九州北部豪雨被災地に軽自動車を寄付してきた【体験記】
実はここ1年、取材で2回ほど九州北部を訪れた筆者。現地で新しく知り合った方なども少なくありません。2017年7月初旬、九州北部を襲った集中豪雨のために何かできないか、と思っていた矢先、SNS上で呼びかけがあったのが、一般社団法人日本カーシェアリング協会による「軽自動車の寄付のお願い」でした。
- 寄付車に貼った日本カーシェアリング協会のロゴ。少しでも地域の皆さんが以前のような暮らしに戻るうえで役立ててもらえればうれしい
■寄付条件にぴったりのクルマと出会う
今回日本カーシェアリング協会が行った取り組みは、車検が3か月以上残っている軽自動車の寄付を募り、マイカーが流されてしまった人の暮らしの立て直しや地域の復興の一助にしてもらおうというものです。
この取り組みを知ったころ、大田区にある古いイタリア車フランス車専門店「アウトレーヴ」から代車を出してもらっていました。車検が1年ほど残る、16万キロの距離を走ってきたスバルのR2という軽自動車。小売りをしようにも、ちょっと距離が進みすぎていて、おそらく流通しないクルマ。「これを被災地に提供することはできないか?」と考え、アウトレーヴに寄付を打診してみたところ、「そういうことなら、あのクルマは提供しますよ」と快く了解をいただくことができました。
■積載車が災害派遣等従事車両に認定!
各所の了解を得たら、まずは日本カーシェアリング協会本部のある宮城県石巻市に、車検証や名義変更に必要な書類、ナンバープレートを送りました。今回、積載車が災害派遣等従事車両として認めていただけることになったため、その手続きも併せて行いました。
- 災害派遣従事車両の手続きは地元の川崎市多摩区役所で。かなりタイトなスケジュールにもかかわらず、区役所の方もかなり協力してくれた。写真は、行き帰り、区間ごとに1枚ずつ発行される証明書
災害派遣等従事車両とは、申請したルートで被災地に入ることを条件に、往復の高速道路料金が免除になるという制度です。今回は経費の完全持ち出しを覚悟していましたが、制度を利用することで、川崎から福岡県の朝倉インターまででかかる片道約30,000円弱の通行料金(中型トラック)が減免に。大変ありがたいことでした。
ただし、この制度は提出した予定と違う運行をすると、減免を利用できなくなります。実は直前の予定が押してしまい、東名の東京料金所を通過したのが申請した期限直前。かなりぎりぎりだったため、肝を冷やしました。
- 申請していた期限まで、あと6分というタイミングで通過。肝を冷やした
また、以前にもコラムで紹介した通り、筆者は積載車を持っています。
【買ってみた】クルマを載せる積載車を買って感じたメリット・デメリット
ナンバープレートに封印がない軽自動車は、車両ではなくナンバープレートを軽自動車検査協会に持ち込むことで名義変更ができるので、積載車に載せたまま、移動と並行して手続きを行うことができました。
■約1100kmを積載車で走破!
目的地までは、約1100kmの道のり。仮眠を取りながら走ったため、日本カーシェアリング協会の久留米市にある拠点へ到着したのは、あくる日の夜。山の中にあるバンガローのような場所を被災地カーシェアの活動拠点にしていました。そこで1泊泊めてもらい、翌朝、無事に軽自動車を下ろすことができました。
- 結局九州に入ったのは夕方。下関の壇ノ浦からさらに130kmほど走って目的地へ
■復興を動かすクルマの存在
今回クルマを寄付した一般社団法人日本カーシェアリング協会は、東日本大震災後に発足した団体です。主に、自動車を使った社会貢献活動をしています。
- 日本カーシェアリング協会の石渡さん。常に笑顔を絶やさずクルマを通しての社会貢献を考えている人だ。筆者が伺った際、九州水害被災地の業務をひとりで担当していた
福岡県久留米市にある協会の拠点・九州ベースで対応してくださった石渡賢大さんによると、以前かかわりのあった熊本大震災の被災者の方からもらった、大雨で仲間が困っているのでカーシェアをやって欲しいという要望がきっかけで、久留米市に拠点を設けることになったのだそうです。軽自動車を求めているのは、取り回しの良さや誰でも安心して使えるレベルのパワーがあるという理由から。非常時に使うクルマだからこそ、年配の方から小柄な女性でも運転しやすいという点は、大事な要素なのですね。
- クルマに協会のステッカーを貼る
私がクルマを届けた7月末の段階で、協会が石巻から持ち込んだクルマが11台。さらに今回の呼びかけで、+10台ほど集まっているとのこと。最初はなかなか認知が広がらなかったそうですが、プレスリリースがFacebook経由で拡散されたり、地方版のテレビや新聞で告知されたりしたことで、反響を得られるようになったそうです。
また石渡さんは、活動を通して「復興の動き出す瞬間にクルマが果たす役割は大きい」と感じると言います。ある程度、社会が動き出したあとも、継続して地域にあったカーシェアを運営できるよう、復興の進捗や地域の規模に応じて引き継いでいくことが望ましい、と話してくださいました。
- 現地に同じR2がもう1台あったので記念撮影。石渡さんにR2を引き渡すとき、車体に触れながら、思わず「しっかり働けよ」と話しかけていた
クルマは人々が明日に向かって動くための大切なきっかけ、活力にほかなりません。今回、自分でクルマを届けることで、多く発見やご縁を実感することができました。
(取材・文:中込健太郎 編集:ミノシマタカコ+ノオト)
[ガズー編集部]
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