【L1 RALLY in 恵那 2017】日本初の女性ドライバーだけで行われたラリー
11月25日(土)~26日(日)、岐阜県恵那(えな)市にて、女性ドライバーだけで行われる日本初のラリー「L1 RALLY in 恵那 2017」が開催されました。この大会は、今年発足した女性だけのモータースポーツシリーズ”L1シリーズ”の1戦として位置づけられ、その名の通り参加資格はドライバーが女性限定であること(コ・ドライバーは男性の参加も認められる)。今大会は、39台ものエントリーがありました。
歴史ある町並みの「岩村本通り」からラリーはスタート
大会当日は穏やかな秋晴れに恵まれ、恵那市岩村町の歴史ある街並みで行われたセレモニアルスタートには大勢のギャラリーが集まり、日本初の女性だけのラリーは華やかにスタートしました。ちなみにこちらは国の重要伝統的建造物群保存地区にも指定されている貴重な通りで、江戸時代から続くその佇まいの中をゆっくりとスタートするラリーカーは、見応えのあるものです。
- セレモニアルスタートには大会組織委員長 勝田照夫氏、大会名誉会長 衆議院議員 古屋圭司氏、大会会長 恵那市長 小坂喬峰氏、大会副会長 FIA/JAF Women in Motorsport日本代表委員 井原慶子氏が参加した
舞台となった岩村の地は、戦国時代末期に女城主が治めていたという歴史を持ち、また我が国の女子教育の先駆者で、のちに実践女子学園を創設する下田歌子氏の出身地でもある場所。L1ラリースタートの地としてふさわしい場所でもあります。
- 国の重要伝統的建造物群保存地区に指定されている岩村本通りをスタートするラリーカー
L1 RALLY 恵那、初代女王は今橋彩佳選手!
参加車両は排気量が1500ccを超える「L1-2クラス」と1500cc以下の「L1-1クラス」の2つのクラスにわけられ、参加者は全日本ラリーも数多く経験したベテラン選手もいればレース経験は豊富なもののラリーは初めての選手、またモータースポーツへの参加がほぼ初めてという選手までさまざま。4本のスペシャルステージ(SS:競技区間 総距離15.9km)を含むコース総距離92.8kmで競われました。
- 競技はオールターマックのスペシャルステージで行われた(写真はリエゾン区間)
そして、この「L1 RALLY in 恵那 2017」を制したのは、トヨタ86を駆る今橋彩佳選手と国内外のラリー参戦経験も豊富なコ・ドライバー 保井隆宏選手のコンビ。今橋選手は、フォーミュラーレースであるFIA-F4や86/BRZレースなどで活躍する経験豊富なレーシングドライバーです。全日本ラリー選手権への参戦経験もあるものの、今大会がラリー初完走にしてうれしい初の総合優勝となりました。
- L1 RALLY、初代女王は今橋彩佳選手。「現在行っているレース活動とともに、今後はラリーにも参戦してきたい」と語った
- コ・ドライバーは全日本ラリー選手権を始め国内外のさまざまな舞台で活躍する保井隆宏選手
1500cc以下のマシンで競うL1-1クラスは、ラリー経験豊富な栗原智子/山田真記子組がクラス優勝。栗原選手はフィニッシュセレモニーで「働いていても母親であっても女性のラリー参戦は十分できます」とアピールしました。なお栗原/山田組は、小さなホンダ・シティで参戦し、2.0Lクラスのマシンや4WDターボマシンに混じって総合でも6位と見事な結果を残しました。
- L1-1クラスは栗原智子/山田真記子組がクラス優勝
- L1-1クラスを制したのは小さなホンダ・シティ(GA2)だった
ラリー未経験者やモータースポーツ未経験者の参加も多かった
今大会は、SSの距離が短いターマック(舗装路)ラリーということもあったせいか、ラリー未経験者の参戦も多く見られました。トヨタ・ヴィッツで参加した岩岡万梨恵/関崎祐美子ペアは、2人ともレース経験は十分ながらともにラリーは初めて。レースでは自らステアリングを握る関崎選手は、「実はラリーのコ・ドライバーもやってみたかった」とのことで、コースを事前試走(レッキという)しながら作るペースノートもネットで調べたりしながら、岩岡選手と作り上げたそうです。
