「疲れたから少し運転代わって」……これって大丈夫? クルマの貸し借りにまつわる保険のハナシ

「帰省先でいつもクルマを借りているけれど、保険ってどうなってるんだろう?」
「今度の旅行、ちょっとだけ友人と運転を交代しても大丈夫?」
「借りたクルマで事故を起こした場合、自分の自動車保険のロードサービスを使える?」

クルマを貸し借りする際、注意したいのが自動車保険のこと。長期間クルマを貸し借りすることはなくても、運転を少しだけ交代する場面はあるかもしれません。

万一のトラブルに備えて知っておきたいことをソニー損害保険株式会社広報の福田さんにお聞きしました。

【ケース1】 帰省した息子に自分のクルマを貸して、スーパーまで買い物に行ってもらった

新幹線や飛行機などで帰省した場合、帰省先のクルマを利用する方は多いかもしれません。家族だから大丈夫だと思っていたのに、補償の範囲外だった……! 実は意外に多いケースです。そんなことがないよう、加入している自動車保険の契約内容を確かめておく必要があります。

「このケースの場合、クルマを貸す側がチェックしたいのが、自動車保険の『運転者の範囲』です」と福田さん。

一般的な自動車保険は、補償の範囲が限られるほど保険料が安くなります。普段、運転者の範囲を本人限定や本人・配偶者限定にして保険料を抑えている方もいると思いますが、帰省した息子が運転するからと家族限定に切り替えても油断はできません。

保険会社によって異なりますが、「家族」の範囲は記名被保険者の配偶者、記名被保険者またはその配偶者の同居の親族、記名被保険者またはその配偶者のどちらとも別居している未婚の子どもとなっていて、別居の既婚者は対象外となることがほとんど。「家族」がどこまでを指すのかを確認し、運転する人に合わせた範囲に変更をする必要があるでしょう。

息子さん自身が自動車保険に加入していれば「他車運転危険補償特約」を利用できる可能性があります。他車運転危険補償特約とは、他人のクルマを「臨時に」借りて運転中に事故が起こったとき、契約車両の契約内容に応じて保険金が支払われるものです。

ただし、人身傷害の場合「車内+車外補償型」など、契約車両以外のクルマでも補償される設定をしておかなければ、対象外となることがあるのでご注意を。貸す側と借りる側、両方の自動車保険の契約内容をチェックしておくと安心です。

では、同居している未婚の家族が新たに免許を取得したときは、運転者の範囲を家族限定に切り替えたほうがよいのでしょうか?

「その場合、運転者の範囲だけでなく、新たに運転される方に合わせて運転者の年齢条件も見直す必要があります。例えば、年齢条件を20歳以下でも運転できる「年齢を問わず補償」に広げると、年間保険料がかなり上がる可能性があります。たまにしかクルマを貸さない場合は、24時間(1日)単位で利用できる自動車保険のほうが安くなるケースも考えられます」とのこと。迷ったら、まずは加入している保険会社に相談するといいですね。

【ケース2】 友人と旅行中、疲れてきたので少し運転を交代してもらった

さて、次は友人との貸し借りのケースについて考えてみましょう。

長距離ドライブになると、ドライバーの負担は大きいもの。疲れた様子を見た友人から「運転代わろうか?」と言われることもあるかもしれませんが、ちょっとストップ。予想外の事態を頭に入れておきましょう。

福田さんによると「運転者を本人や本人・配偶者、家族に限定する特約を付けている場合、友人は補償の対象外になるため、『運転者限定なし』に変更する必要があります」とのお話。ただし、友人は年齢条件の適用範囲には含まれないため、年齢条件はどの設定でも問題ありません。

事故が起こった場合、友人が自動車保険に加入していれば、友人の自動車保険の他車運転危険補償特約を使うこともできますが、もちろん、どちらの自動車保険を使っても等級は下がります。友人の落ち度とはいえ、親切心から運転を交代してくれたのも事実。自分と友人、どちらの自動車保険を使うのかも悩みのタネとなりそうですね……。

では最後に、ロードサービスについて。クルマの持ち主とクルマを借りた人、どちらの自動車保険のロードサービスを利用すればよいのでしょうか?

「他車運転危険補償特約はあくまでも補償の話になるので、ロードサービスは適用対象外です。基本的には、貸し借りしたクルマの自動車保険に付帯したロードサービスか、24時間(1日)単位の自動車保険に入っている場合はそのロードサービスをご利用いただくことになります。貸し借りしたクルマの自動車保険にロードサービスが付帯されていない場合は、JAFなどのロードサービス会社にお願いするという選択肢もあると思います」と、福田さん。

トラブルを防ぐためにも、クルマの貸し借りはできれば控えたいところ。とはいえ、もしものケースに備えて、加入している自動車保険の契約内容を確認しておくことも大切ですね。

※保険会社によって補償の内容が異なる場合もあります。詳しくはご加入の保険会社にご確認ください。

(取材・文:藤田幸恵 編集:ミノシマタカコ+ノオト)

[ガズー編集部]