NISMO、GR、AMG……、ディーラーで買えるファミリー向けスポーツカーブランド

スポーツカーはクルマ好き男子にとって永遠の憧れですよね。物心ついたときからクルマ好きだったボクだって、もちろんそうでした。小学生の頃から、「大人になったらスポーツカーを所有しよう!」と思っていたし、実際に免許を取って購入したクルマはやっぱりスポーツカー。運転するのはもちろん、スポーツカーを“所有している”というだけで楽しい毎日だったことを覚えています。気持ちいい走りもスポーツカーならではでした。室内が狭くても、まったく気になりませんでしたね。独身時代には。

しかし、結婚して子どもができ、現実に引き戻されるとそうは言っていられません。子どもと一緒に移動することになると、クルマは“大きなオモチャ”から“日常の道具”に変身します。室内は広くなければいけないし、荷物もたくさん積める必要がある。子どもを抱っこして後席のチャイルドシートに座らせることを考えると、2ドアや3ドアを選べる状況ではなくなってきます。夢はいつまでも見ていられないのですね、残念だけど。懐かしいなあ、平べったいデザインのスポーツカー……。

でも、そんなパパにもうれしいのが昨今のスポーツモデル事情。スポーツカーといえば、後席がなかったり狭かったりして実用性がよくないイメージを持つ人もいるかもしれません。しかし、最近では少し事情が違います。

日産の「NISMO」やトヨタの「GR」をはじめ、コンパクトカーからSUVまで、実用的な車両をベースに走りを鍛えたモデルがたくさんラインナップされているのです。それらは大人がきちんと座れるリヤシートがあり、ラゲッジスペースだって広く確保している。乗り降りだってしづらくありません。それでいて、もちろん走りは爽快。だから家族を乗せているときには使い勝手がよくて、ひとりで移動するときは昔のようにスポーツドライブを楽しめるというわけです。今回は、そんな家族がいても安心なクルマを揃えている世界のスポーツカーブランドを紹介しましょう。

紹介するのはどれも、自動車メーカー内のスポーツカー専門部署、もしくはメーカーと関係の深いモータースポーツ組織が作り上げた車両で、ディーラーで購入でき、メーカー製の通常モデル同様に品質保証が受けられるものばかりです。

暴力的なパワーが魅力のメルデセスAMG

通常の市販車をベースにスペシャルな仕様を作るブランドとしておなじみなのは、メルセデス・ベンツの「AMG」でしょう。コンパクトなAクラスから大型セダンのSクラス、そしてGLEやGクラスといったSUVまで、幅広く超高性能仕様として「メルセデスAMG」を用意しています。もちろんファミリーユースにピッタリのステーションワゴンなど、実用的なモデルもラインナップ。AMGは専用のエンジンを開発するほか、2シーターですが「AMG GT」という独自に開発したスポーツカーも販売しています。

ワゴンボディでATのメルセデスAMG E 63 S 4MATIC+。612psのV8ツインターボエンジンを搭載し、ドイツの過酷なサーキットであるニュルブルクリンクの北コースをなんと7分45秒19(ステーションワゴン世界最速)で走るスーパーワゴンだ
ワゴンボディでATのメルセデスAMG E 63 S 4MATIC+。612psのV8ツインターボエンジンを搭載し、ドイツの過酷なサーキットであるニュルブルクリンクの北コースをなんと7分45秒19(ステーションワゴン世界最速)で走るスーパーワゴンだ

「M」はスポーツ性を際立てたBMWの称号

メルセデス・ベンツの「AMG」と並んで有名なのが、BMWの「M」。「M3」というスーパースポーツセダンが有名ですよね。「M3」のほか「M2」「M4」「M5」「M6」といったモンスターモデルのほか、「Mパフォーマンス」というちょっと控えめな仕様や、「Mスポーツ」という市販車+αのパフォーマンスを持つシリーズも複数のBMW車にラインナップしています。セダンから室内の広いSUVまで、いろいろなボディタイプが選べるのは、うれしいですね。