- ラリー初挑戦の岩岡万梨恵//関崎祐美子組は走行終了後、「お腹が空いた」と即おやつタイム
「コ・ドライバーの読み上げる指示により、確実に有視界走行より速く走れることが実感できるラリーは楽しかった」と、岩岡選手。コ・ドライバーを務めた関崎選手は、「読み上げる指示を信じて走ってくれたのがうれしい」と語っていました。2人1組で競技を行うラリーには、岩岡・選手両選手ともに「また参加したい」とのことです。
- 隣町 、中津川より参加した代田家の女性3人組_+自動車ライターのマリオ高野氏。朝から和気あいあい
オレンジと白、2台のGC型スバル・インプレッサで参戦した2組は、モータースポーツ参戦自体が初。オレンジのインプレッサは、代田翔子/代田真欧組、白のインプレッサは代田睦美/高野博善組。実は、真欧さんは睦美さんの娘さん、翔子さんは睦美さんの息子さんの奥さん。つまり、オレンジは義理の姉妹コンビ、白のドライバーとオレンジのドライバーは嫁姑対決という構図。そこに自動車ライターの高野博善(マリオ高野)さんが助っ人(?)として加わったのがこの隣町、中津川から参加した和気あいあいチームです。
スタート前から、見ている方がほのぼのしてしまいそうな仲のよさは結果にも現れ、39台中オレンジが38位、白が39位と仲良くゴール。初参戦ながら、後半では2台とも競技にもスピードにも慣れたようでペースアップを果たし、「次のチャンスがあればもっと速く走れそう」と、希望の光も見えていたようです。
舞台となった恵那市岩村町にも注目!
参加したすべてのクルマが無事完走した「L1 RALLY in 恵那 2017」。その舞台となった恵那市の岩村町は歴史のある城下町。サービスパークのそばの古い町並みには、当時の面影を残す商家や旧家が並んでいて、とても魅力的。町並みの中には、古民家を改装した宿もありますので宿泊も可能です。
- 昔ながらの風情をそのまま今に伝える岩村本通りは国の重要伝統的建造物群保存地区
- 岩村本通りの藤時屋(とうじや)は寛政12年に建てられた建物を利用したという町家民宿。額装されている古いポスターの一つひとつが歴史を感じさせてくれる貴重なもの
ちなみにこの岩村町の名物のひと一つが、意外なことに「カステラ」だそうです。今から200年以上前に、当時の岩村藩の御殿医が、長崎でオランダ人から習ったものだそうで、その後独自の進化をした長崎カステラに対し、この町のカステラは一切その製法を変えず、当時の味と姿を残しているそうです。また、隣町の中津川とともに恵那の名物でもある「栗きんとん」もおいしい季節です。
- 日本に伝来した当時の製法で今も手作りされている寛政8年創業、松浦軒本店の「カステーラ」
市長自ら「L1 RALLY in 恵那を来年も開催する」と宣言
スペシャルステージの観戦場所は今回設定されておらず、女性たちが本気で競う姿を見られなかったのは少々残念でした。しかし、「L1 RALLY in 恵那を来年も開催する」と、恵那市長の小坂喬峰氏が閉会式で高らかに宣言していたのは朗報です。
- 大会会長を務める恵那市長の小坂喬峰氏(写真中央)は閉会式にて来年もこのラリーを継続する意欲を見せた
- ベテランも初心者も全車完走。走り終えた後のこの笑顔にL1 RALLYの魅力が詰まっているようだ
「女城主の里」と呼ばれる岩村で、ラリーの世界に足を踏み入れた女性やここで大きくステップアップを果たした女性が、全日本ラリーやWRC(世界ラリー選手権)へと大きく羽ばくようになれば、ここがFIA(国際自動車連盟)やJAF(日本自動車連盟)、一般社団法人WOMEN IN MOTORSPORTSの目指す、女性のモータースポーツ活動実現における中心地のひとつとなるかもしれません。
(取材・文・写真:高橋学、編集:木谷宗義+ノオト)
[ガズー編集部]
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