天候に翻弄されたD1 GP 2017第5戦&第6戦「EBISU DRIFT」

8月19日(土)~20日(日)、福島県のエビスサーキットにて、世界有数のドリフトイベント「2017 GRAN TURISMO D1GP Round 5 & 6 EBISU DRIFT」が行われました。

D1GPシリーズがスタートした当初から開催されているエビスサーキットは、国外でも知られているドリフトの聖地。競技区間のスタートがジャンプスポットになっていて、ドリフトしながら飛び出し、長い1・2コーナーにアプローチしていく迫力が見所です。

土曜日:D1GP シリーズ第5戦 ~遂にシリーズトップが交代~

まずは、土曜日に行われた第5戦の様子から。この日は一日安定しない天候で、本戦前の練習走行時に降っていた雨は単走決勝が始まるまでには止んだものの、路面は“ほぼドライ”という難しいコンディションでのスタートです。

天候は2日間を通じて良いとは言えなかったが、涼しく雨が降っていなければ観戦は快適だ
天候は2日間を通じて良いとは言えなかったが、涼しく雨が降っていなければ観戦は快適だ

単走決勝:シリーズトップ勢が敗退する中、180SXの藤野秀之選手が連勝!

単走決勝はドライバーのテクニックだけではなく、より正確なマシンセットアップを行うチーム力が勝敗をわけるもの。結論からいうと、前戦・大阪でも単走優勝を飾った「WISTERIA TOYO TIRES 180SX」に乗る藤野秀之選手が、チームとの綿密なセットアップにより、ハイスピードなドリフトを決めて連勝しました。

単走ポイントリーダーとなった藤野選手。職人的ともいえる冷静かつアグレッシブなドリフトに破錠の兆しはまったく見えない
単走ポイントリーダーとなった藤野選手。職人的ともいえる冷静かつアグレッシブなドリフトに破錠の兆しはまったく見えない

単走・追走ともシリーズランキングトップを維持していた「TOYO TIRES GLION TRUST RACING R35GT-R」の川畑真人選手は、追走決勝へのシード権を獲得できるギリギリの8位に。シリーズランキングで川畑選手を追う「WANLI FAT FIVE RACING コルベット」の齋藤太吾選手は、2本目の走行でクラッシュしてリタイアという結果に……。

豪快なジャンプドリフトで攻める川畑選手。1000馬力近いパワーがあるだけに微妙なコンディション変化に合わせるのは至難の業
豪快なジャンプドリフトで攻める川畑選手。1000馬力近いパワーがあるだけに微妙なコンディション変化に合わせるのは至難の業
路面に翻弄されてしまった齋藤選手。コンディションが悪いとコルベットにあわせた幅広タイヤが足を引っ張る
路面に翻弄されてしまった齋藤選手。コンディションが悪いとコルベットにあわせた幅広タイヤが足を引っ張る

「GOODYEAR Racing AST 86」を操る時田雅義選手が13位、大阪では追走進出できなかった「OTG DUNLOP 86」の今村陽一選手が4位に入り、2台の86が追走トーナメント進出を決めました。単走決勝2位は「EXEDY R Magic ロードスター」の岩井照宣選手、3位は「D-MAX S15」の横井昌志選手。

ひょうきんなキャラで根強いファンが多い時田選手。ゼロクラウン時代からの派手な走りは健在だ
ひょうきんなキャラで根強いファンが多い時田選手。ゼロクラウン時代からの派手な走りは健在だ

追走決勝:藤野選手が勢いに乗る小橋選手を退け、単走に続き勝利!

午後には再び雨が降り始め、さらに濃霧でスタート時刻が遅れるという悪条件の中でスタートした追走決勝。優勝したのは、単走決勝に続き藤野選手! 「YUKE’S Team ORANGE アルテッツァ」の小橋正典選手と開幕戦・お台場以来の勝負に競り勝ち優勝しました。

正直、勢いは小橋選手にあった。しかし、開幕戦以来の対戦ではやる気持ちを抑えきれなかったのか痛恨のスピン
正直、勢いは小橋選手にあった。しかし、開幕戦以来の対戦ではやる気持ちを抑えきれなかったのか痛恨のスピン

3位には、久々の表彰台獲得となる今村選手がランクイン。藤野選手とタイトルレースを争う川畑選手は、ベスト16の寺町邦彦選手に敗れシリーズランキングのトップ陥落となりました。

ベスト16は86同士(時田選手 vs 今村選手)の対決に! 最終戦ではさらなる活躍を期待したいマシンだ
ベスト16は86同士(時田選手 vs 今村選手)の対決に! 最終戦ではさらなる活躍を期待したいマシンだ
大会終了後には「夏祭り」が開催され、ファンやレースクイーン、ドライバーで花火を見るなど、つかの間のまったりタイムに
大会終了後には「夏祭り」が開催され、ファンやレースクイーン、ドライバーで花火を見るなど、つかの間のまったりタイムに

日曜日:D1GP シリーズ第6戦 ~MONSTERが吼えた!~

第6戦が行われた翌日曜日は曇り空だったものの、コースはドライ。土曜日よりも派手な走りが期待され、実際に予想を超える激しい1日でした。本戦前の練習走行では、今村選手がオーバースピードから激しくクラッシュするアクシデントもありましたが、幸運なことに外装破損だけだったため、応急処置を施して全車が本戦に臨むことができました。

応急処置をしてチームテントを出るOTG86と今村選手。駆動系・足回りにダメージがなかったのは幸運だった
応急処置をしてチームテントを出るOTG86と今村選手。駆動系・足回りにダメージがなかったのは幸運だった

単走決勝:切れ味のいいドリフトでFD3S・松井有紀夫選手が勝利!