また、走行性能を磨くだけでなく先端技術を市販車に採用する役割も担っていて、2016年に限定販売された「M4 GTS」には、エンジン内に水を噴射して燃費を良くするシステムを世界初搭載するなど、実験的な試みも行うブランドです。

Mの最新作は5シリーズをベースにした「M5」で、もうすぐ日本でも発売される予定。4WDだが、ドリフトを楽しむための「ドリフトモード」が搭載されている
Mの最新作は5シリーズをベースにした「M5」で、もうすぐ日本でも発売される予定。4WDだが、ドリフトを楽しむための「ドリフトモード」が搭載されている

最高峰モデル「RS」はワゴンボディとしている「アウディスポーツ」

メルセデス・ベンツやBMWと並んで、ドイツプレミアムブランドのひとつに数えられるアウディ。アウディのスーパースポーツモデルの開発を担当するのが「アウディスポーツ」社です。スポーツカー開発を担当するアウディの子会社で、かつては「クワトロ」という社名でしたが現在は「アウディスポーツ」と改名しています。

フラッグシップモデルの「RS6アバント」。現行モデルはV8だが、先代は「R8」用の5.2L V8自然吸気(ランボルギーニ・ガヤルドにも採用)のエンジンをターボで武装して搭載していた。ハチャメチャぶりに驚くばかり
フラッグシップモデルの「RS6アバント」。現行モデルはV8だが、先代は「R8」用の5.2L V8自然吸気(ランボルギーニ・ガヤルドにも採用)のエンジンをターボで武装して搭載していた。ハチャメチャぶりに驚くばかり

代表するモデルはスーパーカーの「R8」ですが、「RS」シリーズというアウディの通常モデルをベースにした超高性能モデルを展開。標準車よりもひとまわり大きなエンジンを積むというスポーツカー作りの公式を忠実に守っていて、5気筒の2.5LターボなどRSシリーズ専用となるエンジンも用意しています。2018年1月現在、「RS4」と「RS6」のラインナップは、なんとたくさんの荷物を積んで遊びに出かけるのにも好都合のステーションワゴンボディだけ。

GT-Rを頂点にコンパクトカーやミニバンも用意する「NISMO」

市販車重視のハイパフォーマンスカーブランドとして日本で有名なのは、「NISMO(ニスモ)」でしょう。ニスモは日産のモータースポーツ活動を行う会社でしたが、2013年からは日産のディーラーで販売する高性能な市販車も開発しています。

ノート(写真)やマーチやなど身近なコンパクトカーをベースにしたモデルを用意。そのままサーキットを走れる本格的なスポーツモデルながら、160万円台から購入可能だ
ノート(写真)やマーチやなど身近なコンパクトカーをベースにしたモデルを用意。そのままサーキットを走れる本格的なスポーツモデルながら、160万円台から購入可能だ

代表的な車両はスーパースポーツカーの「GT-R NISMO」ですが、コンパクトカーのノートやマーチからミニバンのセレナまで実用的な室内スペースを兼ね備えて家族持ちでも買いやすいラインナップを広げています。ノートやマーチでは、通常仕様よりもひとまわり大きくパワフルなエンジンを搭載した仕様も用意しているし、モーターで走る「ノートe-POWER」をベースにより爽快な走りを実現した「ノート e-POWER NISMO」もあります。

212psのヴィッツもラインナップするトヨタのスポーツブランド「GR」

2017年にそれまでの「G’s(ジーズ)」から改名したトヨタのスポーツカーブランドが「GR」。ヴィッツやアクアなどのコンパクトカーから、プリウス、プリウスPHV、ハリアー、そしてミニバンのノア/ヴォクシーといった、室内が広くてファミリーカーとして人気のあるモデルにまで幅広くスポーツモデルを用意しています。

「GRMN」というハイパフォーマンスな仕様もあって、2018年6月に発売する「ヴィッツGRMN」には、なんと212psを発生するスーパーチャージャー付の1.8Lエンジンを搭載。その走りっぷりは驚くほどです。

