新型カムリ登場の今、あえてセダンを選ぶ理由を考えてみる

クルマ離れと言われる昨今だけど、幼稚園児/保育園児や小学校低学年の男の子はやっぱりクルマの絵を描くことが少なくない。でも、そこに描かれるクルマの多くがセダンではなくなったのはいつごろからだろうか。

かつては、クルマといえばセダンのことだった。だから子供が描くクルマの絵といえばトランクが車体後部に突き出ているセダンがあたりまえだったのだ。しかし、1990年ごろからのRVブームを経て、クルマといえば軽自動車やコンパクトカー、そしてミニバンなど背の高いクルマが中心となってしまった。SUVという新興勢力だって急激にシェアを伸ばしている。だから描くクルマの絵がセダンではないのも当然かもしれない。

そんな今だからこそ、今日はあえてセダンを選ぶ理由を考えてみよう。新型カムリをはじめ、日本には魅力あふれるセダンが用意されているのだから。

気持ちのいい走りと快適性の両立はセダンの得意とするところ

はっきりいって、セダンを選ばなければならない実用上の理由はほぼない。ミニバンは車内が広くて快適だし、コンパクトカーの居住性も十分に高くなった。荷室の積載性だってミニバンやSUVのほうが有利だ。じゃあセダンの何が優れているのか?

SUVやミニバンに対して有利なのは、乗り心地と走行性能のバランスだ。SUVやミニバンは重心が高くなり、必然的に曲がるときの車体の傾きを減らすためにサスペンションを硬くしなければいけない。サスペンションを硬くするということは、乗り心地が悪化してしまうということだ。しかし、セダンは重心が低く、サスペンションを固めなくても走行性能を高くすることができる。だから走行性能と乗り心地のバランスが高次元なのだ。

もう少しマニアックな領域に踏み込めば、ミニバンやSUVに比べてセダンの車体は剛性を高めやすく、ねじれや振動も少ない。荷室内の共鳴がキャビンに届きにくいから走行ノイズだって静か。それらは快適性にとって理想的なこと。走りが気持ちよくて乗り心地もいい。それがセダンのアドバンテージである。

セキュリティ面のメリットや独立したトランクが実用的なシーンも

日本の話ではないが、北米ではハッチバックよりもセダンの人気が高い。その理由のひとつが防盗性。ガラスを割れば車内のすべての荷物が盗めてしまうハッチバックと違い、セダンは窓ガラスを割るだけではトランク内の荷物までは盗めない。だから車上荒らしに狙われた際でも被害が少なく済むというわけだ。

またホテルなどで駐車するとき、クルマを係員に預けることもある北米ならではと言えるのだが、クルマを預ける際に車両の設定でトランクが開かないようにできるのもセダンのメリット。セダンのトランクの中であれば荷物を置いたままでも比較的安心というわけである。

また実用上においては、荷室がキャビンと完全に隔てられているというのも他のボディ形状にはないポイントだ。たとえばバーベキューなどを楽しんでゴミを持ち帰る際、セダンならミニバンやSUVと違って、荷室からニオイが車内に入ってきにくい。これもセダンならではの強みだ。

セダンは時代が移り変わっても不変の形式美である

クルマのルーツをたどれば馬車だが、馬車時代に人が乗るスペースと荷物を載せるスペースが別れていたのがセダンの原型である。小さなキャビンの後部に「トランク」という荷物入れを備えていた。対して、大きなキャビンに人と荷物を混載していたのが西部開拓時代にアメリカで発展した乗り合いの駅馬車(=ステーションワゴン)だ。

優雅かつ高貴で、上級階級が乗るフォーマルな乗り物がどちらかと問われれば、答えは明確だろう。セダンである。

時代が変化して、今ではステーションワゴンやSUVのプレミアムモデルも数多いが、歴史を紐解けばセダンこそが上級な乗り物なのだ。いかにカジュアルな服装が流行ろうとも、スーツがフォーマルの定番であり続けることと同じである。

「冠婚葬祭はセダンでないと」という人はもういないだろう。しかし、クルマのジャンルの中でセダンがもっともフォーマルな立ち位置であることはいまも、そして今後も変わらない不変の価値。だから、セダンなのである。

FFとFRの違いを知っておこう

ところで、そんな形式美のセダンだからこそこだわる人も多くいるのが駆動方式だ。セダンは4WDを除き「FR」もしくは「FF」の駆動方式を採用している。FRとは車両前部にエンジンを置き、後輪に前へ進む力を与える仕掛け。FFとはエンジンの置き場所は変わらないが、後輪ではなく前輪へ駆動力を伝える方式だ。たとえばトヨタのラインナップでは、クラウンやマークXがFR、プレミオ、アリオン、カローラ、そして新型カムリがFFを採用している。

FFを採用する新型カムリのメカニズム
FFを採用する新型カムリのメカニズム

FRが優れているのは、運動性能の高さである。ステアリングを担当するタイヤが駆動を担当するタイヤと完全に独立しているので、アクセルのオン/オフで影響が少ない。その先は、ドライバーの腕さえあれば後輪を滑らせてドリフトに持ち込むことだってできる。スポーティでアクセルを積極的に踏んでいける楽しみがあるのがFRなのだ。

いっぽうでFFのメリットはスペース効率に優れること。エンジンと駆動系を車両前部に配置するからコンパクトで済み、室内やトランクを広くできる。優れたパッケージングを実現できるのだ。FFの走行面はFRに比べるとステアリングの感触の自然さで劣る部分があり、コーナリング中はアクセルを踏み込むのを我慢しなければならないシーンもある。しかし、それも技術の進化によってFRとの差は縮まっている。

(工藤貴宏+ノオト)

[ガズー編集部]

関連リンク