ドライコンディションのためスピードレンジも上がり、より繊細かつ大胆な走りを要求された単走決勝。勝利を収めたのはロータリーエンジンを搭載するRX-7らしいクイックでキレの良い走りで98.94点を叩き出した「Team RE雨宮 GruppeM RX-7」の松井有紀夫選手でした。

「採点システム「DOSS」の傾向をチームと分析し、セッティングに反映させた結果。けど攻めきれなかった」と松井選手
「採点システム「DOSS」の傾向をチームと分析し、セッティングに反映させた結果。けど攻めきれなかった」と松井選手

2位には「DIXCEL TOYO TIRES SILVIA」の内海彰乃選手、3位にはロータリーエンジン搭載の初代ロードスターで、走を得意とする岩井照宣選手が入賞しました。

「ファイヤー!」のかけ声が板についた内海選手。燃える男の気合で午後の天気も保ったとか…?
「ファイヤー!」のかけ声が板についた内海選手。燃える男の気合で午後の天気も保ったとか…?

練習走行でのクラッシュの影響が心配された今村選手は15位。16位には今シーズン、マシントラブルやクラッシュで不運に泣かされていたソアラの使い手、上野高広選手が滑り込み、第2戦以来の追走進出を果たしました。

オーバーハングが長く重量級のソアラのドリフトは迫力満点。D1GPの歴史になくてはならない1台
オーバーハングが長く重量級のソアラのドリフトは迫力満点。D1GPの歴史になくてはならない1台
「いや~まいったねぇ」、日比野選手の表情は苦戦中ではあるが、決して悲観はしていない。来年に向けてマシンに大改良を施すとのこと
「いや~まいったねぇ」、日比野選手の表情は苦戦中ではあるが、決して悲観はしていない。来年に向けてマシンに大改良を施すとのこと

追走決勝:あわやの場面もあったが齋藤太吾選手が今シーズン初勝利!

土曜日の結果で今年のタイトル獲得が厳しい状況に立たされた齋藤選手は、昨日の鬱憤を晴らすかのように最初から全力全開。圧倒的なパワーでライバルを次々と蹴散らしていきました。

もう優勝以外にタイトルの可能性を残せない齋藤選手。最終戦も優勝が最低条件。お台場も全開勝負で臨む!
もう優勝以外にタイトルの可能性を残せない齋藤選手。最終戦も優勝が最低条件。お台場も全開勝負で臨む!
齋藤選手が今年一番肝を冷やした瞬間。飛び込んだ先がプレスエリアだったが幸いにも怪我人は出なかった
齋藤選手が今年一番肝を冷やした瞬間。飛び込んだ先がプレスエリアだったが幸いにも怪我人は出なかった

しかし、「D-MAX S15 SILVA」を駆る横井昌志選手と戦った準決勝では、横井選手がタイヤトラブルでコースアウトし、クラッシュ。齋藤選手もコースアウトしますが、ダメージを負うことなく決勝に勝ち上がりました。

決勝戦は齋藤選手と、横井選手のチームメイトである平島明選手との対決。齋藤選手が先行となった1本目は、コルベットの圧倒的な加速力で平島選手を引き離しますが、平島選手は冷静に終始、自分の走りに徹します。齋藤選手は、1コーナーでラインカットがあり減点に……。

前後を入れ替えての2本目は、齋藤選手が接触スレスレの走りで平島選手の懐に飛び込みました。直後、平島選手のマシンはエンジントラブルでストップ。ここで、齋藤選手の勝利が決定。3位には、横井選手を制した内海彰乃選手が入賞しました。内海選手の3位表彰台は、実に4年ぶり。

まさかのエンジントラブルで優勝を逃した平島選手。背中から悔しさが滲み出るが、ランキング3位
まさかのエンジントラブルで優勝を逃した平島選手。背中から悔しさが滲み出るが、ランキング3位
ベスト8では、内海選手 vs 川畑選手がサドンデスまでもつれ合う展開に。川畑選手のドライビングミスにより内海選手が勝利
ベスト8では、内海選手 vs 川畑選手がサドンデスまでもつれ合う展開に。川畑選手のドライビングミスにより内海選手が勝利
久々の表彰台で大暴れする内海選手(左)。最終戦でもタイトル争いを引っ掻き回してほしいところ
久々の表彰台で大暴れする内海選手(左)。最終戦でもタイトル争いを引っ掻き回してほしいところ

ドリフトの聖地、エビスサーキットだけあって、非常に見応えのある2連戦でした。今回の第6戦を終えた時点で、シリーズランキングの上位24台が、最終戦・お台場に臨むことができます。今シーズンは、多くのチームが新型マシンを導入したことで今までにない混戦模様となっていますから、最終戦も目が離せません!

(クリハラジュン+ノオト)

[ガズー編集部]

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