ここだけの話もいっぱい!『間違いだらけのクルマ選び』出版記念 島下泰久トークイベント

2018年2月2日(金)東京都渋谷区松濤にあるフィアット/アバルト松濤にて、2018年版『間違いだらけのクルマ選び』の出版を記念し、ファン30人を招いて島下泰久さんのトークイベントが開催されました。

『間違いだらけのクルマ選び』は、自動車評論家の故・徳大寺有恒さんが1976年に著わしたクルマ購入ガイド本。正続合わせて100万部のベストセラーとなったそうです。2006年版を最後に一時休止しましたが、2011年版から島下さんとの共著として復活。さらに2016年版から島下さんによる単独著書に移行し、本作で3冊目となります。
ちなみに「徳大寺有恒」というペンネームが生まれたのもこの本からでした。徳大寺さんのライフワークを引き継いだ島下さんのプレッシャーも相当なものじゃないかと想像します。いま草思社のサイトでは、1976年版が電子ブックで読めるようになっています。
http://www.soshisha.com/book_wadai/44car/index.html

イベントのMCを務めたのはBS日テレで放送中の『おぎやはぎの愛車遍歴NO CAR,NO LIFE!』でもMCを務めるモータージャーナリストの竹岡圭さん。新車試乗会でも頻繁に顔を合わせているというお二人のトークはどんなものだったのでしょう。

まず著書についてちょっと触れるところからイベントがスタート
まず著書についてちょっと触れるところからイベントがスタート

内燃機関もまだまだがんばるし、エンジンを楽しむ時間はありますよ

「せっかく顔が見える場なんだから、一方的に話すのではなく、できるだけ双方向なおしゃべりに時間を使いたい」との思いがあり、参加者からの質疑応答に多くの時間が割かれました。

最初にくる質問は、本書のテーマに関わることなのか? 他では言えない業界裏話についてなのか? さあどんな質問が!? と、皆が若干緊張する中、飛び出た質問は「いすゞのトラックでは何が好きですか?」。予想外の内容に笑いが起き、会場が一気になごやかな雰囲気になりました。

「さすが人力舎!(竹岡圭さんの所属事務所)トークがうまいわー」と島下さんも舌を巻く抜群の安定感
「さすが人力舎!(竹岡圭さんの所属事務所)トークがうまいわー」と島下さんも舌を巻く抜群の安定感

うまいつかみの後、参加者から出た質問は、EVの未来、内燃機関車の未来、燃料はどうなる、というもの。それらに対し島下さんは「いずれはEVになるにしても、まだまだ内燃機関もがんばる」と話します。

「マツダのガソリンエンジンを極める技術であるスカイアクティブXも今後出てくるし、先日発表されたメルセデスベンツのAMG53シリーズは回生電力でタービンを回す電動ターボ技術でした。それに藻から生まれるバイオ燃料や合成燃料の研究開発も進んでいるので、エンジンを味わえる時間はまだまだありますよ」

また自動運転については「自動運転については、現状のレベル2からレベル4に一足飛びに進むんじゃないかな」とのこと。その理由について、次のような考えを述べていました。

「レベル3はシステムが対応できなくなったとき、ドライバーにいきなり判断を返されるので対応が難しいんじゃないかと思います」

また新刊に関する話だけでなく、長年書籍を読んできた読者にはうれしい徳大寺さん時代の話も登場。徳大寺さんの原稿はすべて手書きだったそうで、草思社には解読担当がいたというトリビアも飛び出しました。

そうそう。「日本車のいい点とは?」という質問もありました。竹岡圭さんは「アルファード/ヴェルファイアなど、おもてなし満載のミニバン」という回答。簡単で多彩なシートアレンジ、オットマンがついているなど豪華なシート、ポケット類が多いなどが日本車ならではだと思う、とのこと。アジアでは近年急速に台数が増えていますし、 日本車にこめられた“おもてなし”の心は、確かに海外のユーザーにも伝わっているのでしょう。

これ以外にも、お二人がクルマ好きになったきっかけや現在の所有車に欲しいクルマについてなど、パーソナルな話がたくさんありました。普段聞けない話が聞けるのもトークイベントの良さですね。

あんな話やこんな話、参加者との楽しい対話が続く。島下さんの所有車はMIRAI、300Eなど。竹岡さんは、楽しすぎて手放せないシロッコRとミニ・クロスオーバーだそうです
あんな話やこんな話、参加者との楽しい対話が続く。島下さんの所有車はMIRAI、300Eなど。竹岡さんは、楽しすぎて手放せないシロッコRとミニ・クロスオーバーだそうです

島下というフィルターを通した情報をみなさんのネタにしてもらえれば

せっかくの機会なので、島下さんが著書に込めた思いについて聞いてみました。

「一般に流れている情報を聞いていると、日本のEVは遅れているとか、つまんないとか、どうにも意見が偏っているように思います。直近に発表されたボルボの電動化のニュースに対して、全部EVになるんだと思いこんでしまうような報道もされているんです。メーカー、サプライヤーのエンジニアの方々からさまざまな技術情報を聞いている自分たちが、正しく伝えていかなければと思っています」

イベントの最後はサイン会でファンと一対一のふれあい。これが生イベントのいいところ。
イベントの最後はサイン会でファンと一対一のふれあい。これが生イベントのいいところ。

「この本は、当然のことながらあくまでも島下というフィルターを通してのもの。だから、違う意見を持っている人もいるでしょうから、俺とは意見が違うなと思ってもらってもいいし『島下がこんなこと言ってるぞ』とクルマ好き同士の話のネタにしてもらってもいいし、友人知人にクルマ選びの相談を受けたときに、本文から得た知識を活用してもらうのもいい。とにかく、この本がきっかけで何かが広がっていってくれればうれしいです」

著書と出会えるトークイベントで別の一面が見えてくる

取材にあたって、予習のために『間違いだらけのクルマ選び』シリーズを全部読みました。「あれ、そんな突っ込んだこと書くんだ」「へー、そんなこと考えてるんだ」と思うことも多く、月刊誌で読む記事とはツッコミ方が違い、正直意外でした。月刊誌ではできなくても単行本ではできることがあるということでしょうし、単行本だからこそ込めなければならない魂というものもあるのでしょう。いずれにしても、雑誌で見るよりも島下さん“本人感”がより出ているんじゃないでしょうか。ネットからタダで情報が手に入る時代ですが、紙と活字、そして今回のような生のコミュニケーションが担う役割もまだまだ重要です。まだの方は一度読んでみてはと思います。

会場となったフィアット/アバルト松濤には、テレビで紹介されたことがあるCafeも併設。ここのピザがとてもおいしい!
会場となったフィアット/アバルト松濤には、テレビで紹介されたことがあるCafeも併設。ここのピザがとてもおいしい!

(取材・写真・文:大田中秀一 編集:ミノシマタカコ+ノオト)

[ガズー編集部]