技術者の祭典「技能五輪」で見せる若きクルマ技能者たちの腕!

世間では、2020年開催予定の東京五輪まで1000日を切ったと最近では話題になり、各地でイベントも開催されるなど盛り上がりをみせています。五輪はスポーツ選手の祭典ですが、若き技能者の祭典といわれる技能五輪という大会が、年2回開催されているのはご存知でしょうか? その大会にはクルマに関わる種目もあります。今回は、その技能五輪の全国大会の運営にあたっている中央職業能力開発協会(JAVADA)の技能振興部技能課課長・佐藤克司さんに話を聞きました。

大会では複数の会場で、機械に関することだけではなく造園や洋菓子製造など、幅広いものづくりの競技がおこなわれる。

技能五輪とは原則23歳以下の若い技術者がものづくりを競う大会で、毎年全国から企業の社員や工業系高等学校生、専門学校生などが参加します。種目は幅広く、電子技術、構造物鉄鋼、造園などから洋菓子製造に至るまで全42種目があり、クルマ関係の種目としては自動車板金、塗装、自動車工などがあります。世界大会は2年に一度、奇数年に開催され、今年の10月に開催された大会では、アラブ首長国連邦のアブダビが会場となっていました。第1回大会は1950年に開催、日本は1962年から参加し、現在、世界大会を運営する「ワールドスキルズインターナショナル」には75の国と地域が加盟しています。

自動車整備工の競技風景

技能五輪とは?

佐藤さんによると、偶数年の全国大会は、世界大会の選考も兼ねていますが、今年は全国大会のみとのこと。今回は栃木県が会場で競技参加者数は約1300人、来場者数はなんとのべ15万人を予想しているそうで、前回の山形大会では計18万人もの来場があったのこと。ちなみに、今年のロックミュージックの祭典「フジロックフェスティバル2017」の、のべ来場者数は12万5000人。この数字だけでも、かなり規模の大きい大会だということがわかります。

有名メーカーも熱心に参戦! クルマ関連種目

クルマ関連の種目では、主にトヨタ自動車や日産自動車、マツダなどが参加に熱心で、特に一枚の鋼鈑から、ルールで限られた工具だけを使い、曲線形状の商品に仕上げる自動車板金種目は、ここ十年以上、トヨタとマツダが激しい上位争いをしており、なかには世界大会で金メダルを獲得した選手もいるそうです。エンジンや車両の分解・組み立てなどで迅速さと正確さを競う自動車工に関しては日産が強豪で、毎年のように上位を独占しているとのこと。

自動車板金競技に挑むトヨタとマツダの選手。

トヨタなどのクルマ関連企業の強さの秘密については、「大企業では、高校生に相当する年齢から訓練を始めている方もいます。」と佐藤さん。これらの企業では、技能者を育成する専門の訓練機関があり、中には中卒で入る人もいます。企業訓練機関出身で、最近、有名な人物というと河合満トヨタ自動車副社長でしょうか。河合副社長も中学校卒業後、こういった訓練機関で技術を学んだひとりです。

自動車工競技でエンジンを整備する選手。真剣な様子が伝わる。

なお、佐藤さんによると、大会で特に賞金などは発生しないそうで、あくまで将来日本の技術を支える若い技能者が自身の技術を競う場のようです。企業では、大会で優秀な成績を残した選手が表彰されることはあるとのことでした。

今年の開催は11月25、26日の2日間

今年の全国技能五輪大会は栃木県・宇都宮市を中心に「とちぎ技能五輪・アビリンピック 2017」という大会名で本戦は11月25、26日の2日間に渡りおこなわれます。一般来場者の入場料は無料で、クルマ好きな人は自動車工などが、エンジンなどを分解するので、「こうなっているのか」というのがわかりやすく楽しめるかもしれませんとのことでした。

自動車板金では複雑な部品をほぼ手作業で作る

個人的には自動車板金もオススメしたいです。モーターショーで発表されるコンセプトカーやレース用のクルマは基本一点物で、金型が多用できないため、こういった技術を使って作られています。ただの鉄の板が形になっていくのは面白いかもしれません。もしかしたら会場でハンマーを片手に成形していた選手が未来の人気車開発に関わっているなんてこともあるかもしれません。気になった人は一度足を運んでみてはどうでしょうか?

(取材・文:斎藤雅道 編集:ミノシマタカコ+ノオト)

[ガズー編集部]

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