少し先の眠気も予測! ドライバーの快適性を重視したパナソニックの「眠気制御技術」とは

自動ブレーキシステムなど、安全運転を支援する技術開発がますます進む昨今。そんななか、居眠り運転の抑制に貢献するため、パナソニック オートモーティブ&インダストリアルシステムズ社が開発した「眠気制御技術」が、いま注目されています。

従来の眠気検知システムとはどう違うのでしょう。また、どのようにしてドライバーの眠気を制御するのでしょうか。そのメカニズムと今後の展開について取材しました。

■現在の眠気だけでなく「これからの眠気」も予測

これまでにも、眠気を検知して居眠り運転を防ぐ取り組みはおこなわれてきました。そうした従来の技術との違いは、現時点での眠気だけでなく、少し先の眠気の予測を可能にしたことにあります。

前方に取り付けたカメラにより撮影した画像で、ドライバーの目の瞬きや表情を読み取り、自覚のない浅い眠気まで検知。さらに、独自の赤外線アレイセンサを使って、体からの放熱量を非接触で計測します。その結果や周囲の明るさから、現時点での眠気がどのように推移していくかを予測するというのです。

コックピット搭載イメージ(出典:パナソニック)

同社によると、最も苦労したのは「着衣量などの環境に左右されないシステムを構築し、個人差を低減すること」だったそう。

一般的に、寒くて明るい環境であれば眠くなりにくく、暖かくて薄暗い環境だと眠くなりやすいことが知られています。ただし、厚着をしていれば寒さを感じにくいなど、同じ環境下でも服装によって左右されるため、周囲の温度から眠気を推定することは困難だったのです。

その問題を解決するカギとなったのが、ヒトの「放熱量」。千葉大学との共同研究で、人体からの放熱量が、所定時間を経過した後の眠気と関係することを突き止め、開発に弾みをつけました。

■ポイントは、ドライバーへの「さりげない刺激」による覚醒

もうひとつ注目したいのが、「ドライバーの快適性」を追求した技術であることです。はじめから大きなアラーム音でドライバーの覚醒を促すのではなく、まずはさりげない刺激で働きかけます。

例えば、現時点で眠気を感じていなくても、これから眠気が高まると予測される場合は、冷風を出してドライバーの覚醒にアプローチします。とはいえ、体が冷えすぎると快適性を損なってしまいます。

そこで、奈良女子大学との共同研究で、赤外線アレイセンサで得られた画像から、ドライバーの温冷感(暑い寒いの感覚)を推定する温冷感推定技術を開発。体が冷えすぎていると判断した場合は、空調ではなく例えばオーディオの音量を上げるなど、別の手段に切り替えることで覚醒を促します。

赤外線アレイセンサ画像を用いた同一環境下での温冷感推定(出典:パナソニック)

つまり、少し先の眠気を予測することでよりソフトなアプローチが可能となり、ドライバーの快適さにつながるというわけです。

眠気制御技術の概念図(出典:パナソニック)

■「感情・体調センシング技術」との組み合わせで、さらに精度を磨く

実用化に向けた取り組みが進む一方で、さらなる技術の向上を目指している同社。睡眠時間など、より細かな情報を合わせることで、さらに眠気予測の精度を上げていきたいといいます。

また、「感情・体調センシング技術」を組み合わせ、ドライバーの状態をより正確に把握して運転時のストレスを軽減させることも視野に入れているのだそう。この感情・体調センシング技術は、10月初旬に開催された「CEATEC JAPAN 2017」でも披露されたもの。将来的には、クルマだけでなく、オフィスや塾など覚醒状態の維持が必要とされる場所への応用も期待されています。

自動運転技術が発展するなかで、こうしたドライバーモニター技術の重要性はますます高まることが予想されます。今後のさらなる展開に注目していきたいですね。

(取材・文:藤田幸恵 編集:ミノシマタカコ+ノオト)

[ガズー編集部]