【WEC第7戦】フェラーリやポルシェが走る「LM-GTEクラス」に注目

10月14(土)~15日(日)、富士スピードウェイにて「2017 FIA 世界耐久選手権(WEC) 第7戦 富士6時間耐久レース」が行われました。日本では、TOYOTA GAZOO RacingのTS050 HYBRIDが1-2フィニッシュを飾ったWECのトップカテゴリー「LMP-1 H」に話題が集まりましたが、市販車をベースにしたカテゴリー「LM-GTE Pro/Am」の戦いも注目すべきもの。むしろ、量産車ベースのマシンが長時間レースでしのぎを削るこのカテゴリーにこそ、耐久レースの真髄があるともいえます。

左上:ポルシェ911RSR、右上:フェラーリ488GTE
左下:フォードGT、右下:アストンマーチン・ヴァンテージ

「LM-GTE Pro/Am」とはどんなカテゴリーなのか?

LM-GTEマシンは、日本のSUPER GTのGT300クラスに参戦しているFIA-GT3マシンによく似ています。簡単にLM-GTEとFIA-GT3(GT3)の車両規定を比較してみましょう。

<エンジンパワー>
LM-GTE:約500馬力
FIA-GT3:550馬力~600馬力

<電子アシスト>
LM-GTE:ホイールスピンを抑制するTCS(トラクションコントロールシステム)
FIA-GT3:TCSに加えて、ABSの装着もOK

<ボディ>
LM-GTE:レース専用設計のエアロパーツを装着可能。足回りの形状も変更可
FIA-GT3:レース専用設計のエアロパーツを装着可能。足回りの形状変更は不可

LM-GTEのボディは、ボディパーツが簡単かつ素早く交換可能になっている。耐久レース専用マシンならではの設計

LM-GTEのマシンは、足回りなど改造範囲がFIA-GT3マシンより広い一方、電子デバイスの使用制限が厳しいという特徴があります。つまり、ドライバーのスキルがより問われるカテゴリーなのです。

「LM-GTE」のあとに続く「Pro/Am」は、プロフェッショナルクラスとアマチュアクラスを示します。Proクラスは、メーカー直系のチームがエントリーし、専属ドライバーが最新型マシンで参戦。Amクラスは、Proクラスの年式落ち車両で戦われる、プライベートチームが参戦するクラスです。

Proクラスを走るポルシェは、最新の911RSR。オレンジゼッケンのAmクラスは、同じ911RSRだが昨年のProクラスのマシン

Amクラスには、エントリーできるドライバーにも制限があります。1位チーム2~3名のうち、トップカテゴリーでの優勝経験など、実績のあるドライバー(ゴールド、プラチナという格付けされている)は1名しか登録できないことになっています。ちなみに、トヨタのエースドライバーとして参戦している小林可夢偉選手は、「プラチナドライバー」に格付けされています。

アタックのタイミングで明暗が別れた予選

予選が行われた土曜日は、雨と霧というコンディション。Proクラスのポールポジションを獲得したのは、ポルシェ911RSRを駆る91号車「ポルシェGTチーム(R.リエツ/F.マコヴィッキィ組)」でした。Amクラスは、フェラーリ488GTE 61号車「クリアウォーターレーシング(W.モク/澤圭太/M.グリフィン)」がトップに。どちらも雨でコースコンディションが悪化していく中、早いタイミングでアタックしたことが吉と出たようです。

天候に支配されてしまった決勝

翌日曜日の決勝レースは、雨が降り続いてセーフティーカー先導でのスタートなりました。序盤はポルシェ91号車、同じポルシェGTチームで予選5番手の92号車(M.クリステンセン/K.エストル組)の安定した走りが目立ちました。予選日よりも雨脚が強く、非常に滑りやすい中でのレースで、ダンロップコーナーではオーバーランするGTEマシンも……。

そしてスタートから1時間が経過したあたりで、ホームストレートの濃霧による視界不良から赤旗中断に。40分後に再開するものの、約2時間が経過したあたりから再び視界不良でセーフティーカーランとなり、各車ピットイン。この間に51号車、フェラーリ488GT3「AFコルセ(カラド/P.グイディ組)」がクラストップに。予選2位スタートだった67号車、フォードGT「フォード チップ・ガナッシUK(プリオール/ティンクネル組)」は、ピットレーンでの赤信号無視によりペナルティで最下位に。

67号車、フォードGTはペナルティののち、コースアウトでクラッシュしてしまう……

その後もLMP2クラスのクラッシュなどで、スタートから3時間の間にセーフティーカーが5度も入る事態に。5度目のセーフティーカーが解除された後に2位を走行していたポルシェ92号車と、ペナルティで周回遅れになっていたフォード67号車が接触。67号車は次の周回の1コーナーでコースアウト、クラッシュしてしまいました。

Proクラス優勝は、セーフティーカーランを巧みに利用したフェラーリ51号車

そして4時間半が経過したところで濃霧による2回目の赤旗中断。そのまま天候は回復せずにレース終了となりました。Amクラス優勝は、フェラーリ488GTE 54号車「スピリットオブレース」がシーズン初勝利を獲得!

今回は天候によってレースそのものがあまり成立せずに終わってしまったので、エントラントにとってもファンにとっても不完全燃焼な感がありました。本来であれば、LMPクラス以上に熾烈なレースが多いLM-GTEクラス。来シーズンでは、そんなレース展開を期待したいところですね。

(取材・文・写真:クリハラジュン、編集:木谷宗義+ノオト)

[ガズー編集部]