札幌オフィス街で生きる、ラーメン屋台歴30年の日産・アトラス

札幌中心部、ビルの谷間に夜な夜な現れる赤ちょうちん。ラーメンと書かれたその灯りの向こうにはトラックのラーメン屋台がありました。湯気とともに風に揺れる赤いのれんの中に、一人、二人とワイシャツ姿の人たちが吸い込まれていきます。
札幌では非常に珍しい、ラーメン屋台のひとつ「札幌0番地」です。

■さびの浮いた車体に長い歴史を感じる

ライトの横が欠け、ところどころにさびの浮いた車体に「テイクアウト&デリバリー」の文字と小さな黄色い星が散りばめられています。フロントガラスにはでかでかと掲げられた「うまい!! ラーメン¥650」の看板。車種は日産・アトラス

20年前、既にラーメン屋台に加工されていたものを、いわゆる居抜きの状態で譲り受けたそうです。おそらく、ラーメン屋台として使われているのは30年くらいだろうとのこと。

「それから、ずっとここでやってるんだよ。営業時間は21:30から夜中の1:00まで。一番混むのは23:00すぎからかな?地下鉄の出入口も近いからかね」と、店主の金子さん。

札幌の地下鉄の終発は、どの路線も12時少し過ぎ。終電前にひっそり立ち寄ることのできる穴場なのです。

■意外に居心地がよい赤い空間

のれんの中は二つのちょうちんに照らされてぼんやりと赤。
「みそラーメン・正油ラーメン・塩ラーメン ¥650税込」の横にはいつぞやのグラビアらしき写真が。目が慣れるまでは現実からクラクラと遠のいていくよう。
チェーンで吊られたカウンターの上には、割りばし、コショウ、七味、ティッシュペーパー、灰皿が左右対称に並んでいます。

「はい、どうぞ」

注文した正油ラーメンを受け取って「一番人気は何ですか?」と尋ねると、

「正油だね」

白ネギの下には厚みのあるチャーシューと麩、そして、ワカメかなと思ったら、たっぷりのきくらげが入っています。魚介系のスープは濃い色のわりにさっぱり味です。

■吹雪の夜もラーメンを待つ人のために

月曜から土曜まで、20年間変わらず営業し続けてきたという金子さん。

「え? ということは、冬も営業してるんですか?」

「してるよ。冬もずっと」

「大変なんじゃないですか……」

「そりゃ、大変だね」

ビルとビルの間の仲通りは雪が吹き溜まりやすい場所です。まずは、雪かきをして駐車するスペースを開けることから、冬の仕事は始まります。でも、意外なことに、吹雪の日もお客さんはいらっしゃるそうです。

お邪魔した木曜日は、比較的混まない方とのことでしたが、話しているそばから、お客さんが。

譲り受けた当時に使い勝手が良いよう改造したというコックピットのような厨房の中、夏の日も冬の日も。吹雪の夜も金子さんはゆったりとお客さんを待っています。

(わたなべひろみ+ノオト)

[ガズー編集部]

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