従来よりも長持ち!? 最新スタッドレスタイヤの進化が凄い

寒い地域に住んでいる人なら、もうスタッドレスタイヤへの履き替えは済んでいることでしょう。普段、あまり雪の降らない東京などに住んでいる人の中には、今まさにスタッドレスタイヤを購入しようと悩んでいる人もいるかもしれませんね。

今シーズンは、スタッドレスタイヤの新作ラッシュ。ブリヂストンの「ブリザック VRX2」をはじめヨコハマゴムの「アイスガード6」、ミシュラン「X-ICE3+」、グッドイヤーの「アイスナビ7」、そしてハイト系専用を謳うトーヨーの「ウインタートランパスTX」と新作スタッドレスタイヤがたくさん登場しました。今日は、そんなスタッドレスタイヤの最新トレンドを紹介しましょう。

どの新作タイヤにも共通するのは、「氷上ブレーキ性能」の向上

黒くて丸い塊で、見た目には新しくなったことが実感しにくいスタッドレスタイヤ。だから新商品が登場しても「果たして従来品と比べて進化しているのか?」と、疑問に感じている人もいるかもしれません。しかし、実は大幅に進化しているのです。

どのメーカーのスタッドレスタイヤにも共通している最大の進化ポイントは、凍結した路面でのブレーキ性能。日本の冬の道において、もっとも滑りやすい場所は凍ったところです。しかも、氷の表面がわずかに溶けることもある日本の温度では、外国に比べて特に氷が滑りやすいのです。だから、日本メーカー製や日本向けに開発された海外メーカー製のスタッドレスタイヤはまず、もっとも滑りやすい氷の上で、「いかにクルマをしっかり停止させられるか?」を念頭に開発しているんですよ。

多くのユーザーは、氷の上でブレーキをかけますよね。そこでしっかり性能が高まっているのが新作タイヤの進化。スタッドレスタイヤは、夏タイヤ(ノーマルタイヤ)と違って頻繁に限界性能を実感することになるので、氷の上でのグリップ性能の高さはとても重要なのです。

近年、タイヤの世界は計測技術やシミュレーション技術が飛躍的に高まったおかげで、ゴムの質など化学的分野が著しく進化しました。その結果、新作タイヤはもっとも過酷な路面状況である氷の上でのブレーキ性能を高め、停止距離を縮められたというわけ。

たとえばヨコハマゴムの新作「アイスガード6」は、氷の上において先代に比べ約15%も短い距離で止まれます。停止距離を縮めること、それはすなわち事故を起こすリスクを減らせるということですよね。新しいタイヤは安全性が上がっていると断言していいでしょう。

舗装路での安定感も増している

しかし、進化はそれだけではありません。ここ数年の大きなトレンドは、舗装路での性能向上。スタッドレスタイヤで舗装路を走ると、夏タイヤに比べてグニャリとした感覚を覚える人も多いかもしれません。その理由は、雪や氷の路面に対応するためにゴムが柔らかく作られているからです。

しかし最新スタッドレスタイヤの多くは、舗装路を走っても以前ほどフワフワした感じを実感しなくなりました。だから運転していて安心感が違います。舗装路の運転感覚向上も各銘柄に共通する、最近特に感じられる進化ですね。また、走行時に発生する音も静かになっている傾向で、たとえばブリヂストンの「ブリザックVRX2」は、従来品に対して騒音エネルギーが31%低減していると発表しています。

非降雪地帯では、スタッドレスタイヤを履いていても、実際には舗装路を走ることのほうが多いかもしれません。そんな人でも、新しいスタッドレスタイヤは使いやすくなっているというわけです。

最大の欠点だったウェット路面も走りが進化

実は、スタッドレスタイヤの最大の欠点は、濡れた舗装路でグリップが低下しがちなこと。そこで、各社とも安全面を考えて趣向を凝らした対策を投入。以前に比べると、雨の日の急ブレーキでも安心できるようになりました。

たとえばヨコハマゴムの「アイスガード6」は、濡れた舗装路面で急ブレーキをかけた際の停止距離が、従来より5%短いそうです。これも安全に直結する進化ですね。

磨耗やゴムの劣化を防ぎ、性能が長持ちするように

スタッドレスタイヤは摩耗しやすく、またゴムの経年劣化が凍結路面などでの走行性能を落としてしまうため、夏タイヤに比べると寿命の短い製品です。しかし近年、摩耗やゴムの劣化を抑える技術も進化。最新スタッドレスタイヤは「従来品よりも1シーズン長く使える」と説明する銘柄もたくさんありました。これもうれしいですよね。

SUVやミニバン用のタイヤは何が違う?

ところで、スタッドレスタイヤは一般的な乗用車用銘柄のほかにSUV用やミニバンなどに適した「背の高いクルマ用」も見かけます。それらのメリットはどこにあるのでしょうか?

背の高いクルマは重心が高く、曲がるときのふらつきが大きく感じる傾向があります。そこで、タイヤ側面を硬く設計することで、フラつきを減らして快適な走りを実現。またSUV用の銘柄には、乗用車用よりも深い雪でも走れるように作られているものもあります。スタッドレスタイヤも、愛車の車両特性に合わせて作られたタイヤを選ぶべきでしょう。

というわけで、実は新作が登場するたびに着実に進化している「スタッドレスタイヤ」。これから買おうというならば、ややリーズナブルに売られている従来品よりも、進化している最新モデルを強く推奨します。また、タイヤには寿命があるので長くても4シーズン履いたら、次のシーズンは新調するよう心がけましょう。

溝がまだ残っていても、劣化して硬くなったゴムは氷の上でしっかりと路面を捉えることができず、肝心なときに止まれなくて不幸なアクシデントを起こすかもしれません。そうならないよう、スタッドレスタイヤは早めに買い換えるべきです。ちなみに、雪道を夏タイヤ(チェーン装着なし)で走るのは違法で交通取り締まりの対象です。知っていました?

(文:工藤貴宏 編集:木谷宗義+ノオト)