180km/hまで可能なクルマも。クルーズコントロールの設定上限が上がった背景とは?

みなさんは「クルーズコントロール」を使ったことがありますか? クルーズコントロールとは、一部のクルマに採用されている装備で、アクセルを踏まなくても高速道路で速度を保ってくれる仕掛けのこと。

最近は採用車種がどんどん増え、また速度を一定に保つだけでなく、前を走るクルマにあわせて自動的に速度を調整したり、渋滞時は完全に停止して停止状態を保持したりする機能をもつ「追従型クルーズコントロール(ACC=アダプティブクルーズコントロール)」も幅広く採用されていますよね。

追従型クルーズコントロールは、セットしてしまえば緊急時を除き、基本的にドライバーがアクセルやブレーキを操作して速度調整する必要がないので、自動運転の第一歩と言ってもいいもの。高速道路移動時の疲労を大幅に軽減してくれるほか、常に一定の車間距離をキープするので安全にも貢献し、アクセル操作のムラが減ることで燃費が良くなる場合もあります。まさにメリットだらけのシステムなのです。

設定上限速度180km/hの国産車も登場

そんなクルーズコントロール、実はこれまで日本向けの国産車は、設定上限速度が時速115km/hでした。しかしこの数値は法律で決まっているわけでなく、輸入車では180km/hやそれ以上(250km/hなんて言うクルマも!)のものも存在。日本の高速道路の法定最高速度は100km/hなので実用上は困らないのですが、輸入車のほうが使える範囲が広いという状況になっていたのです。そんなクルーズコントロールに、ちょっとした異変が起きたのがこの春。

今年3月に登場したレクサスLCの設定上限速度が、日本仕様の国産車として初めて180km/hに。トヨタ車としては、7月に登場したカムリが180km/hに設定されています。一気に速度リミッター作動域まで引き上げられたのだから驚きました。また、スバルでもレヴォーグやWRXがマイナーチェンジで135km/hまで引き上げられました。

設定上限速度が引き上げられた背景は?

では、どうしてこれまでの上限を超える車速設定のクルーズコントロールが次々と登場しているのでしょうか?

その背景にあるのは、何を隠そう高速道路の制限速度引き上げです。

2016年3月、警察庁が高速道路の制限速度を現在の100km/hから120km/hに引き上げることを認める方針を打ち出しました。今年度(2017年度)中に、まずは110km/hの区間が登場し、その後120km/hまで引き上げられる予定です。

すると困るのが従来のクルーズコントロール。115km/hが設定上限のままでは、120キkm/h区間では使いにくいシステムとなってしまいます。そこで、115km/hの上限を超えるクルーズコントロールが登場したというわけ。これまで日本の自動車メーカーと国土交通省による申し合わせで制限されていた115km/hの上限速度が、撤廃されたのです。それは日本で販売される国産車も、世界基準になったと言い換えてもいいでしょう。

「135km/hとか180km/hなんて速度を出したら制限速度を超えてしまう」と思う人もいるかもしれませんし、その速度で走ればもちろん違法です。しかし、それは海外の多くの国でも同じこと。たとえ法律で許されない範囲が含まれていても、機能として持つことは違法ではありません。世界を見ると、制限をかけて縛ってしまうのではなく、個人の自主性に任せるのが一般的な考え方というわけですね。

(文:工藤貴宏 編集:木谷宗義+ノオト)

[ガズー編集部]

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