幅17mの迫力大画面で見守る! NEXCO東日本の道路管制センターに行ってきた

高速道路の安全を見守るため、24時間休むことなく稼働しているのが「道路管制センター」。なかでも国内最大規模を誇るのが、埼玉県さいたま市にあるNEXCO東日本 関東支社の道路管制センターです。いったいどのような業務を行っているのか、現場を見学させていただきました。
ご案内いただいたのは、東日本高速道路株式会社 関東支社 管理事業部 交通管理課の髙橋直成さんと松本真由子さんです。

■情報を集めて動かす「ハブ」の役割

――こちらの道路管制センターは、いつから稼働しているのでしょうか?

2016年3月にリニューアルオープンしました。NEXCO東日本の道路管制センターは4つに分かれて稼働しており、北海道支社は札幌市、東北支社は仙台市、新潟支社は新潟市、関東支社はさいたま市にあります。
管理している距離は全体で3,871km、そのうち関東支社では約35%(平成29年4月1日現在)を受け持っています。

――中ではどのような業務を行っているのでしょうか?

センター内は「交通管制部門」「施設制御部門」の2つに分かれています。
交通管制部門では、交通の流れや状況を年中無休で見守っています。事故などの異常事態をすばやく処理し、必要に応じて消防車、救急車などの出動要請や関連自治体への連絡を行います。
交通管制部門の役割は以下の3つです。

  • 集める
    非常電話、道路緊急ダイヤル(#9910)、料金所、巡回車などから情報を集め、すべて管制センターで集約します。
  • 知らせる
    落下物や故障車があった場合には、道路情報板に「この先○○km 故障車あり」といった表示を流したり、カーナビやサービスエリアの情報端末に送ったりしてドライバーにお知らせします。
  • 動かす
    交通事故の場合は、必要に応じて警察、救急、消防へ緊急車両を要請します。故障車の場合は近くにいるパトロールカーに連絡して指示を出し、動けなくなったクルマはレッカー車を手配して移動させます。

■落下物と故障で8割を占める

――ディスプレイの両サイドと下のほうに、映像が流れていますね

監視カメラの映像をローテーションで流しています。もし捕捉できる場所で事故が起きた場合は、固定表示も可能です。あとはNHKも映像だけ流しており、地震など緊急情報の入手に活用しています。

高さ5.5m、幅17mの大型ディスプレイ。インターチェンジ、トンネル、ジャンクションなどが表示されており、首都高やNEXCO中日本とも情報を連携している
高さ5.5m、幅17mの大型ディスプレイ。インターチェンジ、トンネル、ジャンクションなどが表示されており、首都高やNEXCO中日本とも情報を連携している

――どれくらいの件数を処理しているのですか?

1年間で取り扱う異常事象等の件数は約10万件で、1日あたり260~270件となっています。これは日本各地にある高速道路の管制センターでもっとも多い件数です。
内訳は落下物が45%、故障車が33%(平成28年度)となっており、落下物と故障で約8割を占めています。その他、事故、逆走、人の立ち入りなどがあります。

――どういう落下物が多いのでしょうか?

タイヤや木材など、積み荷が落ちるケースがほとんどです。珍しいものとしては、仮設トイレが落ちていたこともあります。交通管理隊が現場に急行し回収しますが、命がけの作業とも言えます。

■建物は耐震構造、屋上にはヘリポートも

――もう一つの「施設制御部門」ではどのような処理を?

道路情報板、道路交通情報通信システム(VICS)、カメラなどを監視しており、故障が発生した場合には速やかに復旧対応を行います。
もしトンネル内で車両火災が発生したら、ラジオや拡声装置で避難誘導を実施します。同時に入口の情報板で「進入禁止」のマークをつけたり、水を噴霧したり、滞留した煙を外に排出したりして被害の拡大を防ぎます。

――屋上にはヘリポートもあるそうですね。どのような目的で?

目的としては2つあります。1つは災害時の活用。人員輸送や状況把握の拠点となるべく、中型ヘリが離着陸可能となっています。
もう1つは渋滞調査です。ゴールデンウイークやお盆などの交通混雑期にヘリを飛ばすこともあります。

――その他、この施設ならではの特徴はありますか?

もし大規模災害が発生した場合、管制センターの機能が停止すると大変なことになってしまいます。そのため、建物は首都直下地震に対応した耐震基準を採用しています。また河川の氾濫による浸水対策として、1階フロアを1.6mかさ上げしています。
もし広域にわたる災害が発生した場合、他の支社とのバックアップを可能とするシステムも構築中です。例えば仙台市にある東北支社が被災して機能が停止した場合、関東支社でバックアップします。

普段あまり意識せず走行している高速道路ですが、道路管制センターが年中無休で稼働しているからこそ安全、快適にドライブできるのですね。

もし高速道路で落下物や故障車などの異常事態が発生した場合は、道路緊急ダイヤル(#9910)を使って速やかに通報しましょう。

(取材・文・写真:村中貴士 編集:ミノシマタカコ+ノオト)

取材協力