしたのが今回のドライブインシアターです。新しいデートのカタチ、大人の楽しみとしても再注目されたらいいなと思います」と話してくださいました。
ひとつの閉ざされた空間で、同じ映画を見るためにドライブをする。同じ映画を観て行き帰りの時間を共にする。カーライフとしても、こういう時間はもっと見直されてもいいのではないでしょうか。ドライブインシアターのような、かつての楽しいカーライフシーンが、またムーブメントになっていくと面白いと思いました。
(中込健太郎+ノオト)
[ガズー編集部]
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