左折時の巻き込み防止センサーまで! 大型車の予防安全性能の今 その2

先日のコラム「すでに『義務化』済み!? 大型車の予防安全性能の今」では、衝突を避けられない状況になるとクルマが自動的にブレーキをかけるプリクラッシュブレーキ(衝突回避・被害軽減ブレーキ)が、すでに新車の大型トラックやバスに義務化されていることをお伝えしました。大型車は事故が起きると乗用車よりも被害が大きくなるので、乗用車に先んじて新車への装着が義務付けられているのです。

では、プリクラッシュブレーキ以外の先進安全装備はどうなっているのでしょうか?

ドライバーの顔の向きやまぶたの状況までモニター

たとえば今年4月にフルモデルチェンジした日野の大型トラック「プロフィア」には、レーダーとカメラを組み合わせたプリクラッシュブレーキが採用され、日本の大型トラックとしては初めて車両や障害物だけでなく静止している歩行者まで検知が可能になりました。万が一、ドライバーの操作遅れがあっても、ブレーキをかけて衝突を回避、もしくは被害軽減できます。

また、ドライバーの前方不注意による事故を防止するため、約60km/h以上で走行中にはドライバーの顔の向きやまぶたの開閉状態をカメラでチェック。前方への注意不足を検知すると警報を発し、さらに衝突の可能性がある場合にはプリクラッシュブレーキを早めに作動させる仕掛けになっています。これは乗用車にはほとんど採用例のない、わき見や居眠り運転による事故を防ぐための装備ですね。

居眠り運転対策では、ハンドル操作からのアプローチもあります。ハンドル操作が落ち着かず、車両のふらつきが大きくなるとセンサーが検知して警報を発し、ドライバーに休憩を促すシステムが組み込まれているのです。これも警報が続くとプリクラッシュブレーキを早めに作動させます。さらに、カメラが画像処理をして車線を認識し、走行車線から車両がはみ出すと警報がなる車線逸脱警報も装備。こうしたドライバーの顔をカメラで監視するシステムや車線逸脱警報は、最新の日野・プロフィアだけでなく、いすゞ・ガーラや三菱・スーパーグレートにも採用されています。

歩行者や自転車を守るため、左折時にセンサーが死角をフォロー

また、大型車は左折時の「巻き込み事故」が大きな問題となっています。これは乗用車に比べて大型車では死角が大きく、歩行者や自転車が死角に入ってしまうケースが多いから。そこで三菱・スーパーグレートには、左折時に車両が通過する範囲にいる歩行者や自転車を検知するとランプが点灯し、さらにドライバーがハンドルやウインカー操作をすると警告する「アクティブ・サイドガード・アシスト」が採用されました。システムのサポートを借りて交差点左折時の巻き込み事故を防ごうというのです。対車両だけでなく、こういった歩行者や自転車を守る機能の充実も今後は期待したいところですね。

観光バスの3点式シートベルトも安全性向上のひとつ

前回記事で、バス乗車中にシートベルトを装着することが大切であるとお伝えしました。実は、バスのシートベルトは、私たち乗客が安全装備の充実を実感できる部分のひとつです。

以前は、バスの客席のシートベルトは2点式がほとんどでしたが、2012年7月以降の生産車両には、補助席を除き3点式シートベルトの装備が義務化されました。観光バスや高速バスによく乗る人なら、その変化に気づいている人もいるかもしれません。3点式の方が、2点式よりも広い面積で身体を支えられるので、身体保持性が高いうえに加害性が少なく、事故の際の安全性が高まるのです。繰り返しになりますが、シートベルトは装着しなければ意味がありませんので、乗車の際には必ずシートベルトを締めてくださいね。

どれだけ安全装備が充実しても、それの恩恵をしっかり受けられるかはドライバーや乗員にかかっています。それは乗用車でも同じです。予防安全装備がついているからといって油断は禁物ですし、シートベルトは「義務だから」ではなく、自分を守るために装着したいもの。2回にわたってお届けしてきた「大型車の予防安全性能の今」をきっかけに、自動車と安全について今一度考えていただければ幸いです。

(工藤貴宏+ノオト)

[ガズー編集部]