どうやるの? 大型車のタイヤ交換・チェーン交換
冬本番前、積雪地での大仕事といえば、クルマのタイヤ交換。普通乗用車であっても、いつどのタイミングでするか、自分でするか、プロに頼むか……と悩みどころでしょう。では、トラック、クレーン車等の大型車の場合はどうでしょうか? 札幌西タイヤセンター株式会社 常務取締役 門脇利幸さん、サービス部長 杉森悟さんに、作業を見せていただきながらお伺いしました。
自分の肩先くらいまである巨大タイヤを転がして
- 大型車が余裕で2台入る構内
「今日は大きいの、入ってますよー!」
案内された作業スペースには、移動式の巨大クレーンがどどーんとありました。
――これは自分で車体を上げているのですか?
「このタイプは工事現場でも自分の車体のバランスをとるためのジャッキがついていますので、それで機体を持ち上げています。まずは、乗用車と同じくタイヤを1個1個はずしていきます」
「はずしたタイヤは、タイヤチェンジャーまで移動します」
タイヤの直径は120~130㎝。155㎝の筆者の目線くらいの大きさです。大きい!! 作業している方でもご自分の肩先くらいにはなります。
――このタイヤで何㎏くらいあるんですか?
「だいたい500㎏くらいですね。丸くて転がせるから移動できるんです。倒れたらつぶされちゃいますよ」
「まずは、タイヤチェンジャーにホイールの中央を固定して夏タイヤをはずします」
- 表側のタイヤとホイールを固定している部品を、接している部分の隙間に器具を差し込んではずす
- ホイールのみになった状態
「スタッドレスタイヤをホイールにはめこんでいきます。固定後はタイヤとホイールをなじませるための微調整を行います。すべてを入れ替えしたあと、車体に取り付けます」
- ホイールに固定したスタッドレスタイヤに空気を送りこんでホイールとタイヤをなじませるための微調整
――交換の要領は基本的には乗用車と変わらないのですね
「そうですね。車体やタイヤが大きいことと、専用の機械で作業することの他は同じです。ただし、機械は押したり引いたりするだけで、半分以上は手作業ですので、プロの技術が必要となってきます。以前、チューブ入りだった頃に比べると作業は楽になっていますね。チューブだけでも20~30㎏あって、それをホイールからはずしたあとに引き抜いたり入れたりしましたので。かなりの重労働でした」
――クレーン車はジャッキ付きでしたが、トラック等のジャッキはどんなものを使いますか?
「こちらの作業場構内には、常設のジャッキがあります。また、5t、35tと持ち上げられる持ち運びできるジャッキもあります」
- 作業場構内のジャッキ
- 本体が長い5tジャッキ
- 35tジャッキは円筒部分が油圧で垂直に上がるので、小ぶりだが力持ち
大型車が出先でパンクしたらどうする!?
――大型車が移動中にパンクした場合はどうするのですか?
「後ろタイヤのパンクの場合は、ゆっくり、そーっと走って、こちらまで移動してきてもらい対処します。前タイヤの場合は、クルマ自体を動かすことができないので、出張して修理します。遠いところで近くに協力店がある場合はそちらにお願いすることもありますが」
- 出張用のサービスカー
- タイヤチェンジャーやジャッキ等、必要な装備がすべて積み込まれている
――どの辺りまで行かれるのですか?
「北は旭川市、南は室蘭市辺りまでは行きますね。運転手さんの時間や料金の許す範囲内であればどこまでも行きます」
パンクの原因もチェーンの巻き方も……大きくても小さくても意外に同じ
――溝もゴムも触った感じはがっちりゴツイですが、タイヤの耐久年数はどのくらいなんですか?
「走行距離によりますね。長距離を走るクルマのタイヤは1シーズンでダメになりますし、同じ現場でしばらく作業をするようなタイプのクルマでしたら、2~3年もつ場合もあります」
「タイヤのトラブルについては乗用車でもトラックでも起きることは、基本同じなんです。パンクをしたり、バーストを起こしたりですね。タイヤに刺さってくるものは釘やドライバーなど。珍しいものでは、女性が髪につける金属製のアクセサリーを拾ってきたこともあります。 ちなみに、後ろタイヤがパンクする場合は、自分のクルマの前タイヤで路上に落ちているこれらのものを立ち上げるように起こしてしまって、その上を後ろタイヤが通ることで刺さってしまうんですよ。前タイヤの場合は、前を走っているクルマが立ち上げていっているんです」
――後ろタイヤの時は自分でやってしまっているっていうことですか。ところで、チェーン装着の仕方には特別な方法があるんですか?
「ジャッキがある場合は車体を持ち上げて、タイヤにチェーンをかぶせて装着します。そうでない時は、チェーンを地面に敷いてその上にタイヤを乗せて、端と端を持ってぐるっとタイヤに巻いて固定します。普通乗用車と一緒ですよ」
大きくても小さくてもクルマはみんな同じ。とはいえ、自分の身長と変わらないくらいの大きさのタイヤや巨大ロボのような車体に、圧倒されました。そして、その大型車の足回りを安全に支える職人技の手作業に魅了されたのでした。
(取材・文・写真:わたなべひろみ 編集:ミノシマタカコ+ノオト)
[ガズー編集部]
<取材協力>
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