モーターショーの華「コンセプトカー」はなぜ発売されないのか?

モーターショーの華といえばコンセプトカー。夢のようなエレガントなスポーツカーから、未来のハイテクを満載した革新モデルや、遊び心満点の玩具のようなクルマ、トレンドを先取りしたクルマなど、モーターショーのブースで華やかに飾られるのがコンセプトカーです。

ところが、そうしたコンセプトカーのすべてが新型車として販売されることはありません。「コンセプトカーって、実際に売られるものは少ないのでは」と思う方もいるでしょう。しかし、それには理由があったのです。

コンセプトカーの狙いとは?

コンセプトカーには、それぞれ狙いがあります。たとえば、未来の夢を語るためのコンセプトカーの場合、技術的に量産車にするのは難しい(もしくは3~5年では無理である)ため、そのクルマは売られません。また、最初から市販のことは一切考えずに、「こんなクルマがあったら楽しいよね」という、ショーのためだけのコンセプトカーがあります。いわば「ショーカー」と言われ、これも市販されることはありません。

次に、デザインだけを見せるデザイン・コンセプトカーがあります。「弊社は、この先、このデザインでいく」とアピールするコンセプトです。決意表明の場合もあれば、モーターショーに出品して皆さんの意見を聞くのが狙いのときもあります。デザインを最優先させたコンセプトカーは、実際の量産車にするのは問題があることも多いため、そのまま市販車になることはありません。

市販されるコンセプトカーもある

もちろん市販を狙いにするコンセプトカーも存在します。たとえば「技術的に可能だけれど、実際に売れるかどうかわからない」ときに、様子をうかがうように出すコンセプトカー。もしくは「期待されている新型車を、ほんのちょっと先に出して注目してもらう」のが狙いの場合です。

たとえば、2009年の東京モーターショーでは「FT-86」というコンセプトカーが発表されました。これは2012年より発売される「86」を示唆するコンセプトカーです。

FT-86
FT-86

ちょうど2009年の東京モーターショーはトヨタからスーパースポーツである「LFA」の量産モデルが発表されたこともあり、「トヨタがスポーツカーに力を入れている。LFAは高嶺の花だけど、コンセプトカーの『FT-86』なら手が届く」と大いに話題となり、後の「86」の正式発売の弾みになりました。逆に評判がかんばしくないのでボツになったというケースもあります。つまり「量産化可能なコンセプトカー」は、市販される場合と、そうでない場合があるのです。

LFA
LFA

一方で、絶対に市販されるコンセプトカーもあります。それは、市販間近の新型車だけれども、発売日などを発表しないでモーターショーに出展するケースです。そうした場合、「(市販するときの車名)+コンセプト」という名前が付けられることが多々あります。これは、ほとんど量産車そのもの。モーターショーの数か月後に、大々的に発表・発売となるのです。

振り返ってみれば、コンセプトカーには、「絶対に売らないもの」から、「売るかどうか微妙」というもの、「この後で絶対に売りに出す」というものまでが存在します。そのため、トータルで考えると「市販されるコンセプトカー」の数が少なくなり、「意外とコンセプトカーって売ってないよね」という印象になるのではないでしょうか。

(文:鈴木ケンイチ 編集:ミノシマタカコ+ノオト)