ドアミラー駆動用モーターは世界シェア1位! 知られざる「マブチモーター」の世界【後編】

前編では、小学校の教材用モーターから始まったマブチモーターの歴史を中心にお話しました。後編では、現在の主力となっている分野についてお伝えします。その分野とは、自動車用モーターです。もちろん1/24などのプラスチック製スーパーカーではなくホンモノの自動車です。

▼始まりは小学校の教材用モーターだった! 知られざる「マブチモーター」の世界【前編】
http://gazoo.com/article/daily/180216.html

ドアミラー用だけでなく、ドアロック用モーターも

現代の自動車にはパワーウインドウやパワーシート、電動パーキングブレーキ、ヘッドライトの光軸調整など、さまざまな電動機構が採用され、大衆車でも50~60個、高級車になれば100個以上のモーターが搭載されています。マブチモーターでも自動車のさまざまな用途に向けて豊富なモーターをラインナップ。多くのメーカーのクルマに、マブチのモーターが採用されています。中でもドアミラーやドアロック用モーターは1970~1980年代からずっと世界シェア1位で、世界中の自動車にマブチのモーターが使われているそうです。

世界トップシェアの自動車用パワードアロックシステムやドアミラーの鏡面調整用モーターをはじめ、パワーウインドウ用、ドアクローザー用、パワーシート用、電動パーキングブレーキ用などさまざまなモーターを扱っている
世界トップシェアの自動車用パワードアロックシステムやドアミラーの鏡面調整用モーターをはじめ、パワーウインドウ用、ドアクローザー用、パワーシート用、電動パーキングブレーキ用などさまざまなモーターを扱っている

もちろん自動車パーツの要求性能は、非常にシビアでプラモデル用とは大きく違います。とはいえ、当時の基本構造の高さと先進性が証明されているようで、かつてプラモデルに夢中になった現代の自動車ユーザーには懐かしくもあり、ちょっぴりうれしい話でもあるのではないでしょうか。

自動車の前のドアには、パワーウインドウ用1個、ミラー駆動用2個、ミラー格納用1個、ドアロック用1個の合計5個のモーターが使われている。4ドアだったらドアだけで合計14個のモーターが使われている
自動車の前のドアには、パワーウインドウ用1個、ミラー駆動用2個、ミラー格納用1個、ドアロック用1個の合計5個のモーターが使われている。4ドアだったらドアだけで合計14個のモーターが使われている

意外にも東京モーターショーは初出展

マブチモーターのウェブサイトを見ると(2017.12月時点)、会社概要における事業内容には「小型モーターの製造販売」とあります。事業を「小型モーター」に限定しているとは驚きですね。つまり、指先にチョンと乗ってしまうような超小型から、手のひらサイズまでの小型モーターこそが、同社の"超"のつく得意分野であり、その自信と可能性を最初から謳っているのです。

先ほどから、マブチモーターが自動車のさまざまな用途にたくさん使用されていることをお知らせしてきましたが、現在は自動車用のモーターが売上の7割を超えているそう。自動車用小型モーターの販売数は世界No.1で、2016年には自動車用だけで9億7200万個ものモーターを販売したと言います。本当に凄い数ですね。

世界中に生産拠点を持つマブチモーターの現行製品の数々。まさに指先サイズから手のひらサイズまでに特化した小型直流モーターの世界No.1ブランドだ
世界中に生産拠点を持つマブチモーターの現行製品の数々。まさに指先サイズから手のひらサイズまでに特化した小型直流モーターの世界No.1ブランドだ

模型の自動車から実車まで、クルマに夢見る子供から実際に運転する大人まで、長きにわたりクルマに根付いた歴史を持つマブチモーターですが、意外にも東京モーターショーへの出展は2017年が初めてだったそうです。それゆえ、自動車のありとあらゆる部分にマブチモーターが使用されていることを知らない一般の来場者の方々が多かったようで、実際に東京モーターショーのブースでは「マブチモーターって、プラモデルやラジコンのマブチモーターですか?」という質問を多く受けたとのこと。

2017年の東京モーターショーに出展したマブチモーターのブース。
2017年の東京モーターショーに出展したマブチモーターのブース。

きっと「子どものころに買った"黄色い小箱"」というイメージがあったのでしょう。もちろん、そのあとにミニ四駆ブームなどで触れた人も多いかもしれませんが、いずれにしても、多くの世代にとって子供のころに身近だった"マブチモーター"なのです。

子供の”ものづくり”を支える創業当時と変わらぬ企業姿勢

子供のころから機械いじりやモノ作りが大好きで手先の器用な兄 馬渕健一氏、そして創業時より兄とともに歩みマブチモーターを支えてきた弟 馬渕隆一(たかいち)氏。二人が描いてきた「世界中の子供が買える安全な動力」に対する想いを形にし続ける同社の製品群が、今でも思いもよらないところで私たちの生活、そしてカーライフを支え続けていることは、あのころ子供だった筆者にはとても嬉しいことであり、見えないところで「ずーっとマブチの小型モーターがそばにあった」という事実は、ちょっとした驚きでもあります。そんなマブチモーターは、今なおロボットコンテストなどの協賛を通じて"ものづくり"をテーマに教育活動を支援し続けていて、まったく頭が下がる思いです。

マブチモーターがホームページに掲載している、モーターを使った工作集「Let’s Motorize !」 “ものづくり”教育支援のひとつ
マブチモーターがホームページに掲載している、モーターを使った工作集「Let’s Motorize !」 “ものづくり”教育支援のひとつ

ちなみに、かつてスーパーカーに憧れた少年たちなら誰でも一度は手にした黄色い小箱の「FA-130」は、もちろん今でも買えます(現行はFA-130RA)。小型直流モーターの世界No.1ブランドが誇るロングラン商品は、今も同じ黄色い小箱に入って1個180円(税別)。今でも子供のお小遣いでも買えそうですね。

(取材・文:高橋学、写真:高橋学、マブチモーター株式会社、編集:木谷宗義+ノオト)

[ガズー編集部]

MORIZO on the Road