CES2018で感じた、クルマと生活が変わる兆し
2018年1月7日~12日、アメリカのラスベガスで「CES2018」が開催された。「コンシューマー・エレクトロニクス・ショーケース2018」を略した「CES2018」は、消費者向けの電気製品の展示会だ。簡単に言えば家電ショー。家電と聞くと、なんとなく興味をなくす人もいるかもしれないが、それは大間違いだ。テレビをはじめ、インターネット、スマートフォンといったように、最新のエレクトロニクス技術は、ご存知の通り我々の生活や社会を大きく変革してきた。
今年のCES2018でも、そうした世界を変えてしまうような最先端のエレクトロニクス技術が、数多く出品されていたのだ。
生活が変わることを予感させた展示たち
たとえば、コンピューターを使って、数十台のカメラの動画映像をひとつにまとめ、再構築することで、VRモニターを装着した観客は好きなアングルで映像を見ることができる。そのことによって、サッカーやボクシングの試合を、フィールド内やリングの中で観戦するような感覚で楽しめるという、まったく新次元のエンターテインメントが提案されていた。そこで使われる通信は、次世代の5G。さらに次世代の量子チップコンピューターまで出品されていたのだ。
また、話題のスマートスピーカー関連の製品も山のように出品されていたし、人としゃべってコミュニケーションするロボットの類もいくつも見た。
- Googleのスマートスピーカー
- AIBOもコミュニケーションロボットのひとつ
さらにドローンも、おもちゃのような小さなものだけでなく、大人2人が乗車できる自動操縦のドローンまで登場したのだ。私たちの生活は、どんどんと変わることを予感させるに十分な内容のショーであった。
自動車にも関連深い、エレクトロニクス技術
また、最近の自動車は数多くのエレクトロニクス技術を利用している。その最右翼が自動運転技術であり、電動化技術だ。トヨタをはじめとする自動車メーカーだけでなく、サプライヤーも数多く参加。高性能センサー系のプロトタイプなど、自動運転を実現するための最先端技術の展示も数多い。会場の一部には、自動運転を披露する野外コーナーも用意されていた。自動運転でラスベガスの街を体験走行するプログラムも人気を集めていたのだ。
トヨタが発表した「e-Palette Concept」
そうした中でトヨタが発表したのが「e-Palette Concept(イー・パレット・コンセプト)」だ。これはモビリティサービス(MaaS)専用の次世代電気自動車で、自動運転機能を備える。モビリティサービス(MaaS)とは、「Mobility-as-a-Service」の略で、「モビリティのサービス化」を意味する。つまり、モビリティ自体ではなく、サービスが商品となる。所有ではなく、利用するものとなるのだ。
「e-Palette Concept(イー・パレット・コンセプト)」は、ユーザーに直接売るクルマではなく、商用として開発されており、さまざまな利用方法が想定されている。タクシーのように人を運び、商品を配達し、移動商店や移動ホテルにも使える。自動運転なので、人件費がかからず、スマートフォンなどで気軽に呼ぶことも可能だ。また、電気自動車の弱点である航続距離の短さや充電時間の長さなどは、商用なので運用によってカバーできる。さらにアライアンスパートナーであるマツダのEV用ロータリー・エンジン発電技術を使えば、航続距離を伸ばすことも可能だ。しかも、アマゾンやピザハット、ウーバーなどのビジネスパートナーも決まっている。夢物語ではなく、本格運用を見据えたプランなのだ。
「e-Palette Concept」でクルマとの生活が変わる?
この「e-Palette Concept(イー・パレット・コンセプト)」は、クルマ社会を変革するポテンシャルを備えている。なぜなら、税金や駐車場代を払ってクルマを所有するよりも、圧倒的に低コストで、しかも便利に使うことも可能となるからだ。そうなれば低コストで便利な移動手段を求めるユーザーは、クルマを購入するのではなく、「e-Palette Concept(イー・パレット・コンセプト)」を利用するようになるだろう。当然、同じようなサービスはトヨタ以外でも始まるはず。そうなれば、普及はさらに広がる。クルマを使った生活が変わるのだ。
しかし、このアイデアは自動車メーカーにとっては諸刃の剣かもしれない。ユーザーは便利になるが、自動車メーカーのクルマの販売台数は激減する可能性があるからだ。特に、低コストが特徴で製品としての魅力の少ないクルマはつらい。低コストで便利な移動手段があるのだから、魅力のないクルマは引き合いが減るだろう。わざわざ選ぶほどの魅力がクルマに求められるようになるのだ。「このクルマじゃないと嫌」と思われる快適性や走り、デザイン。またはカスタムや同好の仲間とのクルマを介した付き合いなど、所有者だけが得られる楽しみ。そうしたものが必要になるだろう。そのためには、ユニークなコンセプトやバックストーリーなどのプラス・アルファがクルマに求められると思う。
CES2018の取材を通じて、クルマ社会が大きく変わる兆しを感じることができたのだ。
(取材・文:鈴木ケンイチ 編集:ミノシマタカコ+ノオト)
[ガズー編集部]
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