ジャーナリストも高評価! モノづくり×ドライビングで戦うERK体験レポート
昨今の自動車業界の話題といえば、ガソリン・エンジンからモーターへのシフトです。世界のあちこちで、「将来的にはクルマは電気自動車(EV)になる」という意見が活発に表明されています。同じような動きはモータースポーツの世界にも出ています。それがフォーミュラEです。電気自動車による世界トップクラスのレースで、アウディやジャガー、ルノーが戦っており、ポルシェとメルセデス・ベンツも近く参戦する予定とか。さらに、今年の春にFIA(国際自動車連盟)はボッシュなどと共同開発した、電動レーシングカートを発表。シリーズ戦の構想があることも明らかにしました。
そんな話題の電動レーシングカートに偶然、乗る機会を得ました。手作りの電動レーシングカートでシリーズを戦う「ERK Cup JAPAN 2017シリーズ」のマシンを使ったメディア向け試乗会が開催されたのです。ERKとはエレクトリック・レーシング・カートの略。いわゆる電動のレーシングカートです。
- 話題の電動レーシングカートであるERK(エレクトリック・レーシング・カート)の試乗会が開催された
試乗マシンは、横浜でコンバージョンEVなどを手掛けるオズコーポレーションという会社が製作したもの。「ERK Cup JAPAN 2017シリーズ」の第1戦と2戦で、クラス&総合優勝しており、いわば、今、日本でトップクラスに速いマシンと言っていいでしょう。
シャシーは通常のレーシングカートのシャシー。そこに、モーターと電池を搭載します。モーターは最高出力16kWの交流誘導モーター。電池は、日産リーフの中古リチウムイオン電池を流用。10モジュール分で約5kWhの容量です。電池は、車両の左右に搭載されており、車体の後ろ側にコントローラや配線が納められています。車両重量は、通常のレーシングカートの2倍ほどもあるため、ブレーキは前輪にも装備されています。冷却が重要なため、ボディの左右に大きなダクトがあるのが特徴です。
- 車両の両サイドの銀色の箱にリチウムイオン電池を搭載。円筒なのがモーター。車両後ろ側がコントローラと配線類だ
強烈な加速力とクリーンでサイレントな走りが魅力
その走りは強烈でした。なんといっても加速がすごい。トルクフルなだけでなく、加速力がシームレスにいつまでも続きます。設定にもよるのでしょうが、試乗会場となったカートコースでは狭すぎて、加速力が鈍るまで試せません。コーナーの立ち上がりでラフに扱えば、パワードリフトもできます。よくある270ccの4ストロークのガソリン・エンジンのレンタルカートの出力は6kW程度。それに対して、2.5倍ほどもパワフルなのですから、強烈なのも当然でしょう。ただし、強烈なパワーと重量増に対してシャシーが追い付いていません。路面のギャップでしなってシャシーが路面をこすります。加速をすると、まるでウイリーするかのように前輪の接地感が薄れてゆきます。なんというジャジャ馬!
しかし、面白さは十分。また、静かですし、オイルや排気ガスもないので、クリーンそのもの。街中でレースを開催することもできるでしょう。
- 筆者(鈴木ケンイチ)も走行。その速さに舌を巻いた!
「レースの楽しみはエンジンのサウンドにあるという人が、“EVは面白くない”っていうけれど、そんなことはないと思いますね。自分の思うままに走らせる。操るという楽しさは、ERKには十分にある。モータースポーツの新しいジャンルとしてはアリだと思うよ」とベテランのモータージャーナリストの斎藤聡氏が言うように、試乗会に参加した多くのモータージャーナリスト仲間も、ERKを十分に楽しんでいたようです。
- “走れる!”モータージャーナリストとして業界内では有名な斎藤聡氏もERKを高く評価。
ちなみに、日本で開催されている「ERK Cup JAPAN 2017シリーズ」は、参加者自身が、自らのマシンを手作りしていることが特徴です。なぜなら、完成したERKは、この世に売っていないから。逆に言えば、マシンを作るところからが競争です。速くて、壊れないマシンをいかにつくるか。そして、いかに速く走らせるか。そして、最後に、いかに上手に戦うか。その総合力が試されるレースです。
聞けば、学生のチームも存在しており、参戦すること自体が勉強になっているとか。ERKのレースには、モータースポーツのエッセンスが詰まっているということ。ついドライバーの勝負にばかり目が向きますが、本来、モータースポーツはクルマとドライビングの両輪で競うもの。そういう意味で、モノづくりも重要なERKは、モータースポーツの王道をゆくものではないでしょうか。FIAも電動のレーシングカートに力を入れるように、日本でも、もっと電動カートが盛り上がってゆく可能性もありますね。注目です。
(鈴木ケンイチ+ノオト)
[ガズー編集部]
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