フランスで生産されて日本へ輸入される「ヴィッツGRMN」。1.8L+スーパーチャージャーのエンジンは、なんと本格スポーツカーのロータス・エリーゼに積んでいるものと同様の設計
フランスで生産されて日本へ輸入される「ヴィッツGRMN」。1.8L+スーパーチャージャーのエンジンは、なんと本格スポーツカーのロータス・エリーゼに積んでいるものと同様の設計

WRCでも大活躍していたスバルの「STI」

スバルのスポーツブランドが「STI」。かつてWRC(世界ラリー選手権)で大活躍していたこともある、歴史の長いブランドです。スバルとは別組織ながら「WRX STI」としてスバルの車名に会社名が使われており、レヴォーグやWRX S4、そしてBRZには最上級仕様として「STI sport」がラインナップされています。

ベース車より200万円以上高い、600万円を超える車両価格ながら発売と同時に限定450台が完売した「S208」
ベース車より200万円以上高い、600万円を超える車両価格ながら発売と同時に限定450台が完売した「S208」

真骨頂はSTI社独自のモデルである「S」シリーズ。最新の「S208」はバランス取りした部品を使って組み上げたエンジンを搭載するなど、WRXを徹底的に磨き込んで高めた走行性能が自慢です。大人でも無理なく座れる後席があり、トランクも広いのでスポーツカーという言葉からイメージするような使い勝手の悪さが皆無なのがいいですね。

日本にもファンが多い「ルノースポール」

忘れてはいけないのが、フランスにあるルノーの「ルノースポール」。「ルーテシアR.S.」やホンダ・シビックTypeRのライバルとなる「メガーヌR.S.」など、ハッチバックを中心に展開しており、磨け上げられた運動性能に加え、一般車両とは違うモータースポーツ専用のファクトリーで組み立てられているという特別感も魅力です。その走りの愉しさは日本にも多くのファンがいて、なんと日本は世界で3番目にルノースポールの販売台数が多いんですよ! ルノースポールの車両も、実用的なハッチバックがベースなので家族で使うクルマとして不都合はありません。

コンパクトカーの「ルーテシア(本国名「クリオ」)をベースにスペシャルチューンを施した「ルーテシアR.S.」。エンジンは日産製の1.6Lターボを搭載する。その内容を考えれば300万円弱のプライスはお買い得!?
コンパクトカーの「ルーテシア(本国名「クリオ」)をベースにスペシャルチューンを施した「ルーテシアR.S.」。エンジンは日産製の1.6Lターボを搭載する。その内容を考えれば300万円弱のプライスはお買い得!?

走りを磨いたSUVやトラックだってある

そのほか世界を見回すと、クライスラーの「SRT」やジャガー&ランドローバーの「SVR」、フォードの「SVT」などさまざまなスポーツブランドが存在します。トラックにもスポーツモデルを用意しているのは、アメリカらしいですよね。

ダッジデュランゴSRT
ダッジデュランゴSRT
レンジローバースポーツSVR
レンジローバースポーツSVR
フォードF150 SVT ラプター
フォードF150 SVT ラプター

ところで、どうして自動車メーカーはこうしたスポーツブランドを持っているのでしょうか? それはきっと、いつの時代になってもクルマに対する「速さ」や「走り」への憧れが不変だからでしょう。男の子がスポーツカーに憧れる気持ちは、大人になっても変わらないのです。

そんな「子どもの心を忘れないパパ」にとって、実用性が高くてファミリーユースと爽快な走りを両立する助け舟がミニバンやワゴンをベースにしたスポーツモデル。次の愛車選びには、そんなスポーツモデルもぜひ検討してみてください。 「ノア/ヴォクシーGR」や「セレナNISMO」といった比較的手が届きやすい価格のミニバンもあるのですから。

(文:工藤貴宏 編集:木谷宗義+ノオト)

[ガズー編集部]