懐かしさ満載! 80年代トヨタを彩ったクルマたちを振り返る

新型のカムリが「セダン復権」を謳うように、かつてセダンは自動車業界の中心で光り輝いていました。最初のカムリが生まれた1980年代は、人気セダンがそれこそ綺羅星のごとく存在していたのです。今回は、その80年代のトヨタのセダンを紹介したいと思います。

トヨタセダンのトップに君臨するクラウン

バブル経済に向かう好景気の1987年に発売された8代目のクラウン
バブル経済に向かう好景気の1987年に発売された8代目のクラウン

「いつかはクラウン」。1980年代に使われた、このクラウンのコピーは強烈なものでした。この一言で、クラウンの偉大さや、当時のセダンのヒエラルキーが決定されてしまっていたのです。身近なカローラにはじまり、コロナを経て、頂点にクラウンが君臨する。そんな分かりやすく、ゆるぎない価値観が1980年代には存在したのです。ちなみに、当時のトヨタにもセンチュリーという超ド級セダンが存在しましたが、「雲の上のやんごとなき存在」というイメージ。一般庶民が狙える最上級がクラウンだったのです。

そんな1980年代に販売されたクラウンは3モデル。1979年登場の6代目、1983年の7代目、1987年の8代目です。特に7代目と8代目は「世界最高級」を謳い、「いつかはクラウン」のキャッチコピーが使われたモデル。1980年代を代表する2台と呼んでいいことでしょう。また、初代クラウンからの伝統であるフルフレーム構造は、この8代目まで受け継がれていました。当時は「フレーム構造なので壊れない」「フレーム構造なので乗り心地がよい」と言われていました。モノコックボディが常識の現在から考えてみれば、当時の認識はずいぶんと違っていたものです。

トヨタ初の前輪駆動(FF)モデルとして生まれたターセル/コルサ

トヨタの最小セダンがターセルとコルサの兄弟車。写真は2代目のターセル
トヨタの最小セダンがターセルとコルサの兄弟車。写真は2代目のターセル

頂点がクラウンなら、裾野はターセルとコルサの兄弟モデル。実は、これにカローラ2をあわせた3モデルが兄弟として販売チャンネル別に売られていましたが、カローラ2はハッチバックだけでセダンがありませんでした。ターセル/コルサは、1978年にカローラよりも一回り小さいトヨタ初の前輪駆動(FF)モデルとして誕生。エンジンはフロントに縦に置くという構造が特徴です。1982年に第2世代にフルモデルチェンジ。エンジン縦置きは踏襲。ハッチバックは1986年に第3世代に代替わりしますが、セダンのフルモデルチェンジは1990年まで延長されました。

多彩なボディバリエーションと数多くの兄弟車を揃えた80年代のカローラ

「ハイクオリティ」を謳って1987年に発売された6代目カローラ
「ハイクオリティ」を謳って1987年に発売された6代目カローラ

トヨタの大衆車の代表格といえばカローラです。1969年の初代誕生以来、33年間にわたり年間販売台数トップを守り続けた、まさに大衆車の王者。1979年から発売された4代目カローラは、セダンだけでなく、クーペ、ハードトップ、リフトバック、バンという多彩なボディバリエーションを揃えました。また、当時はカローラ・スプリンターという兄弟モデルも存在しており、とにかく世の中には、多種多様なカローラがうじゃうじゃと走り回っていたのです。そして1983年に5代目へフルモデルチェンジ。セダン系は、それまでの後輪駆動(FR)から、当時のトレンドであった前輪駆動(FF)へ。クーペは後輪駆動(FR)のままとなり、ドリフトの元祖となるレビン/トレノ(AE86)が生まれるのです。そして1987年に「クラスを超えた世界のハイクオリティセダン」をテーマにした6代目が登場。時はまさにバブルの真っただ中。この6代目カローラは大ヒットし、1990年に年間販売台数30万台を記録。この数字は、2010年のプリウスに抜かれるまで歴史最多でした。

かつてのベストセラーカーであるコロナも80年代には……

1983年には、コロナとしては初の前輪駆動(FF)モデルが発売される
1983年には、コロナとしては初の前輪駆動(FF)モデルが発売される

カローラよりも先に生まれ、クラウンの弟分、カローラのお兄さんとして、1960年代には大ヒットしたコロナ。しかし、70年代を経て80年代になると、上にはマークⅡ/チェイサー/クレスタの3兄弟。横には華やかなカリーナやカムリ/ビスタといった、個性派モデルに囲まれ、すっかり影の薄い存在に。1983年にコロナ初の前輪駆動(FF)モデルが登場するも、同じプラットフォームがカリーナにも使われるようになるなど、独自性も弱まってしまいました。

極限まで背を低めたカリーナEDが大人気モデルに!

スペシャリティな感覚が薄くなってゆく本家カリーナに対して、派生のカリーナEDは思い切った背の低いクルマに
スペシャリティな感覚が薄くなってゆく本家カリーナに対して、派生のカリーナEDは思い切った背の低いクルマに

「足のいいヤツ」をキャッチフレーズに初代が1970年代に誕生。最初のカリーナは、若々しくスペシャリティ感覚の強いセダンだったのです。しかし、代を重ねるごとに華やかさが薄れてゆき、1984年の5代目からはコロナとプラットフォームを共用。すっかり普通のセダンとなってしまった。しかし、その反動か、1985年にカリーナEDが誕生します。Bピラーのないハードトップ4ドアスタイルは、当時の量産セダンとしては最低の車高1310mm(現在のトヨタ・86はアンテナまでで1320mm)。その低いスタイルが男女問わずに「格好良い!」と大いに受けたのでした。

端正なスタイルに広々とした室内空間を売りにしたカムリ!

トヨタの前輪駆動(FF)セダンの最上級モデルとして1982年に発売されたカムリ
トヨタの前輪駆動(FF)セダンの最上級モデルとして1982年に発売されたカムリ

1982年に当時のトヨタの前輪駆動(FF)セダンの最上級モデルとしてカムリが発売されました。また同時に兄弟車であるビスタも誕生。ミドルクラスでありながらも、ホイールベースを長くとることで上級クラスにも負けない広々とした室内空間を実現。1986年にキープコンセプトのフルモデルチェンジを行い、さらに車格感をアップ。着実に市場への存在感を大きくしていきました。

1980年代を象徴するマーク2兄弟!

ホワイトのマーク2兄弟は1980年代に飛ぶように売れた
ホワイトのマーク2兄弟は1980年代に飛ぶように売れた

1980年代を象徴するモデルといえば、マークⅡ/チェイサー/クレスタの3兄弟でしょう。マークⅡ自体は1960年代にコロナの派生モデルとしてデビューしていましたが、1980年代になるとチェイサーとクレスタという兄弟モデルをそろえました。特に1980年代のマークⅡ兄弟はゴージャスでいてエンジンもパワフル。バブルに向かって経済成長が続く日本において、クラウンに次ぐ、アッパーミドルセダンのマークⅡ兄弟は、とにかく売れました。特にホワイトのマークⅡ兄弟は大人気モデルとなったのです。

クラウンを頂点に戴き、マーク2兄弟、カムリ/ビスタ、コロナ/カリーナ、カローラ、ターセル/コルサというセダンのヒエラルキーが築かれていた1980年代のトヨタ。今では考えらないほど、数多くのモデルがひしめきあっていたからこそ、セダンの魅力が光り輝いていたのかもしれませんね。

(鈴木ケンイチ+ノオト)

[ガズー編集部]

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